史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

655話 どうしよっか

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 すでにクロガネと契約している私は、他のモンスターや魔物と契約して使い魔を増やすことはできない。
 使い魔契約の魔力は、クロガネでいっぱいになっているからね。

 他の子を迎え入れるスペースなんて、ありません。

『……契約者よ、我との契約だけでは不満だったか?』

「え? やだなぁもうクロガネったら、そんなわけないじゃない」

 ふと、頭の中にクロガネの声が流れ込んでくる。
 それは、私が他の子を使い魔にできないことへの、疑問……というべきものだった。

 だけど、そのクロガネの疑問は見当外れだ。
 別に私は、クロガネがいるから他の子と契約出来ないことを、不満に思っているわけじゃない。

 むしろ、クロガネ以外の使い魔はいないと思っているくらいだ。

「やだもー、クロガネったら私が他の子と契約しないかやきもち焼いてたの!? かわいいんだからもー!」

『そ、そんなことは、ないぞ』

「……? なんだかわからないけど、クロガネくんと仲がいいようでなによりだ」

 もし魔力の余裕があったとしても、私はきっとクロガネ以外に使い魔にしようとは思わなかっただろうな。
 いっぱいいると楽しそうだけど、それとこれとは話が別だ。

「あ、だったらさ。ナタリアちゃんがこの子を使い魔にしちゃえばいいんじゃない?」

「え……ボクが?」

 そうだと、考え付いたことを言ってみる。
 ナタリアちゃんは、私にこの毛玉魔物と契約したらどうかと聞いてきたけど……ナタリアちゃんこそ、この子と契約してみてはどうだろうか。

 ナタリアちゃんならば問題なく使い魔契約をできるだろうし、この子だってナタリアちゃんに敵意を抱いているわけではない。

「そうそう」

「うーん……確かにそれも、悪くはないかもね」

 腕を組み、考える仕草をしてから……ナタリアちゃんは、毛玉魔物を見た。
 当の毛玉魔物は、自分が話題の中心に居るのがわかっているのかいないのか、きょとんとした表情を浮かべている。

 毛玉魔物を使い魔にすることに、ナタリアちゃんはわりと前向きみたいだ?

「そっかぁ。でも、私から言っといてなんだけど、魔物を使い魔にするのはいいの?」

「まあ、魔物に対して良い思いを持っていないことは確かだけど……かといって、魔物だからって無条件に嫌うようなことはしないよ」

 おぉお、ナタリアちゃん大人だぁ。
 魔物に対する嫌悪感もなさそうだし、こえは本当に使い魔契約しちゃうんじゃあ?

「とはいえ、すぐにはいそうします……とは言えないかな」

「まあ、それもそっか」

「それに、僕だって一応使い魔召喚の授業を楽しみにしていたんだからね。
 どんな子が使い魔になるのか、どんな子を召喚するのかってね」

 楽しみにしていた……か。その気持ち、私にもちょっとわかる。
 使い魔召喚の際は、事前にどんなモンスターが召喚されるかわからない。召喚されてからのお楽しみだ。

 だから、行ってしまえば自分が想像していたのとは違うモンスターが召喚される場合もある。
 事前にどのモンスターと契約を結んでおくか……そのわくわくを味わうのも、使い魔召喚の醍醐味だ。

「うーん、それもそうだよねぇ。じゃあこの子、ホントどうしよっか」

「そんな急いで決めることもないんじゃないかな? ボクだって、いきなりだから驚いただけで……」

「ママー!」

 結局この子をどうするのか……それを考えていると、声が聞こえた。とても明るい声だ。
 タタタ、と駆け足で誰かが近づいてくる。というか、私のことを『ママ』と呼ぶのは一人しかいない。

 正面から、大きく手を振りながら駆け寄ってくる女の子……フィルちゃんの姿があった。

「わ、フィルちゃん」

「わーい、ママー!」

 フィルちゃんは私のお腹辺りに飛び込むようにして、抱き着いてくる。
 ママと呼ばれるのは、今では慣れてしまった自分が怖い。最初はあんなに恥ずかしかったのに。

 私とは違った、白髪黒目の女の子。なんで私のことをママと呼ぶんだか。
 しばらくぎゅっと抱き着かれたあと、ようやくフィルちゃんは離れる。

「わ、わ、ママなに抱えてるの? モンスター?」

「ううん、魔物だよ。おとなしいけど、あんまり近づかないように気を付け……」

「ぴゅう!」

 フィルちゃんが魔物を見つめ、いくらおとなしくても魔物だから危ないからと、私は少し距離を置こうとした……
 そのとき、毛玉魔物は私の腕の中から飛び出したのだ。

「わ、こらっ!?」

 腕の中から飛び出し、向かう先に居るのはフィルちゃんだ。
 きょとんした表情を浮かべているフィルちゃん。まさか、魔物が急にフィルちゃんに襲い掛かるなんて!?

 すっかり油断していた私は、とっさに手を伸ばす。
 魔物の首根っこを掴んだのと、魔物がフィルちゃんの顔面に貼りついたのは同時だった。

「わぷっ……」

「え……?」

「これは……」

「ぴゅう!」

 フィルちゃんの顔に飛びついた魔物は、そのまま……フィルちゃんを襲うとか、そんなんではなく、体をすりすりしていた。
 これは……ただじゃれているだけ、なのか?

 フィルちゃんはかわいい女の子だし、そのかわいいにやられてしまった魔物が体が反応して飛びついた……ってことで、いいのか?

「な、なにー? 前が見えないー」

 と、とりあえず……フィルちゃんに危害が加わることはなくて、よかった。
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