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第九章 対立編

643話 ゆっくり話したい

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 魔物を監視するため、私が見張ることに。
 で、一人だとさすがに心配なので、誰かと一緒がいいなと言ったところ……手を上げたのは、ナタリアちゃんとレーレさんだった。

 それは、先生も予想外だったようだ。

「私は、別に誰でも構わないのだが……いいのか、ブライデント」

「えぇ。もちろんです」

 レーレさんの意思を確認する先生。答えるレーレさんの目に、迷いはない。
 その様子に、少し考えつ仕草の先生は……そっと、ナタリアちゃんに目を向ける。

「ブライデントはこう言っているが、お前たちはどうだ?」

「そうですね……誰も候補がいなければと手を上げましたけど、先輩がそう言っているならボクたちはそれで構いませんよ」

「は、はい」

 ナタリアちゃんは納得した様子。ルリーちゃんはちょっと残念そうだけど……
 これまで、いろんな場面で二人にはお世話になっている。今回も迷惑をかけるのは悪いもんな。

 さて、レーレさんと今晩一緒に過ごすのは、別にいいんだけど……

「ただ、これは私個人的なものだ。ルームメイトに話は通していないし、良ければ私がキミの部屋にお邪魔してもいいか?」

 と、私が考えていたのと同じことをレーレさんが言った。
 もし私が今晩レーレさんの部屋にお世話になるとしたら、彼女と一緒に暮らしているルームメイトにも影響がある。

 いきなり後輩が……しかも魔物を連れてやって来たとなれば、良い顔はいないだろう。

「それははい、もちろん」

「よかった。
 ……それにキミとは、ゆっくり二人で話してみたいとも思っていたしな」

 魔物の世話はとりあえず私が見ることになり、今晩はレーレさんが泊まってくれる。
 私の部屋は、"魔死事件"の一件以来別の場所に移った。生きていたとはいえ、ノマちゃんがあんなことになった部屋でその後も過ごせるはずもないからだ。

 ……レーレさんの話って言うのは、その"魔死事件"について、だろうな。

「さて、お前たちそろそろ部屋に戻れ。詳しいことは、また後日説明する。その時まで、このことは他言無用だ」

 パンパン、と手が叩かれ、先生の大きな声が響き渡る。
 今回のことは女子寮の近くで起きたから、この場にいない女子や男子たちはまだ知らないはずだ。多分。

 学園の敷地内に魔物が入り込んだなんて、話が広まったら余計な混乱を招くだけだ。
 そういう意味でも、この話は他の人にはしない方がいい。

「それじゃあフィールド、任せたぞ。なにかあったら遠慮なく言うといい」

「それを私に言います?」

 先生は、レーレさんさんにも「任せたぞ」と言ってから、去っていく。
 この学園は生徒の自主性を尊重するって言ってたけど、こういうのまで尊重しないでいいのに。

 ともかく、私はこの毛玉魔物の面倒を見ることになったわけで。

「なんだか、大変なことになってしまったね」

 周囲のみんなもそれぞれ帰っていく中で、ナタリアちゃんが言う。
 私の腕の中にいる毛玉魔物は、あれだけのことがあったのに今やすやすやと眠っている。

 なんと神経の太い魔物だろう。

「でも、本当によかったんですか? エランくんもいるとはいえ、魔物と同じ部屋なんて」

「あぁ、問題ない。私にも武道の心得があるし、いざというときはエランちゃんをわたしが守るつもりだ」

 やだ、この先輩かっこいい……!

「エランさんには、クロガネもいますから、並の魔物は反抗する意思すらなくなりそうですけどね」

「クロガネ……?」

 しっかし……こうして見ている分には、害はなさそうだしかわいらしい寝顔なんだけどな。
 魔物ってだけで、魔物は危険視される。それは、私もよくわかっている。

 魔物は、モンスターが魔石を取り込んで凶暴化した姿。
 そう、要は凶暴化したモンスターなのだ。そのため、人を見ただけで襲い掛かる固体だっている。

 それを思えば……この子は、えらくおとなしい。
 怪我をしていたから……とも考えたけど、本当に凶暴な魔物は怪我をしていても関係なく襲ってくる。むしろ、怪我をしていれば気性が荒くなる。
 それが、素直に人間に治療を任せるほどだ。

「二人とも、ありがとうね。私といようとしてくれて。
 でも今晩は、レーレさんと一緒にいるから」

「わかったよ。それにしても、エランくんはいつの間に先輩と仲良くなっているよなぁ」

「ですよね。ご、ゴルドーラ様との決闘の時に使っていた魔導具は、二年の先輩に作ってもらったって言ってましたっけ」

 入学して間もないのに、私はそれなりに先輩とも交流がある。
 レーレさんにピアさん、それにレニア先輩。先輩だからあまり会うことはないのが残念だけど。

 生徒会のみんなは、まあ言うまでもなくって感じだけど。

「それじゃ、そろそろ行くよ。この子も寝ちゃったし」

「あぁ」

「はい」

 私はレーレさんと共に、ナタリアちゃん、ルリーちゃんと別れ、私の部屋へと案内する。
 そういえば、私が誰かの部屋に行くことはよくあったけど、逆はなかった気がする。

 例外はフィルちゃんくらいだろうか。

「あんまり片付いてないんで、そこはごめんなさい」

「いや、急に言い出したのは私の方だ。気にするな」

 私は魔導大会で魔大陸に飛ばされて、ノマちゃんはお城へ。部屋の整理する人誰もいなかったもんなぁ。
 元々汚くしていたわけじゃなけど、戻って来てからまだ整理も完璧じゃないなぁ。

 そんなことを思いながら、私は自分の部屋へと戻ってきた。
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