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第十章 魔導学園学園祭編
699話 デートのお邪魔はしませんとも
しおりを挟むベンチで休んでいると、ガルデさんとフェルニンさんと出会った。
学外からも人は多く来るから、二人も来るかなぁとは思っていたけど……まさか、初日に会えるとは。
それにしても、二人で学園祭に来るなんて。
「大丈夫だよフェルニンさん、わかってる。わかってるから」
「なにもわかってなさそうなんだが」
さっきの反応を見るに、デートであることにフェルニンさんはまんざらでもなさそうだ。
一方のガルデさんは……
「仕方ないとはいえ、ケルとヒーダも来れりゃよかったのになぁ」
「……」
まったく気にしていなさそうだ。
「なら、別に今日学園祭に来る必要はなかったんじゃない?」
学園祭は五日もあるんだ。なら、予定が合わない仲間がいるなら日程をずらせばいい。
でも、そうはできない理由があるから、今日来たんだろう。
「いや、それもそうなんだがな。フェルニンが、丸々予定が空いているのが今日だけだったんだ」
「ほほぉ」
「ったく、Aランク冒険者様はあちこち引っ張りだこってな」
なるほど……みんなで予定を合わせられなかったのは、それが原因か。
ガルデさんたちは、他にも三人で予定を合わせることはできるという。でも、フェルニンさんは鏡視下予定が空いていない。
だから、来るなら今日しかないわけだ。そこでたまたま、ガルデさんも予定が空いていたと。
フェルニンさん、今日しか空いてないのか……そういえば。
魔導士の冒険者は貴重だから、あちこちのパーティーに助っ人を頼まれるのだと、言ってたっけ。
「なるほどね。だからガルデさんをデートに誘ったわけか」
「だ、だからデートじゃない!」
「ケルさんとヒーダさんもいないし、二人には悪いけどおあつらえ向きだったってわけだねぇ」
「話を聞いて!」
「二人とも、こそこそとなんの話をしているんだ?」
フェルニンさんったら、ごまかさなくてもいいのに。私はわかってるから。
けど、肝心のガルデさんにそんな気が見られないのがなぁ。フェルニンさんみたいな美人と一緒なら、男なら舞い上がって喜びそうなものだけど。
なんなら私だって舞い上がる。
それとも……フェルニンさんが美人すぎて、逆に冷静になっちゃってるとか?
相手がまさか、自分とデートしているなんて思わないわけか……美人過ぎるってのも、困ったもんだ。
「大丈夫。私はフェルニンさんを応援してるよ」
「エランちゃんの中ですさまじい勢いで話が進んでいるように思うんだけど」
「私は恋する女の子の味方だからね!」
ていうか恋バナ大好き。もっとちょうだい。
……あー……でも、ノマちゃんがコーロランのことを語るようなアレは、勘弁してほしいかなぁ。
寝不足になるくらい語られるのはさすがにね。
「ところでエランちゃん、その恰好は?」
と、話に入ってこれないガルデさんが私を……私の服を、指さした。
やっぱり、触れちゃうよなぁ。
「これは、私のクラスの出し物、めいど喫茶の制服だよ」
「めいど喫茶」
「そ。めいど服。かわいいでしょ」
私はスカートの端をつまみ、その場で一回転。
ふふん、と決め顔をして、二人を見つめた。
「うむ、確かに似合っているな。ということは、エランちゃんは今その服を着て宣伝して回っているわけだ」
「うん、宣伝はしてるよ。休憩中だけどね」
「? ……休憩時間に、その服を着ているのか?」
「そだよ」
周りを見ても、自分のクラスの制服だろう服を着ている人はいるけど、さすがにめいど服ほど特徴的なものを着ている人はいない。
だからだろう。さっきから私に視線が注目しているのは。
……もういっそ、この格好で走り回って師匠を大声で呼んでしまおうか。いるならさすがに気付くだろ、多分。
「相変わらずだなー、エランちゃんは」
「その相変わらずってのがどういう意味なのかわかんないけど」
ケラケラと笑うガルデさん。その顔を、フェルニンさんはじっと見つめていた。
ああもう、これ絶対そういうことじゃん。
二人に会えたのは嬉しいけど、二人のデートを邪魔するのは忍びない。
「じゃ、私はそろそろ戻ろうかな。二人とも、私のクラスにも行ってみてよ」
私は立ち上がり、お尻をパンパンと払う。
正直道がわかんないけど、二人にいらない心配をさせないように強がってみせよう。
ついでに、宣伝も忘れない。
「もちろんそのつもりだよ。けど、エランちゃんに接客はしてもらえないのか」
「どっちみち私は料理担当だから、表には出ないよ。
でも、この時間ならキリアちゃんが接客やってるんじゃないかな」
「へぇ、キリアちゃんか。あの子とはあれ以来会ってないなぁ……久しぶりに行ってみようか」
以前、授業の一環でガルデさんたちとダンジョンに行った時、キリアちゃんとルリーちゃんも同行した。
その時に仲良くなったけど、あれ以来会う機会はなかったみたいだ。
キリアちゃんは接客担当だし、今行けば彼女の接客時間だから、会えるだろう。
あはははと、私とガルデさんは笑う。
「……え、料理担当で誰に見せるわけでもないのに、その服を着ているの?」
……そこへ、そんなフェルニンさんの言葉が聞こえてきた。
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