史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

728話 もろともぶっ飛ばす!

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 巨大迷路の行き止まりに突き当たってしまい、現れたのは人造人形ゴーレム
 見上げるほどに大きいが、以前コーロランのクラスと試合をしたときにコーロランが出してきたものほどの大きさでは、ない。

 まさか、ゴーレムが出てくるとは思わなかった。迷路には罠があると言っていたから、これが罠だろう。
 ゴーレムを召喚できる魔導士は、これまで三人しか会ったことがない。コーロラン、ゴルさん……

 そして、このクラス所属のコロニアちゃんだ。

「ちょ、ちょっと! なんでゴーレムが出てきてるのよ!」

 驚愕するクレアちゃんの気持ちは、正直わかる。
 でも、出てきたものは出てきたんだから、しょうがない。

「なんでもなにも、出てきたんならやるしかないでしょ」

「やるってなにをよ! というか、術者はどこにいるのよ!」

 キョロキョロと周りを見るけど、当然あるのは壁だけだ。
 魔術を使うとなれば、当然そこには魔導士がいるはずだ。ならば、壁の外に待機しているのだろうか。

 それとも……

「罠、ってくらいだから……誰かがここに来たら出現するよう、セットされてたんじゃない?」

「……人に反応して出てきた、ってこと? そんなこと……」

「できないとは限らないよ。なんせコロニアちゃんは、無詠唱で魔術が使えるんだから」

 魔術は、詠唱が必要なのは基本だ。でも、中には無詠唱で魔術を使うことができる人がいる。
 その一人が、コロニアちゃんだ。無詠唱で魔術が使えるってことは、それだけ精霊に愛されているってことだ。

 精霊と心を通わせ、魔導の技量も非常に高い。それが、無詠唱魔術に必須なこと。
 私だって、無詠唱魔術は使えないのだ。悔しい。

「こ、コロニア様なの? このゴーレム」

「このクラスに、コロニアちゃん以外に魔術が使える人がいなければそうなるね」

 こちらを見下ろすゴーレムは、とんでもない威圧感だ。この感じは、覚えがある。
 以前、ゴルさんとの決闘の準備の際、訓練に付き合ってくれたコロニアちゃん。あのときと大きさこそ違うけど、なんというか気配が同じなのだ。

 魔術って点ならナタリアちゃんの可能性もあるけど……私の勘が言っている。これはコロニアちゃんだと。

「と、というか……全然襲ってこない、わね」

 さっきから、ゴーレムの攻撃に備えて構えている。だけど、ゴーレムはただ私たちを見下ろすのみ。
 ゴーレムってのは、魔術の中でも特殊なものだ。なんせ、自立式で動くのだから。

 複雑な命令は無理でも、単純な命令なら術者の指示通りに動くし、なんだったら自分で考えて動くこともできる。
 ゴーレムがなにを考えているかはわからない。けど……

「ま、まあ襲ってこないなら、戻りましょうよ。ゴーレムを相手にしている時間は……」

「せいや!」

 クレアちゃんがなにかを言い切ろうとする前に、私は飛び上がる。身体強化の魔法で脚力を強化し、ジャンプ力を上昇させたのだ。
 そして、ゴーレムの頭上へ。身体強化に回していた魔力を右拳に集中させ、強化。

 そして……

「おりゃああああ!」

 右拳を、ゴーレムの額へとぶち込んだ。

 ドゴッ……と激しい音がして、バリバリッとなにかが砕けるような音が続く。
 ゴーレムが、拳を受けた額からひび割れているのがわかる。でも、まだだ。まだ終わらんよ。

 ゴーレムには、自己再生能力がある。ゴーレムの核を破壊しないと、いつまでも再生し続けるのだ。
 核がある場所は、様々だ。単純に頭や心臓部分にある場合もあれば、右肩や腰といった部分にあることもある。

 核の場所が正確にわかるのは、術者だけだ。
 だから、核を見つけるには地道にゴーレムの表面を剥がして探すか、あるいは……

「爆炎で焼き尽くす豪火よ、天地をも焼焦やけこが死火しかと成りて、すべてを灰燼かいじんと帰せ!」

「ちょっ……」

紅炎爆発プロミネンスブラスト!!!」

 核もろとも、ゴーレムをぶっ飛ばすかだ。

 私の放った魔術は、ゴーレムを包み込み爆発する。
 迷路の壁を壊してはいけないというルールなので、ある程度威力は抑えて。あくまでも、ゴーレムを破壊することのみに力を注ぐ。

 地面に着地し、私は構えは解かない。爆煙がゴーレムを覆っているからだ。
 次第に、煙が晴れていくと……

「た、倒した……」

 そこには、ボロボロに崩れ落ちた土や石の残骸。
 ゴーレムは、土や石などのものを使って作り出す。再生能力が高いのも、素材が再生しやすいものだからだ。

 なんにせよ……

「ふぅ、終わり!」

「……ゴーレムを、こんな一瞬で」

「なーに言ってんの! 今のクレアちゃんならゴーレムくらい余裕でしょ!」

 終始騒いでいたクレアちゃんも、今の彼女の力ならあれくらいのゴーレムなら余裕のはずだ。
 迷路の罠だけあって、強さはそこまで設定されていなかったのだろう。倒しやすかった。

 おかげで、ちょっとスッキリしたよ!

「さあて、迷路に戻ろうかクレアちゃん! さあ行くよ!」

「ちょ、ちょっと! 切り替え早すぎないー!?」

 これで、迷路に戻れる! 今度は、間違えることなく進んでみせるぞ!


 ――――――


「……いや、これは予想外だったね……」

「……」

「迷路の罠。だからあくまで見かけ倒しさ。迷路に挑むお客さんを襲うつもりなんてないんだよ。魔導士じゃないお客さんなんてざらだしさ……そんな人に、ゴーレムと戦えなんて言えない。第一、戦わせるためなら行き止まりじゃなくて迷路の道中に設置してる。
 だから、ゴーレムはあくまで、お客さんをびっくりさせるだけのものだったのに」

「……」

 そう、ゴーレムは戦うためでも、道に立ち塞がる目的で作られたわけでもない。それが証拠に、ゴーレムは出現した後動く様子を見せなかった。
 行き止まりの罠の、ちょっとした脅かし用のはずだった。

 それを……

「まさか……ゴーレム、倒されちゃうなんてね……」

「……エフィーちゃんのアホぉ」

 異空迷路に挑む人々……その様子を別室で観察していた、ナタリアとコロニア。
 ナタリアは苦笑いを浮かべ、ゴーレムを召喚したコロニアは涙目で頬を膨らませるのだった。
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