史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

716話 その女、高飛車にて

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「やっぱり……僕と話すときだけあんななんだよなぁ」

 逃げるように去っていくノマちゃんの背中を見送りつつ、コーロランは困ったように笑っていた。
 ふむ……もうクラスが決まって半年以上経つのに、未だにあんななのか。

 もし私もこのクラスだったら、ノマちゃんのあの面白い行動を毎日見れるのか。それも悪くない。

「んー、まあ嫌われて避けられてるわけではないからいいんじゃない?」

「そうかな……っと、し、失礼しました」

「あはは、いいって」

 つい言葉を漏らしてしまったのを私に聞かれて、バツが悪そうに謝るコーロラン。
 どうやら、あんな態度取られてもコーロランから嫌われてるってわけではなさそうだな。

 ノマちゃんってば、あんなにコーロランラブラブオーラ出してちょくちょく話してくるのに、本人を目の前にするとあんななのかぁ。
 あんな態度じゃ、なんかいろいろ悟っちゃう人もいそうだけど。

「えぇと……なぜ、エーテンさんが僕を嫌ってないと?」

「あー……まあ……勘? 女の子の勘ってやつ?」

「なんで疑問形」

 まさか本人に、ノマちゃんはあなたのことが好きで照れて会話できないだけで逃げてるわけで嫌っているから逃げているわけじゃない……なんて言うわけにいかない。

 本当のことが言えないから、とりあえず勘と言うしかないわけだ。信じてないっぽいな。
 まあいいや……押し切るだけさ。

「いらっしゃいませ」

 パフェももう少しで食べ終わるというところで、教室の扉が開く。
 近くにいた男の子たちが挨拶して……そしてコーロランも、そちらに体を向けて……

「いらっしゃいま……せ……」

 挨拶をしようとしたけど……なんか、妙な感じだった。
 どうしたのだろうと、コーロランの顔を見ると……なんか、変な顔をしている。眉間にシワを寄せ、口を一文字に結び……せっかくのイケメンが台無しだ。

 いったい、なにがあったのか。そう思って、コーロランの視線の先を追う。
 そこには、今教室に入ってきたばかりの人物が立っているわけだけど……

「わ……」

 思わず、声が漏れた。だって、そこにいたのはとてもきれいな人だったからだ。
 薄い桃色の髪を肩まで伸ばした、白い肌が印象的な女性。日焼けなんかしたことがないんじゃってくらい白い。

 その身には赤色のドレスみたいなものを纏っていて、堂々とした姿で立っている。
 思わずため息が漏れてしまうくらいにきれいだ。今まで、かわいい子やきれいな人もたくさん見てきたけど……

 この人は、なんていうか次元が違う。なんか……そう、まるで作り物みたいな……

「あら、いた」

 その人物はキョロキョロと周囲を見回していたけど、ふと一点を見つめると薄ら笑みを浮かべて、歩みを進めた。

 ……こ、こっちに向かってきてるんだけど!? ちょっと、すごい堂々と歩いてくるんだけど!
 なになに、なんか怖いんだけど!

 コツコツとヒールのついた靴が音を鳴らし、コツ……とその音が止まった。立ち止まったからだ。
 彼女は、じっと見つめていた……私の隣にいる、コーロランを。

「まさか本当に、給仕の真似事をしているとは」

 コーロランを見つめ、くく……と笑う彼女は、その口端を上げた笑顔でも見惚れてしまうくらいだ。
 他のみんなも、そうだ……でも。

 コーロランが固まっているのは、彼女に見惚れているわけでは、なさそうだ。

「……サライア」

「えぇ、あなたのサライア・パルシュタンです」

「ぱ、パルシュタン!?」

 じっと見つめたまま、彼女の名前と思わしき言葉を漏らすコーロラン。それに応える、サライアと呼ばれた女性。
 そしてそのやり取りを聞き、声を上げるのが……クレアちゃんだった。

 自分が声を上げてしまったことに気づいたクレアちゃんは、はっとして口に手を当てた。けどもう遅い。

「……」

 彼女は、クレアちゃんをじっと見下ろす。輝く金色の瞳はまるで相手を射抜くよう。
 私は、そっとクレアちゃんの手を握った。クレアちゃんの肩から少し力が抜けたような気がした。

「えっと、有名人?」

 クレアちゃんが驚くってことは、かなりの有名人なのだろう。
 私の疑問に、クレアちゃんはこくこくとうなずくけど……

「まあ、驚いたわ。あなた、私を知らないの?」

 彼女は、少し驚いたかのように目を見開いた。
 でも、すぐにその口に笑みを浮かべて私をじっと見ていた。

「あぁ……あなたが噂の。世間知らずもそこまで行くとかわいいものですね」

「むっ」

 私が世間知らずなのは否定しないけど、なんかヤな感じだな。
 なんか、ダルマスに田舎者って言われてた頃のこと思い出すなぁ。
 ていうか、私の噂ってなんだよ。どんな噂が広まってるんだよう。

 それから彼女は、くくっと笑いながら手に持っていた扇子で口元を隠した。

「いいでしょう。無知なあなたに、私自ら教えて差し上げましょう。感謝なさい」

「あ、はい」

「私はサライア・パルシュタン。そこのコーロラン・ラニ・ベルザの婚約者、ということになっていますわ」

「へー。
 …………!?」

 高飛車な態度が気になるけどなんだかんだ教えてくれるんだな……と、彼女の自己紹介を聞いた。
 そこで、少し考えて……事の重大さに、気がついた。

 こ、コーロランの婚約者!? う、噂に聞いてたあの!?
 なるほど、だからクレアちゃんも知ってたんだ。王族の婚約者なら、相手も相当な地位の貴族のはず。

 まさか、こんなところで会うことになるなんて……確かコロニアちゃんは、コーロランと婚約者の仲が良くないって言ってたけど。

「……」

 でも、わざわざ学園祭に来てコーロランが執事やってるの見に来たり……さっき"あなたの"なんて言ってたり……
 本当に仲が悪いのか? ちょっと違和感。

 くすくす笑う彼女とは対称的に、コーロランの表情がさっきから固いままなのは気になるけど。
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