557 / 849
第八章 王国帰還編
545話 クラスメイトと距離を取っているみたい
しおりを挟む改めて話を聞くと……
クラスメイトに会いに行ったヨル。クラスメイトが集まる中で、その関心はしかし隣にいたリーメイに向いていった。
フードから覗く顔だけでも美女具合がわかるため、男子たちは見惚れ女の子たちはキャーキャー言っていた。
そしてあれよれよとリーメイとショッピングをしようと、何人かの女の子が街へと繰り出した。
かわいい服を合わせるため、全身を見てあらびっくり。そこにいたのは見たこともない種族でした。
でも、驚きはしてもそれだけ。以降、普通に買い物を楽しんだとのこと。
「……ニンギョって珍しいからと隠してた私の苦労はなんだったんだ」
どうやら、ニンギョはエルフのように人々から嫌われている、というわけではないようだ。
見ての通り、みんな受け入れている。
「それにしても、ヨルってクラスの中でもそういう扱いなんだね」
「それはいったいどういうことだ!?」
私とは違った形とはいえ、ヨルも離れてしまっていたのに……
数日ぶりに帰ってきたヨルより、隣の美女にみんな興味津々だったと。
あわれな……
「あの、私たち勝手なことをしてしまったでしょうか」
「んーん、そんなことないよ。むしろありがとうね。服とか、私が考えなきゃいけないことだったのに」
「やっぱり俺と態度が違う!」
ヨルのクラスメイトの子たちに、悪意はない。むしろ良かれと思ってだ。
そりゃ、身を隠していたその下は貝殻おっぱいなんだもんなぁ……恰好が心配になるどころではない。
……あれ、これ国に帰って来てからすぐに服を買わなかった私のせいか?
「みんな、いい人たちだっタ! 大好キ!」
「はぅう!」
リーメイはこういう性格だ……お礼とか、そういうのは素直に伝えてくれる。
それがまた、彼女たちの保護欲的なものを刺激するのだろう。
とりあえず、お礼はまた後日するとしよう。
……あれ、私リーメイの保護者かな?
「みんな、今度はルリーちゃんもちゃんと連れてくるからね」
「! あ、はい」
ヨルはルリーちゃんと同じクラスだ。なのでこの子たちは、ルリーちゃんのクラスメイトでもある。
この場にいないルリーちゃんを、ちゃんとみんなに会わせてあげたい……そう思ったのだけど。
どうしてか、みんなぎこちない笑顔を浮かべるばかりだった。
「?」
「ルリーは、クラスのみんなと距離を置いているんだ」
もしかしていじめか? いじめなのか?
そう思った私に耳打ちするように、ヨルが話しかけてくる。
近いし耳がこしょばいしぶん殴りたいけど、内容が内容だけに許してあげよう。
どうやら、クラスメイトからルリーちゃんがいじめられているというわけではなく……ルリーちゃん自らが、クラスメイトと距離を取っているみたいだ。
その理由は、考えるまでもない。
自分がダークエルフだから……認識阻害の魔導具を身につけていても、正体がいつバレないとも限らないから。
必要以上に、人と関わり合っていないのだ。
「私たちの前では、そんな素振り……」
見せないのに……と考えたところで、やめる。
私たちと一緒にいるときは、ルリーちゃんの正体を知っている私やナタリアちゃんがいる。
でも、クラスではルリーちゃん一人だ。
そう考えると、必要以上に警戒してしまうのも、仕方ないのかもしれない。
「それで、エランくんは今夜はどうするんだ?」
いろいろ考えていたところに、ナタリアちゃんが声をかけてきた。
その問いかけに、私は『ペチュニア』に泊まることを伝える。
今ナタリアちゃんの部屋はフィルちゃんとの二人だ。
私とノマちゃんがフィルちゃんと過ごしていたことを考えれば、たとえば私が泊まるとなってもなんとかなるだろう。
でも、私は『ペチュニア』に泊まることにした。
ルリーちゃんやラッへを迎えに行ってまた戻ってくるのも手間だし……
「久しぶりに、あっちに泊まりたいし」
「そっか」
学園に入学してから、ずっと寮で過ごしていたから……
久しぶりに、別の場所でっていうのも悪くない。
ま、久しぶりって意味では学園寮でもそうなんだけど。
「それに、いきなり私が泊まるってなっても準備とかできてないでしょ」
「それは気にしないでもいいけど……」
「ま、そういうことで」
学園寮は、空いている部屋も多いのだとは思う。実家などに帰っている人もいるから。
だから、別に誰かの部屋にお邪魔する必要はないのだけどね。
「なら、明日からはちゃんと泊まれるように、準備しておこうかな」
「あはは、期待しちゃおっかな」
明日から、か……ずっと『ペチュニア』に泊まるわけにもいかないし、寮で寝泊まりすることにもなるだろう。
そもそも学園も休校じゃなくなったらみんな戻ってくるんだろうし、外に泊まるのもそう長くはならないだろうし。
明日がどうなるかはわからないけど、ナタリアちゃんの好意を無下にはしまい。
「じゃ、私たちは行くね」
「うん、また明日」
「……また明日」
クラスメイトたちとも、この場にいる子とは話せたし……実に満足だ。
それに、また明日なんて……こんな当たり前みたいな言葉にありがたみを感じるなんて、思わなかったな。
ナタリアちゃん始めみんなの見送りを受けて、私とヨル、リーメイは学園を後にした。
10
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる