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第十章 魔導学園学園祭編

714話 人気あるんだよ

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 翌日……今日は、私とクレアちゃんはお昼を過ぎたあたりの担当なので、午前中は時間が空いている。
 だから、今のうちに二人で学園祭を満喫してしまおう。

「じゃあまずは、隣のクラスから行くのね」

「そうしよっか」

 行こうと決めていたのもあって、目的地はすぐに決まった。
 まずは、ノマちゃんたちのいる「デーモ」クラスだ。

 執事喫茶をやっているクラス。正直、出し物の内容は私たちと被っていない気がしないでもない。
 ま、それはそれだ。出し物が被っていても、その中身がどう変化するかはみんなの頑張り次第だ。

「お、あんまり人はいなさそうかな」

「朝一番だからね」

 さて、じゃあどんな具合にやっているのか拝見するとしますか!
 私たちは、教室へと向かい、入り口に近づいていく。

「どうぞ、いらっしゃいませ」

 私たちに気付いた、入り口に立っていた男の子がお辞儀をした。
 なんか、見覚えある子だな……それもそうか。このクラスとは、入学早々に試合をしているんだから。

 その丁寧な対応を受けながら、私たちは教室の中へと足を踏み入れた。

「おぉ」

 中に入ると、そこは雰囲気がまったく違っていた。
 内装の飾りつけもそうだけど、なんていうか……全体的に、キラキラしている気がする。

 なんかふわふわしていた私たちのクラスと比べると、ここもまた別空間って感じがするな。

「うわぁ、みんななんか輝いてるわよエランちゃん」

「あ、クレアちゃんもそう見えるんだね……」

「いらっしゃいませ」

 席に案内された私たちに声をかけてくるのは、聞き覚えの強い声。
 他クラスと関わることはそれなりにあるけど、彼とはより多く関わるからだ。クラスの代表者として、週に一度顔を合わせて話し合いをする。

 この「デーモ」クラスの代表者、コーロラン・ラニ・ベルザ。
 王族で顔がよく物腰も丁寧。そんな彼が積極的な接客をしているとあって、かなり人気のようだ。

 ふぅむ、ノマちゃんの贔屓目かと思っていたけど、これは……

「わ、ぁ……」

 ほら、クレアちゃんなんて恥ずかしさから顔を赤くしちゃってるもん。
 ただでさえ顔が良いのに、正装で常に笑顔なんて向けられたらその辺の女の子なら簡単にノックアウトしちゃうよ。

「あ、どうも……」

「これはお客様、ようこそお越しくださいました」

 ……すげー。クレアちゃん仕込みのウチの子たちもかなり様になっていたけど、なんかこう……根本から違うわ。
 王族だから、貴族のパーティーとかいろいろあるんだろう。王子としてのふるまいも教育されている。

 それを惜しげもなく発揮している感じだ。

「こちら、当店のメニューになります。お決まりになりましたら、近くの店員までお声がけください」

「あ、はい」

 メニューを渡され、去っていくコーロランを見送る。
 なんていうか、普段から丁寧だけど今はそれよりももっと……

 知った同学年にあんな言葉遣いされるとか、なんかぞわぞわするよ。

「……はっ、あぁ……き、緊張した」

「あ、クレアちゃん」

「な、なにあの破壊力……ちょっと犯罪じゃない?」

 固まってしまっていたクレアちゃんが戻ってきたけど、散々な言いようである。

「エランちゃん、よく平気でいられるわね」

「まあ……確かに顔はいいなって思うけど」

 普段と違う格好で、コーロランに対してドキドキはしたけど……このドキドキは多分、クレアちゃんが言っているのとは違うんだろうな。

 とりあえず、私はメニューを開くことにする。
 なんにしよっかなぁ。このために、朝ご飯抜いてきたからなぁ。

「といっても、軽めにしとかないと。他にも気になるものはあるかもしれないしぃ」

「なんかすごい堂々としてるわね……もしかして、こういうお店に行ったことがあるんじゃないでしょうね」

「いやあ、ないない」

 雑談を交わしながら、私もクレアちゃんがも注文する品を決める。
 近くの店員さんを呼んでから、注文……料理が来るまでの間、待つことになる。

「だんだん人も増えてきたねぇ」

「そうね。まあ、コーロラン様が店員やってるってだけでも人は来るわよ。
 あの人、結構人気なんだから」

「へぇえ」

 立場としては、第二王子のコーロラン。次の王位には第一王子のゴルさんがつくため、国王にはならない。
 でも、国民の人気はわりとコーロランにも多いらしい。ま、そのほとんどが女性だって話だ。

 ゴルさんは……ぶっちゃけイカつい表情ばっかしてるから、初対面だと怖がる人もいる。
 私だって、怖いとまでは思わなかったけどひどい人間だと思ったもん。

 対してコーロランは、全体的に柔らかい雰囲気を出している。ぱっと見良い人なのがわかる。
 そういった意味でも、実はコーロランは国民人気は高いのだ。

「学園祭を数日やるのは、人づてに話が広がるのもあるからかもね」

 昨日、この教室に来た人が街でその話をすれば、気になった人がまた増えてやってくる。
 そうやって、どんどん人が増えていく。学園祭も盛り上がる。みんなハッピー。

「ほら、みんなコーロラン様を見てるし」

 他のお客さんも、目的は一人。コーロランだ……
 ……いや、彼だけじゃないな。もう一人、コーロランに負けず劣らずに視線を集めている人物がいる。

 カゲくんだ。

「いらっしゃいませ、お客様。席へご案内します」

 その所作は、目を見張るものがある。
 さすがはノマちゃんに仕えていただけある。今では、寮が離れているからその機会も減ってい閉まったけど。

 だからといって、姿勢が鈍ったなんてことはないみたいだな。

「あの人も、人気だって聞くわよ。別のクラスの友達が話してた」

「へぇ」

 私がカゲくんを見ているのに気付いてか、クレアちゃんが耳打ちをしてくる。
 教室で、カゲくんがどんな過ごし方をしているのかは知らない。ノマちゃんのお世話を焼いているのか、それとも干渉していないのか。

 わからないけど、前者だとしてそれでも女の子からの人気が高いくらいには顔が良い。
 ……それはそれとして、その女の子たちには気の毒だけどそれは無駄な想いなんだよなぁ。

 だってカゲくん、男の子が好きなんだし。
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