史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

536話 空からご登場

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「ノマちゃぁあああああああん!!」

「え……きゃあ!?」

 クロガネに乗り、上空からノマちゃんを発見。
 なので私はクロガネから飛び降りた。ノマちゃんを探すより先に、見つけることができたんだ……私が飛び出した方が、早い。

 この高さから飛び降りるなんて、普通に考えれば自殺行為だ。
 だけど私は、魔導の杖を太ももにつけたホルダーから抜く。
 そして、自分に浮遊の魔法をかける。

 落下の途中から、体は浮遊感に包まれて……落下の勢いを殺した状態で、私はノマちゃんの目の前に降り立つ。

「え、あ、え……えぇ!?」

「ふぅ、よかった会えた……あれ、どうかした?」

「ふ、フィールドさん!? どうして……どこから!?」

 なにやら驚いた様子のノマちゃん。私と空とを、忙しく首を動かしている。
 ……あぁそっか、いきなり空から降ってきたら、びっくりしちゃうよね。

 私は、パンパンと軽くスカートを払って、ノマちゃんを見た。

「あはは、驚かせちゃったね。ごめんごめん」

「ごめん、じゃありませんわよ! 心臓が飛び出るかと思いましたわ!」

 大袈裟に言うノマちゃん。そこまで驚くことじゃないでしょー。

 慌てるノマちゃんをしり目に、私はこほんと咳払い。
 そもそもノマちゃんに会いに来た理由があるのだ。

「時にノマちゃん。ノマちゃんが部屋から自分のものを持って行ったって聞いたんだけど……」

「え? あぁ……その通りですわ。一人では大変でしたが、カルメンタールさんも手伝ってくださいまして」

「そのナタリアちゃんから聞いたんだけどさ。ノマちゃん、見覚えのない指輪持って行かなかった?」

 部屋からノマちゃんが持って行ってしまったという、指輪。
 自分のものだと勘違いしてしまったみたいだけど、あれは私がもらった魔導具だ。

 私の言葉に、ノマちゃんは指先を顎に当てて考えている。
 こんななんでもない仕草でも、かわいく見えてしまうから不思議だ。

「指輪……指輪……」

「ほら、赤い石が嵌めてある石だよ!」

「……あぁ、思い出しましたわ!」

 指輪のヒントを手掛かりに、思い出していたノマちゃんはぱっと表情を明るくする。
 どうやら、思い出してくれたみたいだ。

「あの、きれいな指輪ですわね。あれ、わたくしの私物だという記憶はないんですのよ」

「でも持って行ったんだ!?」

「だってフィールドさん、ああいったアクセサリー類は持っていないと思っていましたので」

「ぬぐ……」

 私はそんなに、女気がないだろうか。
 いやまあ、自分でもわかってることなんだよ。おしゃれには興味がないしさ。

 だからといって、見覚えのないものを持っていくノマちゃんもノマちゃんだよ!

「あの指輪、私のなんだ。だから返してもらいに来たんだ」

「……そのために、わざわざ空から? 浮遊魔法で来たんですの?」

「……まあ、そうだね」

 ノマちゃんの指摘に、私はクロガネに乗らずとも一人で来れたな、と今更ながら気づく。
 でもまあ、自分で飛んでいくのと、クロガネに乗っていくのじゃ速さが全然違うし。

 クロガネには、召喚陣の中に戻ってもらった。運び屋みたいな扱いをしてごめんよ。

「そんなに、大切なものでしたの」

「うん……まあ、そっすね」

「歯切れが悪いですわねぇ」

 大切なもの、それは間違いない。
 実際、国宝と呼ばれる"賢者の石"は二つとない代物だ。これについて、他の人には他言しないように、注意されたっけ。

 元々はレジーを捕まえた褒美でもらったもの。その後、効果を試す機会はあった。
 冒険者の人たちのお手伝いをしたとき。いきなり現れた白い魔獣相手にしたことがあった。
 威力は、凄まじいもので……

 ……そういえば私あの時、魔獣に腕を千切られたんだよな。
 でも気づいたら、千切れたはずの腕が生えてた。手に持っていた魔導の杖も、指に嵌めていた指輪も元に戻っていた。
 あれって結局、なんだったんだろう。

「ノマちゃんは、けん……あの指輪、指に嵌めてみたりした?

「えぇ、一度だけ。なんとも美しい赤く輝く石で、わたくしとしたことがうっとり見惚れてしまいましたわ 」

 両手をほっぺたに当て、顔を赤らめるノマちゃん。
 そっか、嵌めちゃったのか……でも、今ノマちゃんは無事だし、問題はないはずだ。

 あの指輪が魔導具だとわからない限り、指輪を嵌めて魔力を高めようなんて思わないだろう。
 あれが魔導具だと気づかれる前に、早く回収しなければ。

「ノマちゃん、あの指輪を返してもらいたいんだ。大切なものなんだ」

「そうでしたか。……わかりましたわ、フィールドさんにお返ししましょう」

「ほんと!?」

「元々フィールドさんのものなら、むしろ返すのが当然ですわ」

 よかったぁ。渡したくないやだやだってごねられたらどうしようとも思ってたから。
 ノマちゃんもあの指輪をきれいだと思ってるけど、私のものだからちゃんと返してくれるのだ。

 よかったよかった、これで一安心だよ。

「ただ、指輪はわたくしの部屋にありますの。今すぐに返すことは叶いませんわ」

「いいよいいよ。急ぎだけど急いではないからさ。
 ところで……ノマちゃん、その格好で外出するの」

「? えぇ」

 ノマちゃんの今の服は、メイド服だ。それも結構際どい。
 こんなものを来て、人通りの多い所へ行こうというのか!?

「そ、その格好恥ずかしくない!?」

「まっ、わたくしの身体に恥ずかしいところなどありませんわ!」

 私の指摘に、ノマちゃんは腰に手を当てて胸を張る。
 いや、恥ずかしいってそういう意味じゃないんだよ!?
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