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第十章 魔導学園学園祭編

689話 スカートと靴下の間の隙間えっちじゃない?

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 クラスメイトの人数分のめいど服、制服を作った……とは言っても、やっぱり本当に人数分作るわけにはいかなかった。
 みんなで接客をするわけじゃないんだ、時間を決めて交代制で係に入っていく。

 なので、衣装はサイズが近い子同士で貸し借りすれば問題はない。その方が手間もかからないからと。
 そのことを指摘された私は、なるほどと手を打ったもんだよ。

「休憩中の子は、めいど服着ないんだもんね。でも、私は着ようと思うよ?」

「そう思うのはエランちゃんだけど」

「この格好で接客するのはまだしも、学内を回るのはさすがに……」

 どうやらみんなは、めいど服を着たまま歩き回るのは恥ずかしいらしい。
 うーん、確かにいつもは着ない感じの服だけど、新鮮な感じで楽しいと思うけどなぁ。

 とはいっても、感じ方は人それぞれだから、私の気持ちを強要するわけじゃないけど。

「でもこの服、制服とは手触り違うねー。スカートもひらひらしててかわいいし」

「ちょっ、スカートの端持ってひらひらさせないの!」

 ちょっとスカートの端をつまんでみるけど、これは改めて手触りがいい。それに涼しい。これを作ったカリーナちゃんたちには改めて感謝だな。

 めいど服の機能を確かめている私の手を、クレアちゃんが焦ったように止めた。
 男の子たちは、なぜか視線をそらしている。

「ほらほら、いつもとは違った長い靴下も履いてた。この、スカートと靴下の間の隙間えっちじゃない?」

「なにを言ってるの!?」

 とまあ、めいど服の着心地を確認したあたりで。校内に声が鳴り響いた。
 人の声を届ける魔石で、それが各クラスに配置されている。大元の魔石を通して、声が伝えられるのだ。
 ま、国に設置してある放送用の魔石の小型版みたいな感じだ。

 声の主は校長のもので、ただいまより学園祭を開始するというものだった。
 ちょうど準備も終えたところだ……ちょうどいいタイミング!

「じゃ、みんな張り切っていこうよ。まずは、前半の人たち、がんばろー!」

 料理係も接客係も、大きく分けて前半と後半の二つに分けている。
 前半クラスに入る子は後半は休憩……前半休憩ならば、後半はクラスに入る。ざっとこんな感じだ。

 もちろんら細かいところはまた別だ。忙しく働いた子にはそれなりに休憩してもらうし、なにかで呼び出されればその分また調整する。

「よーし、やるよー!」

 私は腕まくりをして、気合いを入れる。
 私は前半だ。クレアちゃんやカリーナちゃんにも。

 ただ、料理係の私は接客に回ることはない。裏方に回り、おいしい料理を提供するさ。
 料理係の人数は、私を含めて四人だ。みんな女の子……数が多いか少ないかはわからないけど、朝だしこれくらいでいいだろうという判断だ。

 接客係はクレアちゃんを中心に、回していく。めいど服を着ている女の子たちが主体だけど、男の子たちにも頑張ってもらう。
 それと、ないとは思うけど荒事が起きたら、頼りにしている。

「呼び込みよろしくねー!」

「えぇ!」

 呼び込み係の子が、看板を持って教室の外へ。呼び込みなのだから、教室の中にいても仕方ない。
 今は入り口に立っていてもらってるけど、いずれは学内を回ってもらうことに……

 ……それが無理だというなら、私が回るけど。

「外も賑わってきましたね」

「だね」

 学園祭開始の宣言があってから、教室の外は賑わいを始めた。
 他のクラスも、それぞれ盛り上げているってことだろう。

 窓の外を見てみると、次々と来場してくる人たちがいる。入り口では先生からチェックを受けつつも、誰も引っかからずに入ってきている。

「先生たちも頑張ってるんだね」 

 先生は先生で、やることがある。こうしてみんなで、学園祭を回していくんだ。

 そうして外を眺めていたけど、ガラガラと扉の開く音が聞こえた。それは、お客さんが来たということだ。
 私はちらっと、顔を覗かせた。

「おかえりなさいませ、ご主人様!」

 入ってきたお客さんに向かって、接客係の子が大きく明るい声を出した。
 接客をするにあたり、みんなが一番抵抗感を見せたのが……これだった。

 いらっしゃいませではなく、おかえりなさいませ……しかもお客を呼ぶ時は、ご主人様あるいはお嬢様となる。
 それは、貴族の子たちにとってはこれまでに経験したことのない挨拶だろう。

 接客が楽しそうだと言ってくれた子たちも、こればかりは抵抗感を見せた。
 ……それでも、最終的には納得してくれたわけだけど。

「こちらへどーぞ!」

 フィルちゃんの元気な声が、届いていた。
 このめいど喫茶を提案したのは、フィルちゃんだ。そしてフィルちゃんは一番、熱心に練習していた。

 その様子を見て、抵抗感のあったみんなも次第に認識を変えていった、というわけだ。

「ごちゅーもんは、どうしますか!」

 小さくもきちんと仕事をしているフィルちゃん……その姿に、練習とはいえみんな心打たれた。
 そして今、練習でやったことを実際にできている。

 小さなめいどさんに、お客さん……いやご主人様も鼻の下を伸ばしてしまっている。
 うんうん、小さい子が頑張ってるのは可愛いもんね。わかるよ。

「ごちゅーもん、入りましたー!」

 机に置いてあるメニューを見たご主人様が、注文の品を告げる。
 よぉし、次は私たちの番だよ!
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