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第八章 王国帰還編

567話 じゃあお話をしよう

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 ノマちゃんの部屋にて。ある一点を見つめているリーメイ。

「リーメイ、どうかした?」

「! ううん、なんでもないヨ」

 なにか変なことでもあったのかと聞いてみるけど、リーメイは首を振る。
 私はなんとなく、リーメイが見ていた先に視線を向けた。

 えっと……ブリエさん、の後ろの棚に、人形が置いてある。女の子の人形だ。
 ふりふりのドレスを着ていてかわいいけど……あれが、どうかしたのだろうか。

 もしかして、リーメイもああいうかわいいのが欲しいのかな?

「ええと……はじめましてですわ」

「あぁ」

 あっちでは、ノマちゃんが初対面のシルフィ先輩に挨拶をしている。
 ううん、もうちょっと愛想良くしなよ……まあ、誰にでもああらしいから仕方ないのかもしれないけど。

 対してノマちゃんは、そんなもの気にした素振りもなく。

「わたくし、ノマ・エーテンですわ! 以後お見知りおきを!」

 と、通常運転だ。さすがだね。

「……し、シルフィドーラ・ドラミアスだ。生徒会の、書記をしている」

「まあ! フィールドさんと同じ生徒会ですのね! 道理で二人は仲良しさんなわけですわ!」

「……声がでかい」

 すごい、あのシルフィ先輩が圧されている。
 というか、私とシルフィ先輩は仲良いように見えるのか。マジで?

 さて、ノマちゃんの名前を使ってせっかくだからノマちゃんの部屋まで来たわけだけど……
 さっそく問題発生だ。

 なんせ、私たちはこっそりノマちゃんの部屋に来るつもりだった。
 それが、いつの間にかレーレちゃんに案内してもらう形になったわけだ。
 これじゃあこそこそとお話もできない。

「さて。お嬢様、それでは戻りますよ」

「えー」

 どうしようかなと悩んでいたところ、ブリエさんがレーレちゃんに言う。
 対してレーレちゃんは、ぷくっと頬を膨らませてしまっている。

 おっと、二人ともこの部屋から去るなんて。私の願いが通じたのかな?

「そういえば、さっきレーレのこと追いかけてたもんネ」

「……えぇ、お嬢様にはこの後予定がありますので」

「や! ノマと遊ぶ」

「いけません」

 そっか、そういえばさっきはブリエさんがレーレちゃんを追いかけていたんだったな。
 レーレちゃんがこの後の予定があるにも関わらずに逃げ出して……ってことか。

 まだ小さくても、王女様。きっと私には想像できない、忙しいことがたくさんあるんだろう。
 ……そう考えると、ゴルさんたちは学業と王族の仕事を並行していたのか。それとも学業に集中していたのか。

 駄々をこねるレーレちゃんを、ブリエさんが引っ張っていく。
 無情にもぱたんと扉が閉められて、しばし室内は静かになる。

「なんだか嵐のようだったネー」

「そ、そうだね」

 まあ、いいや。これで心置きなく、お話ができる。
 お話といっても、情報のすり合わせみたいなものだ。特に、王族の近くで観察できるノマちゃんの意見は貴重だ。

 改めて、この場にいるのは洗脳されていないメンバーであることを確認。
 ただ、私は一時国から離れていたしリーメイは元々外に住んでいた。

 国の様子が変わったのが一番わかっているのは、ノマちゃんとシルフィ先輩だ。
 その上、ノマちゃんとシルフィ先輩とではそれぞれ見る視点も違う。

「本当にどうかしたのかと、自分の頭を疑いましたのよ。
 コーロラン様のお父上が亡くなったと聞き、悲しむ間もなく新しく国王が即位したと聞かされて」

「その人物はゴルドーラ様どころか、聞いたこともない名前。
 しかも、国中の人間それを疑問に思っていない」

 ここで幸運だったのか、二人とも下手に騒ぎ立てずにいたことだ。
 周りがおかしい……もしかして自分がおかしいのか、なんて思いながらも、冷静にあろうと努めていた。

 もし下手に騒いでいたら、捕まえられていたかもしれない。

「それにしても、意外でしたね」

「なにがだ」

「いや。先輩のことだから、ゴルさんが次の国王じゃないってなったら暴れまわりそうなのに」

「お前は俺をなんだと思っているんだ」

 ゴルさん大好き男。

「わたくしの場合は、もうなにがなんだかで慌てる暇もなかったですわ」

「あぁ……」

 そうだよね。ノマちゃんはレーレちゃんの要望で、ここで働くことになった。
 国王が知らない男になって、その娘のメイドとして働くことになる。こんなの、頭の中がパニックになってしまってもおかしくはない。

 もしくは、いろいろありすぎて逆に冷静になったのかもしれない。

「わたくしがこれまでに接した限りでは、あの国王様にもお嬢様にも、怪しいところはありませんが」

「あの小さい少女になにができるとも思えんが……うーむ」

 二人とも、腕を組んで考えている。
 やっぱり次は国王に会わないとかなぁ。でも、国王はさすがにノマちゃんの友達だからって和える相手じゃないよなぁ。

 どうしたもんかな。

「あの、ちょっと気になったんだけド」

 ここで、リーメイが手を上げた。きょとんとした様子で、首を傾げている。
 なにか気付いたことがあるのかもしれない。

「どうしたの」

「みんなを洗脳しているのは、あのブリエって人だけど、対処はどうすル? 捕まえル?」

「そうだねぇ……
 ……ん?」

 国中の人間を洗脳している黒幕が見つかったとして、その人の処遇をどうするか。
 洗脳を解いてもらうのは大前提として、その先は……と、考えていた時。

 ……リーメイ今、すごいこと言わなかった?
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