史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

671話 懐かしい時間

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 ノマちゃんが戻ってきて、学園が再会したらフィルちゃんとレーレちゃんも通うようになる。
 一気に仲間が増えるというのは、なんだか嬉しいものだよね。

「ノマちゃん、その子魔物なんだけど大丈夫?」

「そうなんですの? おとなしいですわよ」

 頭上に毛玉を乗せ、なでなでしているノマちゃん。その姿だけ見たら、なんと和む光景だろう。
 その毛玉が魔物であることを除けば。

 確かに、もふもふはおとなしい。魔物とは思えないくらい。
 私やフィルちゃんを始め、他の生徒と接する機会があっても暴れることはない。

 自分からこうして甘えに行くのは、フィルちゃん含めてノマちゃんが二人目だけど。

「この子、なんて名前ですの?」

「もふもふだよ!」

「まあ、そうなんですの。素敵な名前ですわ」

 ……不思議とノマちゃんとフィルちゃんは、波長が合うっていうか……すぐに仲良くなったんだよね。
 精神年齢が同じくらいだからだろうか?

 ともかく、フィルちゃんとは仲が良いままだし、もふもふも懐いているなら一緒の部屋で問題なさそうだな。

「それにしても、フィールドさんはともかくフィルちゃんまで使い魔契約を果たしてしまうとは……わたくし、少々焦ってしまいますわ」

「ボクもだよ。同じ【成績上位者】とはいえ、エランくんには一歩も二歩も……いや百歩は先に行かれている気分だよ」

「そ、そうかなぁ」

「そこで照れるのがフィールドさんですわね」

 まあ、私は運が良かっただけだ。その場には契約に詳しいラッヘもいたし、細かい作業は全部やってもらった。
 フィルちゃんの場合は……まあ、もふもふの方から行動を起こしてたけど。

 そう、私もフィルちゃんも自分だけの力でやったわけではない。ラッヘたちがいたから……

「……ラッヘたち、今どうしてるのかな」

 記憶を失ったエルフのラッヘや、珍しい種族ニンギョのリーメイ。
 二人とも学園に来てから、あんまり話せてないな。一応、他の子たちが見てくれてるって話だけど。

 ラッヘもリーメイも私が連れてきたようなものなのに、なんだか任せる形になっちゃって悪いなぁ。

「ラッヘくんなら、あそこで遊んでいるじゃないか」

「へ?」

 私のつぶやきが聞こえたのか、ナタリアちゃんがある方向を指す。
 その方向に顔を向けると……何人かの女子生徒たちとボール遊びしている、ラッヘの姿があった。

「いたぁ!?」

「いたよ、初めから」

「言ってよ!」

 全然気づかなかった!
 なにやってんのあれ! 遊んでるんだよねあれ! めちゃくちゃボールで遊んでる!

 うわぁ、すごい笑顔だよ。記憶を失う前じゃ考えられないくらいの笑顔だよ。

「どうやら、他の子とも仲良くしているみたいだね」

「み、みたいだね」

 エルフだし、ちょっと心配なところはあったけど……
 師匠の存在、ウーラスト先生の存在が、エルフへの風当たりを良くしている。

 おまけに、ラッヘは記憶をなくしている、記憶喪失の相手を、邪険に扱う人はいないだろう。
 記憶を失ってよかったとは口が裂けても言えないけど、記憶を失ったことで他の子とのコミュニケーションが取りやすくなっている。

 以前までのラッヘだったら、二言目には「くそが!」って感じだったもんなぁ。
 ……いや、あれって私だったからかなぁ。

「全部、エランくんが気負う必要はないと思うよ」

「え」

 ナタリアちゃんの言葉が、なんでか突き刺さった。

 ……そっか、私フィルちゃんのことやラッヘのこと、いろんなことを自分だけで背負おうとしていたのかも。
 そんな必要ないくらいに、この場所には頼れる友達が集まっている。

「……そうだね」

「そうですわ! わたくしも一緒に背負いますわ!」

「さすがはノマお嬢様。立派な心掛けです」

「また出た!?」

 普通に会話していたのに、にゅっと会話に混ざってくるのやめてほしい! 心臓に悪いから!

 いつの間にかノマちゃんの隣にいたのは、カゲ・シノビノくん。
 ノマちゃんの家に仕えている家柄の人で、白髪美形だけど恋愛対象は男というなかなかに濃い人だ。

「あら、カゲ」

「ノマお嬢様、いけませんこのような獣を頭に乗せては。髪が乱れます」

 突然現れたカゲくんに、ノマちゃんは驚いた様子もない。
 そしてそれが当然のように、カゲくんは流れる動きでもふもふをノマちゃんの頭の上から退かす。

 続いて、どこかから取り出したくしなどで、ノマちゃんの髪型を整えていく。

「ありがとうカゲ。でも、あなた大丈夫ですの?」

「私の時間は、全てお嬢様に捧げています。このような行動ささいなもの」

「いえ、そういうことではなくて。もふもふちゃんに思い切り噛みつかれてますわよ」

 カゲくんの頭には今、なぜかもふもふが噛みついている。あんなにおとなしかったのに。
 それを気に留めることもなく、カゲくんは作業を続けているけど。

「こらもふもふ、めっ」

「ぴぅ」

 フィルちゃんの言うことは聞くのか、すぐに離れたけど。

 にしても、こういうやり取りもなんだか久しぶりだなぁ。
 今日からはノマちゃんともまた一緒の部屋で眠れるし、学園再開も近いし!

 その後、またフィルちゃんの訓練を見てみたり、ノマちゃんと話をしたり……時間を過ごした。
 そして、やっぱりノマちゃんは一緒の部屋になって。一緒に遊んで、しゃべって、寝て。

 そんな、楽しい時間を過ごして……だからだろうか。あっという間に、学園再開の日がやって来た。
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