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第十章 魔導学園学園祭編

736話 サプライズゲスト!

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 目的地に近づくと、さすがに人が多くなってくるのがわかる。
 どこも人はいるけど、ここはまた別だ。人の数が全然違う。

 一つの舞台が作られていて、そこには司会と思われる生徒がマイク片手に立っていた。

「さあ、ではサプライズゲストに登場してもらいましょー!」

 タイミングよく、ちょうどサプライズゲストが登場するところだったみたいだ。
 司会の人はノリノリの様子で、大声で叫んでいる……

 ……っていうかあの司会の人、タメリア先輩じゃん。なにやってんの。

「そういえば……」

 三年生は最後の学園祭だけあって、いろいろとやることも多い……ってタメリア先輩自身が言ってたな。
 正確には、やることは下級生に任せてもいいんだけどせっかくの最後、自分たちでいろいろやりたいという声が大きいのだそうだ。

 これも、その一つだろう。わざわざ三年生がやる必要はないけど、きっと先輩自らやりたいと言ったんだろうな。
 あの人こういうの好きそうだし。

「今日お越しいただいたのは、アルミル・カルメンタール氏です!」

 盛り上がる大声に導かれるように、壇上に姿を現したのは……白髪のおじいちゃんだ。
 あの人は……知ってる。確か、魔導のエキスパートだって話だ。お城で会ったことがある。

 周りの生徒たちは、「わぁーっ」と大盛り上がりだ。
 その熱狂ぶりに、私は驚いてしまう。

「く、クレアちゃん……あの人、そんなに人気なの?」

「……まさかエランちゃん、アルミル様を知らないって言うんじゃないでしょうね」

 クレアちゃんが、信じられないものを見る目で私を見た。
 いや、知ってるよ? 知ってるには知ってるんだよ? でもこんなに人気の理由がわからないだけで。

 お願いだから、そんな目を向けるのはやめて!

「……アルミル・カルメンタール様。世の中に四人しかいない"四柱しちゅう魔導士"の一人で、その中でも魔導のエキスパートと呼ばれる存在よ」

 呆れているのかわからないけど、とりあえずクレアちゃんが説明してくれる。ありがとう。

 へぇ、魔導のエキスパートって漠然な言葉でしかわからなかったけど、そんなすごい人なんだ。
 "四柱魔導士"、さっきクイズでやったやつだね!

 世の中で四人しかいない魔導士なのもすごいのに、その中でも魔導のエキスパートと呼ばれるってことは……四人の中でも、群を抜いているってことか。

「そりゃ、この盛り上がりなわけだ」

 師匠を除けば、この世でもっともすごいかもしれない魔導士。
 魔導の道に触れたことがある人なら、知らない人はいない……くらいの有名人ってことだ。

 アルミルおじいちゃんは、そっと手を振っている。それだけで、さらに大盛り上がり……卒倒する人までいるくらいだ。

「大丈夫なのこれ」

「なんとかなるわよ」

 私は、アルミルおじいちゃんがどれほどすごいかは知らなかったけど……他に知っていることなら、あるさ。

 あのおじいちゃんは、ナタリアちゃん……ナタリア・カルメンタールの祖父だ。カルメンタール、と同じだからもしかしてと思ったけどね。
 まあ、名前でわかるなら私以外も気づいてる人いるだろうけど。

 祖父と孫の関係……とはいっても、血のつながりはないみたいだ。
 聞いた話だと、元々別の家の生まれだったナタリアちゃんが、アルミルおじいちゃんの家に養子として……と、あんまりおもしろい話でもなかったな。

 ともかく、友達のおじいちゃんがすんごくすごい人だったってわけだ。

「本日は、アルミル・カルメンタール氏に魔導についての講義をしていただけることになりました! いやあ、我々ラッキーですねぇ!」

 盛り上がる観客に乗り、うまく場を取り仕切る。うまいな、先輩。
 それに、生徒会メンバーのタメリア先輩がどういう人か、知っている人も多いだろう。
 その人柄が、みんなの目を離さない。

 それが、用意された台本であるのか、それとも先輩のアドリブなのかは、わからない。

「"四柱魔導士"の、魔導のエキスパートの方の魔導講義……!」

 隣では、クレアちゃんが目を輝かせていた。
 クレアちゃんでこの様子なら、そりゃ他のみんな興味津々になっちゃうはずだよね。

 他のみんなも、魔導にまったく興味がない人以外は興味津々だ。
 そして、魔導に興味がない人は、多分魔導学園の学園祭には来ない。

「紹介いただいた、アルミル・カルメンタールだ。本日はこのような機会をいただき、光栄に思う……」

 と、まずはアルミルおじいちゃんの自己紹介から始まる。
 それから、まず魔導とはどういうものか……という説明から入った。

 魔導とは魔力を形にしたもの。魔力とは本来誰の体内にも流れているもの……といった具合だ。
 既存の知識であっても、すごい人から聞かされるとなんかすごいことみたいに聞こえるから不思議だ。

 マイクを通して周囲に響くおじいちゃんの声は、不思議と人を惹きつける魅力のようなものを感じだ。

「魔導は鍛えればその分、応えてくれる。力を己のものにするには、やはり努力あるのみだ」

 ふむ……さすがいいことを言う。やっぱり練習した分だけ、魔導の使い方はうまくなるってもんよ。
 魔導学園では生徒の自主性を重んじている。そりゃ授業はあるけど、そこから技術をどう磨くか考えるのは自分だ。

 今回の抗議は、みんなにそれを改めさせることになるだろう。

「……そういえば、ナタリアちゃんはおじいちゃんが来ることを知っているんだろうか」

 そして私は、話半分にまったく別のことを考えていた。
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