史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

661話 魔導士としての素質

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「じゃ、今夜からは私と同じ部屋で寝泊まりするってことね」

「わーい!」

 その日の夜。フィルちゃんは私の部屋にお邪魔して、泊まることになった。
 昨日はレーレさんが泊まっていたけど、今日は……というか今日からはしばらく私とフィルちゃんだけになる。

 あ、あともふもふ。

「お姉ちゃんの部屋だー!」

 私の部屋が嬉しいのか、それとも他の子の部屋でもそうなのか、はしゃいでいる。うんうん、小さい子がはしゃいでいるのは見ているだけで嬉しいもんだ。

 フィルちゃんと契約したもふもふの危険度がわからない以上、できるだけ少人数かつなにか起きても対処できる人物を当てて監視したい。
 だから私が選ばれたわけだ。

 私なら一人でも、なにかあっても押さえ込めると信じてもらって。
 それに……

「いざというときはお願いね、クロガネ」

『うむ』

 いざというときには、クロガネだっている。
 室内じゃクロガネを召喚はできない。でも、クロガネの発する圧倒的な魔力で相手を威圧することならできる。

 それに、それこそいざというときにはクロガネを召喚するって手もある。その場合部屋の中がとんでもないことになってしまうから、そんな事態にならないことを祈るのみだ。

「びゅうぅ」

「ん、どしたんお前」

 ふと、自分よりも低い位置から視線を感じた。
 それは私を見上げているもふもふのもので、赤いつぶらな瞳がじっと私を見ていた。

 その姿だけ見ていると、とても魔物だとは思えない。かわいらしいモンスターだ。

「そういえば、使い魔になったんならフィルちゃんには、もふもふの言葉がわかるんだよね」

 警戒はされていないようなので、私はもふもふの頭を撫でる。
 気持ちよさそうに目を細めるので、嫌がられてはないことに安堵しつつ、私はふと思った。

 私とクロガネのように、使い魔契約を結べば使い魔となったモンスターの言葉は、術者にだけはわかるのだ。
 なので、フィルちゃんにももふもふの言葉はわかるはず。

「フィルちゃんは、この子がなに言ってるかわかる?」

「んー? んー……なんか、ボソボソ聞こえるけど、これってもふもふの声なのかなぁ」

 と、フィルちゃん本人に聞いてみてもきょとんとした様子だ。
 これは、頭の中に聞こえる声をもふもふのものと認識してないのと……まだ、慣れてないのかもしれないな。

 思い返せば私だって、クロガネと契約したばかりの頃はクロガネの言葉はカタコトに聞こえていたわけだし。
 契約して、時間が経てばよりスムーズに聞こえるようになるはずだ。

「……あれ、これって、私がフィルちゃんに使い魔に関していろいろ教えないといけないのかな?」

『今気づいたのか』

 ここで、重大なことに気づいてしまう。
 私がフィルちゃんともふもふの面倒を見ることになってしまったわけだけど、使い魔になったからにはフィルちゃんにいろいろ教えなければいけないのでは?

 術者と使い魔の間でだけ会話ができるのもそう。両者の魔力を合わせることができるのも、視界を共有することができるのも、そして使い魔は召喚魔法陣の中に入れておけることも。

「でもさぁ、フィルちゃんにまず魔導のあれこれ教えないと」

『そもそも、己が魔導士である自覚はないようだからな』

「魔導士の自覚?」

『使い魔契約を結べるということは、少なからず魔導士としての素養があるということだ。本人は意識していないようだが、間違いない』

 クロガネが教えてくれる。フィルちゃんには魔導士としての素質がある。
 素質があるからこそ、使い魔契約ができる……ってことか。

 人にはみんな魔力があるけど、だからって無条件にみんな魔導士になれるわけではない。
 努力と……そして、ある程度の素質も必要になる。

 それが、フィルちゃんにはある。

「そうなんだ。ってことは、もしかしてフィルちゃんって大物?」

『かもしれんな』

 今ベッドの上でポヨンポヨンと跳ねているフィルちゃんだけど、その姿だけ見ていると普通の子供だ。
 だけど……魔導士としての素質、か。

 なら、今のうちからいろいろ教えるのはアリ……というか必要なことだよね。早めに知識を蓄えておけば、後々すごい魔導士になれる可能性が高くなる!

『実際、あの者の中には凄まじい魔力が眠っていると感じる』

「え、そうなの?」

 クロガネの発言に、私は驚いた。
 フィルちゃんの中に凄まじい魔力……私は、なにも感じなかったけどな。

 だけどクロガネがそう言うなら、そうなのかも。私よりもクロガネのほうが、いい眼を持っているだろうし。

『ふふん』

 私の考えていることが伝わったのか、クロガネはどこか自慢げだ。
 こういうとこかわいいよねクロガネ。

 さて、フィルちゃんに魔導士としての素質があるなら……私としても、教えるのはやぶさかじゃない。
 人に教えるなんて、自分でも復習になるっていうしね。

 それに……なんか、師匠に近づけている気がする。

「よし、フィルちゃん! 明日から魔導について勉強しよう!」

「ほぇ?」

 ベッドの上で枕を抱きしめているフィルちゃんに、私は言う。
 これは、学園が再開するまでの間退屈しないで済みそうだ。
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