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第九章 対立編

665話 大役を任された

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 魔導の訓練のご飯休憩中。
 コロニアちゃんからもたらされた情報は、私にとって飛び上がりたくなるくらいに喜ぶべきものだった。

 学園が再開すると、いうものだったからだ。

「ほ、本当に!?」

 思わず私は、そう聞いていた。
 コロニアちゃんが、わざわざこんなところに来てまでそんな嘘をつくはずがない。そんなことはわかっている。

 それでも、確認しなければと思ってしまうほどに、衝撃的な内容だった。

「うん。生徒たちには明日にでも、発表があるんじゃないかな。
 いや、もしかしたら今日には……?」

「どっちですか……」

「ともかく、再開するのは本当なんだね!」

 それが私にとって、朗報であることには違いない。

 なんか久しぶりだなぁ……魔導大会の件から、学園は休校になっていた。
 だから、体感はみんなと同じなんだけど……魔大陸に行ったり、いろいろあったからかなぁ。

 ずいぶん久しぶりに思えるよ。

「ゴル兄様が、そう話してた」

「そうそう。そのゴルさん、今どうしてるの?」

 ゴルさんといえば、魔導大会の事件で怪我をして入院していた。
 その後、国中が洗脳されている事態に遭遇し、なんやかんやあってそれを解決。

 国民の混乱を収めるために、お城に戻っていたはずだ。

「……父上が亡くなって、本当ならゴル兄様が王位を継ぐはずだったの。
 でも、ゴル兄様はどんなに早くても、学園を卒業してから王位を継ぐようにって生前父上と話していたみたいで」

 ザラハドーラ国王……コロニアちゃんたちの父親が亡くなって、次の王位は本来ならゴルさんだ。
 そこに洗脳事件なんてややこしいことがあったけど、それも解決……

 ただ、それを抜きにしても、ゴルさんが王位を継ぐのは学園を卒業してからに決めていた……か。

「だから、ゴル兄様が卒業するまでのあと半年弱。ジャス爺と、他の人たちでなんとかしていくみたい。
 同時に、ゴル兄様が王位を継ぐ準備も整えるって」

「なるほど」

 本格的な王位継承までは、他の人で代役を立てるって感じか。
 そりゃ、前の王様が亡くなったからってはい次、とはできないだろうしな。

 いろいろな準備も兼ねて、まだ王位継承は先ってことだ。

「……そっかぁ」

 そういえば、ゴルさんたちが卒業するまであと半年くらいなのか。
 ゴルさんたちと会って同じだけの月日が経った頃には、もうここにはいなくなるのか。

 なんだか、寂しいな。

「……!」

 ていうことは……ちょっと待って。
 ゴルさんたち三年生が卒業したら、生徒会のメンバーは私とシルフィ先輩だけになるのでは!?

 いやだよぉ、気まずいよぉ。

「それで、学園が再開した最初の行事は……学園祭だって話」

「キタァアアアアア!!」

「!?」

 おっと、思わずテンションが上がってしまったぜ。
 でも、しょうがないじゃん。やりたいと思っていた行事ができると、決まったんだから。

 学園祭に、他学年試合。他学年試合は年末だって話だから、学園祭ができるのか未定だった。
 でも、こうしてできるって決まったわけだ!

「お祭りだよね! やれるんだ!」

「うん。なんか謎のドラゴン使いが国の復興を手伝ってくれたから思ったよりいろいろ早まったんだって」

「へ、へー」

 謎のドラゴン使い……そんな言い方されてるのか。
 まあ、おかげで学園の再開が早まって、おまけにクロガネを見せびらかすこともできたんだから、結果オーライってやつだよね。

「学園再開一発目の行事かぁ……」

「学園祭ね。こんなときだからこそ、みんなで楽しいことをしようってことなのかしらね」

 国中がめちゃくちゃになった今だからこそ、みんなが元気になるようなことが必要。
 それを思えば、学園祭ってのはうってつけってわけだ。

 いやぁ、今からわくわくが止まらないよ!

「こりゃあ、エランちゃん相当頑張らないとね?」

「私?」

「生徒会の一員なわけだし、ね。期待してるわよ」

 うむむ……期待かぁ。そう言われるとなんだか緊張するな。
 とはいえ、やるからには全力で楽しまないとね!

「あーん!」

 隣でおいしそうにおにぎりを食べているフィルちゃん。
 この子みたいに、学園の生徒じゃなくても来ることが出来る……それが学園祭だ。

 生徒だけじゃない。国のみんなが楽しめる、ビッグイベントにしてみせるさ!

「でも、具体的にはなにをすればいいのかな」

「うーん……ここに二年や三年の先輩がいれば聞けるんだけどねぇ」

 あちゃあ……レーレさんにもう少し詳しく聞いとくんだったかな。
 でも、あの時点では開催できるかわからなかったし……期待ばかりしていても、できなかったら虚しいだけだし。

「とりあえず、クラスごとにやりたいことを決める。まあこれは、それぞれのクラス代表が中心になって決めることだね。
 あとは、場所の確保や設営、当日のスケジュールを決めたり……」

「ふむふむ……あれ、私クラス代表じゃなかったっけ」

「まあ……頑張って」

 これは、私やることいっぱいってこと!?
 まあ、なにをすればいいのかは後々、ゴルさんたちに聞けばいいか。

 とりあえずは、クラスでやりたいこと……出し物はなにがいいかを、決めることか。

「喫茶店の真似事なんかでもいいし、魔導学園らしく魔導を使ったなにか、っていうのもありだね」

「生徒が主体となったイベントだから、よほど倫理から外れてなきゃいいと思うわよ」

 そもそもお祭りが初めてな私に、そんな大役が務まるのか……
 いや、決めたじゃないか。やるからには、やるんだ!

 そして、目いっぱい楽しもう! 学園祭を!
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