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第二章 ヒーローとしての在り方

第18話 水着新調しないと!

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 急に、愛からの視線を受け……山口は、肩を震わせる。
 改めて見ると、少しか弱い印象を受ける。愛にとっての比較基準が尊だからか、それとも愛自身が男らしい活動をしているからか、それはわからない。

 だが、どこか保護欲を誘う彼には、ある種の需要がありそうだ。
 あと、多分メガネを外したら美少年だ。

「えっと……柊さん? ボクになにか……?」

「あ、ごめんごめん。えっとね、山口くんも誘いたいなって思って。
 ね、恵?」

「ぅえ!?」

 今こうして、視線を向けた理由……それは、プールに誘うためだ。
 しかし、それは愛の独断ではない。恵が誘いたいと、言い出したこと。

 それをわからせるため、愛は早々に恵に話を振る。
 まさか突然話を振られるとは、思っていなかったのだろう。普段は出さないような、間抜けな声を出してしまう。

 きょとんとしている山口に見つめられ、恵の顔は真っ赤になっていくが……無言で、こくこくと勢いよく、うなずいた。

「へぇ、俺と山口? そりゃまたどういう組み合わせだよ」

「それは、恵が山口くんをむぐっ」

「いや、ほら、あっはは……まあ、細かいことはいいじゃない」

 余計なことを言ってしまわないために、とっさに恵は愛の口を塞いだ。
 どうやら、二人には恵の意図は伝わってないようだ。ほっと一息。

 落ち着いたところで、恵は愛を解放する。

「ぷはっ」

「もう、あいあいっ。変なこと言わないでよっ」

「あはは、ごめん」

「……また余計なこと言ったら、たけたけへの気持ちバラすわよ」

「すみませんでした」

 そんなこんなで、プールに行くメンバーを誘うことに成功した。
 愛としても、プールなど久しぶりだ。楽しみであると同時、どうしても外せないものがある。

 ……かわいい水着、新調しないと!

「あと、博士にもメールしとかないと」

「あいあい?」

「んー、なんでもない」

「で、いつ行くんだ?」

 片手で手早く、愛は博士にメッセージを送る。
 元々、ヒーロー活動をシフト制にしようと言っていたのだ。そのため、プールの日には休みをもらおう。

 さて、そこで重要なのが、いつプールに行くことにするのか、だ。
 それは博士にも伝えないといけないし、ナイス尊だ。

「えっとね、割引チケットの期間は、ちょうど夏休み中なのよ」

「じゃあ、みんなの予定をあわせていく……ってことでいいのか?」

「賛成」

「ぼ、ボクも」

 夏休みは、すぐそこだ。
 休みの前にはテストがあるが、それも普段通りにあれば問題はない。一応結果を待ってから、約束を取り付けた方がいいだろう。

 そのためにも、みんなで連絡先を交換することに。
 元々、愛と尊、愛と恵、尊と山口は、連絡先を知った仲だ。それを、改めて四人交換して、四人のグループを作る。

「よかったねー、恵」

「う、うるさいなっ」

 グループを作ってしまえば、グループ内のメンバーと、個人的にやり取りすることも出来る。
 さすがに恵にそこまでの度胸はなさそうだが、連絡先を交換できただけでも、大きな進歩だ。

 それぞれの連絡先を交換して、少し話したあと、昼休みが終わる。
 席に戻った愛に、博士からの返信が来ていた。

『お友達とプールか、ええのぅ青春じゃのぅ。じゃあ日時がわかったら、また連絡よろしくぅ。
 その間は、怪人出現の連絡が行かないよう、切っておくからよろしくぅ』

 博士は、メッセージ上だとなんだかいろいろはっちゃけている。

 怪人出現の報せが入らなければ、愛が怪人のことを気にすることもない。
 この間のショッピングモールのときのように、怪人が同じエリアにでも現れない限り、愛はプールに専念できる。

「~♪」

 まだ日程も決まっていないが、久しぶりに羽を伸ばすことのできる日に、テンションが上がっていく愛であった。


 ――――――


「あー、水着かぁ。確かに、去年のはもう入らなくなってるなぁ」

 放課後。プールに向けて、水着の相談を恵にしていた愛。
 愛と同じく、恵も新しく水着を買おうと、考えていたのだ。

「そうだよねぇ、山口くんにかわいいの見せたいもんねぇ」

「そんなんじゃ……なくも、ないけど……」

 今回、水着を見せたい相手がいる。その相手のために、かわいい水着を買いたいというのは、愛だって同じだ。
 とはいえ、恵の場合、本人が言うように、去年のものが入らなくなった、という理由も多分にあるのだろう。

 恵は、うらやましいくらいのモデル体型だ。
 特にこの一年では結構背が伸び、それにより体型も変動している。

「私も、多分去年のじゃ入らないなぁ。
 胸がちょっと、大きくなってるみたいで……」

「……ちっ」

「!?」

 水着の話もそこそこに、恵は部活動へと向かっていく。
 彼女が所属しているのは、陸上部だ。背が高くすらっとした彼女に、よく似合っているなと思う。

 愛は、部活動には所属していない。
 いついかなるとき、怪人が現れるともわからないのだ。部活動に所属する暇はないのだ。

「尊は、委員会のお仕事だよね」

「おう」

「そっか。じゃ、先に帰ってるからね」

 放課後、基本的に愛は一人で帰ることになる。
 少し寂しさを覚えながらも、下駄箱で靴を履き替え、学校を出る。

 まだ未定ながら、スマホの予定表に四人でプール、と打ち込んで……にこにこしながら、帰宅する。
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