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第十章 魔導学園学園祭編
725話 異空迷路
しおりを挟むなんだかんだと楽しんだけど、私たちもいろいろ回りたいところはあるので、ルリーちゃんたちとは一旦お別れだ。
教室内で自在に変身できた魔法。教室の外に出ると変身が解かれ、いくら念じてももう変身できなくなった。
教室の外でも、「楽しかったねー」とか「また来ようねー」とか笑いあって話している人ばかりだった。
「うぅ、なんか悔しい」
「別に競ってるわけじゃないでしょ」
「そうだけどぉ」
クラス間で競っているわけでは、ない。それでも、自分のところよりも繁盛しているっぽいのを見ると悔しく感じてしまう。
さて、そんな気持ちを抱きつつも私たちは残る一つ……ナタリアちゃんのいる「オウガ」クラスへと向かう。
ナタリアちゃん以外にも、コロニアちゃんやサリアちゃん。それにリーメイがいるクラスだ。
まあリーメイは今は自由時間だけど。他にもみんないるとは限らない。
なんにしても、このまま同学年コンプリートしちゃおう!
教室を移動し、隣のクラスへ。
「……あれ? 誰もいないのかな」
入り口につき、中を覗き込むと……教室の中には、誰もいなかった。
お客さんだけではない。生徒もだ。それどころか、教室の内装もいつものまま。
まるで、誰もいなくなった放課後の教室……といったふうだ。
「へぇ、こうなってるのね」
「クレアちゃん、なにか知ってるの?」
「パンフレット見てれば誰でもわかるわよ」
クレアちゃんにジト目を向けられる。そんな目を向けないでおくれよう。
さっきのクラス同様、今回も出し物の中身は詳しく見ていない。
内容は、確か……『迷路』だったはずだけど。
迷路なら、教室の外から見ても内装の変化はよくわかるはずだ。でも、いつも通り。
どうなっているのか……ま、入ればわかるか。
「いらっしゃいませ。ようこそ、異空迷路へ」
「……いくうめいろ?」
入り口にいた生徒にいらっしゃいませと言われ、にこりと微笑まれる。
彼女の言うことが正しいなら、このクラスの出し物は間違いなく迷路だ。まあ、嘘つく必要はない。
なら、聞き慣れない単語がくっついているのはなんなのか。
「中へとお進みください」
女子生徒の案内に従い、教室の中へと足を踏み入れていく。一歩、教室の中と外との境を、踏み越えた。
その瞬間……景色が、変わった。
「わ……?」
木製の壁に床……それに天井。たくさんの机が並んでいて、一つの部屋の中だったはずだ。
なのに、今目の前にあるのは……大きな、壁のようなもの。それに、足下には草が生えている。芝生?
ということは、ここは外? 教室の中に入ったのに、外に出た? どういうこと?
振り返ると、案内してくれた女子生徒が手を振っている。間違いなく、さっきまでいた景色。
「ここが、異空迷路……教室の中に入ると、異空間へと転送。そこで用意した、巨大迷路に挑んでもらう。
これが、このクラスの出し物ね」
パンフレットを読みながら、クレアちゃんが言った。なるほど……異空間に作られた迷路、だから異空迷路か。
教室の中を異空間に繋げる……このクラスでそんなことができるのは、おそらくナタリアちゃんくらいだ。
さっきの「ラルフ」クラスと、ちょっと似てるかもしれない。教室の中と外でまったく状況が違う。
異空間ってのは驚いたけど、そういう存在自体は体験した。クレアちゃんとルリーちゃんの決闘のとき……ジルさんがいた異空間に入った時だ。
「……」
あのとき、あの場にはナタリアちゃんもいた。
まさか……あれから発想を得て、こんな空間へ転送させようって考えたのか?
だとして、それを実現するなんて……どんなだよ。すごいなナタリアちゃんも。
『やあ、いらっしゃいエランくん、クレアくん』
異空間の存在に圧巻されていると、どこからともなく声が響いた。
それは間違いない、ナタリアちゃんのものだ。
『我がクラスの出し物、異空迷路。こちらで用意した巨大迷路をクリアしてもらえば、素敵な賞品をプレゼントするよ!』
姿こそ見えないけど、私とクレアちゃんが来たことがわかったってことは、どこかから見ているのだろう。
そして、この異空迷路の説明が始まる。
賞品があるとは、テンションが上がるね!
「ワクワクするよね! なら速攻でクリアしちゃ……」
『ちなみに飛んだり、壁を破壊して無理やり進むのはナシだよ。その場合即失格だからね』
「………………や、やだなぁ、わかってるよ。せっかくの迷路だよ、そんなつまらないことをしたら楽しめないじゃないかぁ」
「なによその間は」
ナタリアちゃんから釘を差されて、私はあははと笑う。
そんな乱暴なことをするわけないじゃないかと、言葉を返すけど……クレアちゃんには相変わらずじろりと見られたままだ。
まるで、私ならやりかねないと言わんばかりの視線だ。失礼しちゃうよね。
『じゃ、注意点を言うね。迷路の途中には、様々な罠を用意している。それらをかいくぐり、見事ゴールへたどり着いてもらうよ。
時間制限は三十分。制限内にゴールできなかった場合、こちらで失格と判断した場合、そして棄権する場合は進言してくれれば、教室の出口まで転送するよ』
時間制か……それもそうか。じゃないと盛り上がらないもんね。
それにしても、制限時間が三十分もあるのか。結構あるなと思うけど、逆に考えればそれだけの時間があってクリアできるかどうかってことだろう。
巨大迷路というからには、かなり大きいはず。
現に、目の前の壁はかなり大きい。この壁に沿って進んでいき、途中に分かれ道や罠があるってことか。
なんか、こういう試みはやったことないな。ワックワクしてきた!
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