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第十章 魔導学園学園祭編
677話 やるべきことは決まった
しおりを挟む「私たちも、カリーナさんを手伝います」
それから、また何人かは自主的に挙手してカリーナちゃんの衣装作りを手伝うことになった。
こちらもやっぱり女の子ばかりだけど、わりと貴族の子もいた。料理や裁縫は、花嫁修業的なやつで身につけている子もいるみたいだ。
ただ、料理は人前に出せるレベルでないのが多いという。別に気にしないのに。
私は料理とか洗濯といった家事には自信があるけど、裁縫はさっぱりだからなぁ……
服がだめになっても、すぐに師匠が新しいの買ってくれたし。直すっていう発想すらなかったんだ。
なので、カリーナちゃんたちの存在は助かる。
「じゃ、衣装関係はカリーナちゃん中心にお任せするってことで。女子だけでなく男子も要望があったら、カリーナちゃんに……
って、任せ過ぎかな」
「いえ。衣装のことでしたらこのカリーナ・レンブランドにお任せくださいませ」
自信満々に、どんと大きな胸を張る。
本人があの調子なら、任せても大丈夫そうかな。
他の子にも、ちゃんとフォローするように頼んで……と。
「で、要は喫茶店ならなにを提供するんだ?」
諸々話がまとまってきたところで、ダルマスが言う。
喫茶店というからには、めいどの衣装だけじゃだめだ。ちゃんと喫茶店としての役割も果たさないと。
喫茶店といえば、甘いもの……ってイメージが私の中にはあった。
「とりあえず、パフェとか?」
「あとはオムライスとかもいいんじゃないかしら」
「あまり手のかからないものの方がいいと思うわ」
それぞれ意見を言い合う。たくさんのものを作るよりも、いくつかの数に絞って提供したほうがいいだろう。
甘いものだと女の子は喜ぶだろうけど、男の子や学園外からの大人もいる。ジャンルは広いほうがいい。
まあ今は、なにをやるか……を決める時間だ。細かいことはまた後日決めてもいい。
あんまり時間もないけど。
一応はやるべきことが決まり、ちょうどチャイムが鳴る。授業終わりだ。
「喫茶店かぁ、なんだかんだ楽しみね」
「うんうん。クレアちゃんにはぜひとも期待してるよ、看板娘ちゃん」
「やめて」
実家の『ペチュニア』では看板娘だったクレアちゃん。学園祭でも、その働きに期待したい。
とりあえず、学園祭の出し物と料理組と接客組に分かれること、そして衣装係リーダーカリーナちゃんってことかな。大まかに決めたのは。
こうしたクラス全体での話し合いは授業の時間を使うけど、なにもこの時間でしか話し合いをしちゃいけないわけじゃない。
現に、すでにカリーナちゃんのところには何人かの女の子が集まっている。
その視線の先には、私が黒板に描いためいど服がある。
「あんなひらひらの衣装、恥ずかしくないかしら」
「クレアちゃんかわいいし似合うってば」
そういえば、『ペチュニア』では別に決まった制服で仕事とかはしてなかったな。
まああそこ本来宿屋だから、別に気にしないけど。
「他人事だと思って……エランちゃんは料理係だから、めいど服は着ないんだし好きに言ってくれちゃって」
「え?」
「え?」
クレアちゃんにの言葉に首を傾げると、クレアちゃんもまた首を傾げた。
「いや、エランちゃん料理係になるんでしょ?」
「うん、そのつもり」
「なら、裏方なんだし……別に、めいど服着なくていいんじゃないの?」
「それはそうだけど……純粋に着てみたい」
「……」
だって、自分で描いておいてなんだけどあの服かわいいじゃん!
ひらひらというかふりふりしてて、いかにも女の子って感じだ。
まあ、動きにくそうなのが難点だけど……別にあれ着てドンパチするわけじゃないんだし、それは構わない。
「だめかな」
「いや……だめではないだろうけど」
荷物をまとめて、席を立つ。
とりあえず、今日も生徒会だし……ぽっちりぽっちり行くかぁ。
ふと、教室内をキョロキョロする。すると、ダルマスと目が合った。
あぁ……しばらく、ダルマスの特訓に付き合えてないや。魔導大会での感想も兼ねて、ゆっくり話をしてみたいんだけどなあ。
私はとりあえず、ダルマスに今日も付き合えないことに対して謝るジェスチャーをしておいた。
「どうかした、エランちゃん」
「いや、なんでもないよ」
ダルマスとの特訓は、秘密特訓だから他の子には内緒なのだ。まあキリアちゃんにはバレちゃったわけだけど。
……そういえばキリアちゃん、ダルマスのことが気になるって言ってたよなぁ。魔石採集の授業をきっかけに。
あぁ、そのあたりのお話もじっくりしたい! でも話の内容が内容だけに、お茶会とかじゃできない!
「ふぅ……忙しい女ってつらいよね」
「いきなりどうしたの」
とりあえず、フィルちゃんはカリーナちゃんたちの輪に混ざっているし、任せても大丈夫だろう。
ちなみに私たちの部屋の場所は、ちゃんと覚えたようだ。なので、私やノマちゃんと一緒じゃなくても帰ってこられる。
クレアちゃんとそれからまた少しだけ話して、私は教室を出る。
生徒会室では、学園祭についての話し合い。クラスでも生徒会でも大忙しだ。
本当ならもう少し期間を取りたいけど、明日にはそれぞれのクラスでなにをするか決めて、生徒会でそれをまとめる。それぞれなにをするのか把握して、当日の動きを決めていく。
やることはたくさんある。でも、ワクワクしているのは……お祭りが、だんだん近づいてきているのがわかるからだ!
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