上 下
738 / 751
第十章 魔導学園学園祭編

726話 クイズの時間

しおりを挟む


 教室の扉を潜ると、そこは異空間でした。

  ナタリアちゃんたちのいる「オウガ」クラス。そこでの出し物は、異空迷路。
 その名の通り、異空間に作られた巨大迷路だ。ここを、制限時間以内にクリアすればゴールとなり、商品をもらうことができる。

「って、制限時間が三十分もあるなら結構余裕かもしれないね」

 まずは進み、道に沿って歩いていく。
 巨大な壁が左右へと伸びていて、確かに巨大迷路の名にふさわしいかもしれない。

 とはいっても、三十分もあるんだ。楽勝楽勝。

「それはどうかしらね」

「ひょ?」

 だけど、クレアちゃんは渋い顔をしてつぶやいた。

「この空間がどれくらい広いのかはわからないけど……これだけ大きな壁が伸びてるってことは、迷路自体本当に巨大ってこと」

 クレアちゃんの言うように、一度迷路の中に入ってしまえば周囲は壁に遮られてなにも見えない。
 見上げれば空はもちろん見える。でも、飛んじゃいけない以上空が自由でも意味はない。

 ……さっそく、分かれ道だ。

「そもそも、単純に考えて……どれだけ巨大かもわからない迷路を歩いてゴールしようってだけでも、結構時間かかると思うわよ。
 その上、罠もあるって言ってた。罠がなんなのかはわからないけど、場合によってはそれでさらに時間を取られる」

「な、なるほど」

 冷静なクレアちゃんの意見。そっかぁ、そっかぁ。
 そう聞くと、のんびり歩いていくわけにもいかないかな。じゃあ走っちゃう?

 でも……

「この分かれ道も、外れだった場合戻る時間も取られるから、よく考えないと」

 右と左と見るけど、どちらも同じような道に見える。「ま、無駄に時間使って考えてるよりも直感で進むのもありだけど」と続けるクレアちゃん。

 ふむ、直感か。
 確かに、どっちが正解か分からない分かれ道で迷っていても仕方ない気はする。どっちが正解かのヒントもないし……

「って、なんか看板が立ってるよ?」

「あらホント」

 分かれ道となっている壁に、なにか看板が立っている。地面に刺さり、なにか書いてあるようだ。
 私は看板に近づき、その文字を読む。

『魔導学園を首席で卒業し、"魔導賢者"と呼ばれている魔導士はグレイシア・フィールドである』

「マルなら右へ、バツなら左へ……だって。
 ふふん、私結構文字読めるようになったんだよ」

「今その自慢いるっ? ていうかそれ自慢っ?」

 看板に書いてあったのは、質問文だ。
 そして、その質問の答えによって曲がる道が決まる……そういうことか。

 なるほど、問題の答えに正解すれば正しい道を進むことが出来る。間違えれば……ってことだね。

「そりゃそっか、迷路って言ったらクイズありきだもんね」

「そういうもの?」

 ともあれ、これでどちらの道に進むことが決められるようになったのは大きい。
 勘で右左を選んでいても、すぐにだめになっちゃうだろう。

 問題があれば、その回答を導き出せばいい。そして、この答えは簡単だ。

「答えはマル! よって右へ!」

 そう、この問題の答えはマルだ。
 師匠がこの魔導学園を首席で卒業したことも、なんかすごい名前で呼ばれていたことも知っている。

 まあ、私も知ったのはこの学園に来てからだけど。

「こんな問題なら誰でもわかるんじゃない? 簡単にクリアできちゃうよこれなら」

「自分を棚に上げてすごいこと言うわね。
 ……でも、確かにこれくらいの問題ならこの国の人間はもちろん、他の国から来た人だって……」

 問題の難易度に思うところありながらも、私たちは先へ進む。
 しばらく進むと、また分かれ道が出ていた。

「さあて、次はなにかな……」

『魔導士の中で、選りすぐりの上級魔導士七名のことをなんと呼ぶか。"七帝しちてい魔導士"なら右へ、"七柱しちちゅう魔導士"なら左へ』

「急に専門用語出てきた!」

 文字を読んでいくと、そこに書かれていたのはさっきとはまるで違うものだった。
 師匠のことといい、魔導学園の出し物だから魔導に関するものだと思っていたけど……やっぱり、そうみたいだ。

 問題は、この話をどこかで聞いたことがあるって言うこと。どこだっけなあ……どこって、学園でだと思うんだけど。
 いつだったかなぁ。ずいぶん昔な気がするし。

「右ね」

「え」

 迷いなく、クレアちゃんは足を進める。

「なによその顔は。魔導士を目指している者からしたら当然の知識でしょ」

「……そ、そうだよね! 当然だよね! あははは!」

 くそう、誰だよこんな問題作ったやつ! ずいぶん前の設定持って来やがって!
 なんかかっこいいかなって思って名前だけ決めたけど、結局出すタイミング失ったから忘れ去られてちょうどいいからここで出しとこうとか思ってるんじゃないだろうな!

「……ちなみに、"七帝魔導士"よりも上の階級が、この世に四名しかいない"四柱しちゅう魔導士"。
 それら全ての魔導士の頂点に立つただ一人の存在が、あんたの師匠"魔導賢者グレイシア・フィールド"よ」

「ししし、知ってるよ! もちろん知ってるよ!?」

 見るな、そんな目で私を見るな!

 ……それにしても、クレアちゃんがいなかったら早々にここで立ち止まることになっていたかもしれない。
 いやあ、二人で来てよかったよ。

「魔導学園にいれば、とりあえず余裕でわかる問題ね」

「ちくちく刺すのやめてもらえませんかね」

 しょ、しょうがないじゃない。いろいろあったんだよ……魔導大会とか、魔大陸行ったりとか。いろいろあって、細かいことは忘れてたんだよ。

 そんなこんなで、またも分かれ道にたどり着く。
 しかも、今回は三本の道……つまり、三択クイズだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...