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第十章 魔導学園学園祭編

684話 学園祭前日

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「いよいよ明日かぁ」

「楽しみねぇ」

「ですね」

 今日は、学園祭前日。
 学園祭を明日に迎えて、みんなで最終チェック。そして今は、お昼休み。

 私とクレアちゃん、それにルリーちゃんは揃って食堂にいる。
 他のみんなは、それぞれ準備があったりとかで、ここにはいない。

「これまでに、魔導学園の学園祭に参加したことはあるけど……自分が開催する側に回るのは、なんだか違ったワクワクがあるわね」

 この国で生まれ育ったクレアちゃんは、何度か魔導学園の学園祭に行ったことがあるのだという。
 うやらましい限りだよね。

 そんなクレアちゃんも、今回は参加する側ではなく開催する側。
 忙しさも楽しさも、全然違うはずだ。

「二人とも、学園祭……というか、こんな大きなお祭りは初めてなんだっけ」

「そうなんだー」

「はい」

 私もルリーちゃんも、それぞれこの国の外で育った。人の少ない場所で過ごしてきたから、大きなお祭りに参加したことはない。
 ルリーちゃんは、身を隠しながら生きてきたからお祭りなんて暇はなかっただろうしね。

「私は何度かこの国に連れてきてもらったことはあるんだけどねー。
 でもせっかくなら、一回くらいは学園祭に連れてきてくれてもよかったと思わない?」

「あははは」

 師匠に連れられてこの国へ来たのは、せいぜい買い物くらいだ。
 今思えば、そういう大きなお祭りに連れてきてもよかったじゃんね!?

 まあ、過ぎてしまったことをぐちぐち言っても仕方ないけど。

「でも、エランちゃんたちみたいな子も結構いると思うわよ」

「お祭りに参加したことない子?」

「少なくとも、魔導学園の学園祭はね。
 この学園の生徒、国外から来た人もいるじゃない? だから、魔導学園での行事に触れるのが初めての子とかね」

「なるほど」

 この魔導学園での学園祭は、経験するのも初めての子が多い。だから、手探り状態の子もわりといる。
 それでも、みんなでいいものにしようと頑張っている。

 その成果が、明日形になって表れる。

「初めてと言えば、レーレちゃんは学園祭が初めてと言うことで、楽しそうにしていましたよ」

「そうなのね」

 ……そういえばレーレちゃん、というかその親のレイド・ドラヴァ・ヲ―ムは元は別の国の王族だとか言っていた気がする。
 なら、この国には訪れたことがないのかもしれない。

 それを引いても、ああいう小さい子ならお祭りは楽しみだろう。

「本人は楽しそうだし、その姿を見たクラスの女子たちもきゅんとしちゃってて」

「あー……それ、見たことあるかも。ねえエランちゃん」

「フィルちゃんのことかぁ」

 小さい子が楽しみにしてて、その姿がかわいいとテンションが上がる女の子たち……それは、ウチのクラスでも同じことが言える。
 なんせ、フィルちゃんがそうなのだ。フィルちゃんも学園祭は初めてで、わくわくしていていた。

 その様子を見た女の子たちから、「キャー可愛い」などともみくちゃにされていた。
 ちなみに、フィルちゃんもめいど喫茶ではめいど服を着るわけだけど……それについて、カリーナちゃんは鼻を膨らませていた、


『気合いを入れて作らせてもらいます! それはもう、これ以上ないくらいに!』


 めちゃくちゃ気合いが入っていた。
 フィルちゃんのめいど服を見てみたいと、そう思っているのは私だけではなかったらしい。

 そんなめいど服だけど、学園祭前日の今すでに完成している。けど、私はまだ完成品を見ていない。
 なぜかって? そんなの当日の楽しみにしたいからだ。

 服のサイズなどに関しては、ダルマスの件でわかっている。カリーナちゃんなら、完璧な仕事をやってくれるはずだ。

「はぁー。もう楽しみで、今晩眠れるか心配だよー」

「ダメよちゃんと寝ないと。学園祭は五日もあるんだから、休んどかないと持たないわよ」

「わかってるよー」

 学園祭は、五日間開催される。その間、お祭りを楽しむことも大切だけど、問題が起こらないように努めるのが生徒会の役割だ。
 もちろん、六人じゃ人手が足りないので、その期間だけ人手を募集したりもした。

 学園祭では、人の出入りが普段よりも緩やかになる。変なことを考える人がいないと思いたいけど、そのあたりのチェックもある。

「特にエランちゃんは、生徒会なんだからね」

「あーい」

 今まさに考えていたことを話される。
 私がなにをするかは、みんなには軽く話している。

 正直、生徒会の仕事が優先なためクラスの喫茶店にはあまり顔を出せないかもしれない。
 せっかく料理担当だって張り切っていたのに、任せっきりになっちゃうかもしれないんだよなぁ。


『だからせめて、学園祭ではめいど服で過ごさせてください!』

『なにがせめてなのかわからないのだが……』

『私が着たいからだよ! それに、めいど服着て移動してればクラスの宣伝にもなるし!』

『そもそも今年学園祭初めての、一年生のお前をあまり酷使する気はないのだが……まあ、好きにしろ』


 ゴルさんとのやり取りを経て、私は生徒会の仕事をしながらでもめいど服を着ていい許可を得た。
 クラスのみんなに任せきりになっちゃうなら、せめて宣伝くらいはしないとね!

 メニューは私が考えたけど、それでも作るのを任せたままになってしまうのは心苦しい。

「その生徒会、放課後にも行くんでしょ?」

「うん、最終チェックだって。まあ、前日になってチェックが残っているなど問題ありだ……ってゴルさんは言ってたから、もうほとんどやることはないんだけどね」

「ふぅん」

 昼休みを終えたら、授業……いや、前日の最終確認段階だ。それから、放課後には生徒会。
 忙しいけど……いよいよ、迫ってきている感じがするよね!
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