718 / 751
第十章 魔導学園学園祭編
706話 みんな楽しんでいるよね
しおりを挟む私たちの番が来た。
運のいいことに、なのかはわからないけど、五人用の席が空いていたので私たちは、五人で教室に入ることに。
「おかえりなさいませ!」
教室に入ると、かわいい女の子たちの声。
挨拶が「いらっしゃいませ」じゃなくて「おかえりなさいませ」なのは、私とフィルちゃんの強い要望によるものだ。
ちなみに、お客さんが帰るときは「いってらっしゃいませ」だ。
「って、エランちゃん?」
「やっほ」
お迎えしてくれたのは、クレアちゃんだった。
うんうん、教室を出る前にも見たけど、やっぱり似合っているよね。
なんていうか、桃色の髪が黒白のめいど服に妙にマッチングしている気がする。とてもいいよ。
「な、なんで……せ、生徒会の先輩まで……」
「まあ、いろいろあってそこで一緒になったんだよ。案内お願い」
「え、あ、うん」
戸惑いながらも、クレアちゃんは席に案内してくれる。
五人が座れるテーブルの前に案内され、私たちは座る。その間も、歩き方や席への誘導の仕方に至るまで、その仕草は完ぺきだった。
さすがは『ペチュニア』の看板娘にして、クラスの接客担当のリーダー。
私も見てはいたけど、こうして実際に接客を受けると……そのすごさを、実感する。
「では、こちらがメニューになります。お決まりになりましたら、近くの店員をお呼びください」
「はーい」
去っていくクレアちゃんを見送り、私はメニューを開く。
さっきまでは、この中で注文されたものを作っていた。でも今は、自分が注文する側に回っている。
なんとも変な気分だ。
「さあて、どれにしようかなー」
「……見たことない名前ばかりね」
「うわー、絵うまーい」
同じくメニューを見るペルソナちゃんと弟くんは、それぞれ真逆の反応。なんか新鮮だ。
メニューに書いてある食べ物の名前は、確かに見ただけじゃどんなものかはわからないだろう。でも、名前の隣に絵が描いてある。
その絵を見れば、どんな料理かわかるわけだ。
ちなみに、絵を描いたのは……これが意外にも意外、筋肉男ことブラドワール・アレクシャンだ。
はじめは、女の子の中で絵を描こうという話になった。その中で、うまい子もいたんだけど……
『んン? やれやレ……そのような絵、子供でも書けル。貸してみたまエ』
そんなことを言いやがった筋肉男の絵は、うまかった。まるで本物がそこにあるんじゃないかというくらいに。
悔しいけど、クラスの中で一番絵がうまかった。
本人曰く「芸術は極めておくものだヨ」とほざいていた。
なんで、これまで協力的でなかった学園祭準備に手を貸してくれたのかはわからないけど、まあ気まぐれだろう。学園祭に参加しようなんて気はないらしい。
その証拠に、今日は朝からどっか行ってしまっている。
「それにしても、えらく賑わっているじゃないか」
教室を見渡して、タメリア先輩が言う。
確かに、私が出てった時よりもお客さんが多いようだ。
朝に比べれば、人が多くなる時間帯でもあるからな。みんな大変そうだけど……
「楽しそうだな」
みんな、嫌そうにやっている子はいない。楽しそうだ。
みんなでなにか一つのことをやるっていうのは、気持ちがいいものだよね。
私たちは、それぞれメニューを決めていく。
弟くんは、どれにしようか悩んでいるようだけど。
「そういえば、生徒会の他のみんなはどんな調子なの?」
出された水を飲みながら、私はタメリア先輩に聞いた。
なんとなく、メメメリ先輩やリリアーナ先輩が学園祭を楽しむ姿は想像できるんだけど……ゴルさんとシルフィ先輩は思い浮かばないんだよな。
みんな、どう過ごしてるんだけど。
「さすがに、俺も逐一みんなの行動を把握してるわけじゃないからなぁ。
ま、ゴルとリリアーナは一緒にいると思うよ」
「でしょうねー」
学園が再開してから、ゴルさんはリリアーナ先輩にやけに素直になった。
今回も、きっとゴルさんのほうから誘って二人で学園祭デートをしていることだろう。ていうかウチに来たし。
くう、うらやましい。
まあ、うらやましいっていっても私、別に彼氏がほしいわけじゃないんだけどねー。この年頃なら、そういう話をしている子もいるけど。
でも私は、女の子同士で話していた方が楽しいし。……いやでも、他の子はどうなんだろう。
クレアちゃんやナタリアちゃん、ルリーちゃんは、彼氏とかほしいと思ってるんだろうか? ノマちゃんほどおおっぴらじゃないにしても。
「あ、そういえばシルフィがあの人魚の子と一緒に歩いてるの見たぞ」
「! リーメイと?」
思い出したように、タメリア先輩が言った。人魚の子っていうのは、もしかしなくてもリーメイのことだ。
リーメイと、シルフィ先輩か……
元々リーメイには、生徒会の助っ人として私が呼んだ。半分はシルフィ先輩頑張れって意味でも。
そんな二人が一緒に行動しているのか……これは、むふふ、良い感じなんじゃないですかー?
「決めたー!」
「はいはい、大きな声出さないの」
そんなこんなで、弟くんは注文するものを決めたようだ。
ちなみに、さっきからルベルフ先輩はペルソナちゃんに話しかけているけど、ガン無視されている。どんまい。
みんな注文するものが決まったところで、私は近くのめいどさんを呼んだ。
「すみませーん」
10
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる