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第十章 魔導学園学園祭編
687話 学園祭当日
しおりを挟むついに! 学園祭当日がやってきた!
目覚めた私は、クラスに寄る前に生徒会へと向かう。ホームルームが始まる前に、一度集合しておくよう言われたのだ。
ただ、私はすぐに生徒会に向かうのではなく、ある人物と合流してから向かった。
生徒会の扉を開けると、すでに他のメンバーは揃っていた。私は、挨拶をして一緒に来た人物をみんなに紹介する。
「というわけで、リーメイを連れてきました!」
「やっホー」
「……」
連れてきたのは、リーメイ。今いる生徒会メンバーだけでは手が回らないので、助っ人として連れてきたのだ。
同じ学年から自由に選んでいいとのことだったし、文句はないはずだ。
元気に挨拶するリーメイを、ゴルさんたちが見ていた。その中でも、シルフィ先輩は一段と固まっていた。
「転入生の、リーメイだな。エランが選んだ助っ人ということか」
「そういうこと!」
リーメイには前もって、生徒会のお手伝いをしてくれないかと頼んでおいた。それをリーメイは、快く受け入れてくれたのだ。
すでにみんなと握手を交わしているリーメイを見つつ、まだ固まっているままのシルフィ先輩に視線を移して……
「あはっ」
パチン、とウインクをしておいた。
リーメイを選んだ一番の理由は、シルフィ先輩がリーメイを気になっているらしいから……だ。
これを機に、少しでも仲良くなってほしいものだ。学年の違う二人だけど、生徒会で接することができれば距離も縮まるはずだ。
ナイスだ私。なんかシルフィ先輩がこっち睨んでいる気もするけど、それはきっと気のせいだろう。
リーメイも生徒会の本メンバーになれば話はまた変わるけど、さすがにそんなにうまくはいくまい。
「それでも、一年はまだ二人だ。もしまだ手が足らないと思えば、お前の判断で手伝いを増やせ」
「はーい」
「それとシルフィ、お前は……」
「……え、あ、はいっ。一応、何人かに声は掛けているので、問題はないかと……」
ぶっちゃけリーメイをここに連れてくる必要はなかったんだけどね。シルフィ先輩の反応を見たかった。
そのシルフィ先輩も、同学年の人に助っ人を頼んでいるみたいだ。
生徒会の助っ人とは言うけど、この期間だけ臨時で見回りをお願いする……といった軽いものだ。
揉め事があったら、本メンバーを呼んでもらえばいい。人手が増えることが重要なんだ。
それなら、私ももうちょい声かけておこうかなぁ。
「シルフィも、よろしくネー」
「お、あ、あぁ。よ、よろしく」
さっきも、あのゴルさんの言葉にすぐに反応できなかったり……どうやらシルフィ先輩は、よほどリーメイを意識しているみたいだ。
今だって、手を握られぶんぶんと振られ、顔を赤くしている。
「……ねーえエランちゃん。もしかしてシルフィってさ……」
「はい、リーメイのこと気になってるんだと思いますよ」
「へー、それを知ってあの子を選んだんだ。やるねぇ」
二人のやり取りを見て、勘づいたタメリア先輩が話しかけてきた。
くく、と喉の奥で笑い、実に楽しそうだ。
「ま、一番の理由はそれだけど、それだけってわけじゃないですよ。リーメイを選んだのにも、他にちゃんと理由があるのです」
「ほほぉ?」
「まだ学園のみんなと接して数日だけど、リーメイは人をよく見ている」
学園が再開する前から、リーメイはみんなと仲良くしていた。
そのとき気づいたんだけど、リーメイは人をよく見ているってことだ。困ったことがある……そんな素振りを見せた時点で、積極的に話しかけていたり。
そんなリーメイだから、この学園祭期間はきっと力になってくれると感じたのだ。
「ま、エランちゃんが選んだなら文句はないよ。それに、転入生だからこそ俺らにはわからないことがわかるかもしれないし」
転入生どころかリーメイは人間の国に来たのも初めてだけど、外から見た人の意見って大事だもんね。
リーメイには気になったことを報告してもらったらいい。
「さて、まもなく学園祭開催だ。教室ではすでに準備も完了しているだろう。
学園祭では、学園外からの人間も多数訪れる。魔導学園の生徒として、恥ずかしくない行動を取るように」
「はーい」
生徒会では軽く話をした後、それぞれの教室に戻った。学園祭中は、学園から支給されている端末とは別に生徒会専用の端末を渡された。
用事があるときは、これで連絡を取ることになる。
教室に戻った後、ホームルームで学園祭の際の注意事項なんかを言い渡された。
要は、ゴルさんも言っていたように学園の生徒として恥ずかしくない行動をしろ、っていうのと……
「お前たちには、初めての学園祭だ。だからまあ、ハメを外しすぎない範囲で楽しめ」
うんと、楽しめというもの。
学園外の人にも楽しんでもらうとは言え、やっぱり一番は私たち自身が楽しまなければだめだろう。
この学園で同じクラスになって、半年以上を同じ教室で過ごして……そんなみんなと一緒に協力して、なにかをやる。
飾り付けられた教室を見回すと、いよいよその時が近づいてきたのを感じる。
先生の話も早々に終わり、いよいよ……私にとって初めてのお祭り。学園祭が、始まる。
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