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第十章 魔導学園学園祭編
672話 魔導学園再開
しおりを挟む「ふぁあ……んー、よく寝たぁ!」
私はベッドの上で起き上がり、うんと伸びをする。
いつもは目が覚めてもまだ眠たかったりするんだけど、今日は目覚めがいい。気持ちが良い。
カーテンを開けると、日差しが差し込んでくる。うん、いい天気だ。
「うんん……あらぁ、フィールドさん。おはようございますわ」
「ノマちゃん、おはよう! いい朝だね!」
「……元気ですわねぇ」
私がこんなにも元気なのには、理由がある。
なんてったって、今日から魔導学園が再開するのだ。だから、今日までわくわくが止まらなかった。
いやあ、久しぶりだなぁ……学園が休みでも寮に残っている子もいるから、会えた子はいる。でも、みんなじゃない。
それに、学園でしか学べないものもあるしね。
なにより、再開してから始まるという、学園祭が楽しみで仕方がない!
「ママ、朝から元気!」
「うん、元気だよー」
私は、フィルちゃんの頭を撫でながら笑いかける。
フィルちゃんも、学園が再開すれば学園に通うことになる。
元々、魔導の知識は乏しいフィルちゃんだけど、事前に授業には参加していたことや、前例のない魔物との使い魔契約を交わしたということで通えるようになった。
私たちも、少なからず魔導の心得は教えているしね。
「一応、魔導の杖は学園から貸してもらってるんだよね」
先日、フィルちゃん用の魔導の杖を学園から借りた。
魔導の杖は自前のものがある人はそれでいいけど、ない人は学園から借りることが出来る。
ちゃんと、フィルちゃんサイズにあった長さになっている。
「さて、じゃあ準備するよ! ほらノマちゃんも起きた起きた!」
「ふぁあい……」
ちゃっちゃと準備を済ませていき、まずは学食へ。
今日から学園が再開するということで、生徒の数も全然違う。実家に戻っていた人たちも、戻ってきたのだ。
懐かしい顔を見たり、すれ違いざまに挨拶をしたり……食事を済ませたら、生徒全員が入ってもまだ余りある講堂へ移動する。
そこで、学園再開の挨拶がある。理事長や校長、生徒会長から。
それぞれの挨拶を聞いて、私たちは自分の教室へと向かう。
長く教室から離れていても体は覚えているみたいで、自然と足は教室へと向かっていた。
「うわあ、久しぶりの教室だぁ!」
教室は、以前となにも変わっていなかった。変わらずに、私たちを迎え入れてくれたって感覚だ。
そして、周囲を見渡せば懐かしいクラスメイトの姿!
あぁ、これだよこれこれ。戻ってきたんだなぁ。
「エランちゃん、どうかした?」
「なんでもないよ。ちょっと嬉しくなっちゃって」
「……そ」
みんな、楽しそうに話をしている。久しぶりに会うクラスメイトに、気分が上がっているのだろう。
と、みんなで話もしたいけど……ガラガラ、と扉が開いた。
「ほら、お前たち。席につけ」
教室に入ってきたのは、サテラン先生だ。その後ろには、ウーラスト先生もいる。
みんな、がやがやと騒ぎながらもちゃんと自分の席に座っていく。
やっぱり、みんな自分の席は覚えているもんだな。
「さて、久しぶりだなお前たち。それぞれ積もる話もあるだろうが、学園再開の挨拶はさっき理事長たちがしていたから、私から言うことは特にない」
先生は、相変わらずだなぁ……まあ先生とは、休校中も会うことはあったから久しぶりって感じはしないよね。
その先生の隣に、小さな影がある。
「知っている者もいるだろうが、今日からこのクラスで共に学ぶことになる……」
「フィルです! よろしく!」
「ぴぃ!」
先生の隣に立っていたフィルちゃん、そして頭の上に乗っかったもふもふが元気よく挨拶している。
フィルは、このクラスの人間ならみんな知っている。一緒に学ぶことになった驚きはあっても、それだけだ。
他に驚きがあるとすれば……
「あ、あれって……」
「あー、こいつは魔物だ。フィルは魔物と使い魔契約をしているが、こいつに害はない。
なあフィールド」
「え? あ、はい」
もふもふ……というか魔物に対してやっぱり反応があった。だけど、それを先んじて先生は言葉を挟む。
確かに魔物だけど、安全だ……と。
なぜか私の同意を求めてきた。
「そ、そうですか……」
「フィールドさんが大丈夫って言うなら……」
「あぁ、これ以上ない保証だ」
……なんか私のことめちゃくちゃ評価されてない? 私が安全だって言ったからってみんなあっさり受け入れ過ぎじゃない?
私はみんなの中でどういう存在なんだ。
「学園再開にあたって、フィルが今日からこのクラスの仲間となる。
だが、他のクラスにも新たに転入してきた者もいる」
「へー」
どうやら、新しい仲間はこのクラスだけじゃあないみたいだ。
それぞれ、別クラスにも仲間が増えるんだ。
ただ学園が再開しただけじゃなくて、他にも環境が変わる。
「ま、これまでいろいろあったが……無事、学園も再開した。これからは、お前たちの中でも楽しみにしている者も多いだろう、学園祭に向けて準備していくことになる」
「おー!」
先生の言葉に、クラスの半数以上が騒ぐ。
みんな、楽しみにしてたんだ。そりゃ、学園でのお祭りだもんね……私だけじゃないんだ、楽しみだったのは。
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