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第八章 王国帰還編

488話 長い旅でしたよ

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 魔大陸に飛ばされてしまったことを話した。
 信じてもらえなかった。
 まあ……そうだよな、って自分でも思う。

 元々魔大陸なんてものの存在を知らなかった私とは違い、おじさんは魔大陸の存在を知ってる。存在を知ってるってことは、どんな場所かわかってるってことだ。
 魔物や魔獣が闊歩しているあの場所は……確かに、危険なところだ。

 いくら私が超強の超かわいい魔導士とはいえ、そんなところから平気で帰ってこられるとは思えないのだろう。

「まあー、疑問はあるだろうけどさ。私はこうして無事なんだし、そもそも嘘をつく理由がないじゃん?」

「それは……そうだろうが」

 おじさんは、まだ納得いかないって顔をしている。

「それが嘘だって言うなら、転移させられたってもう少しマシな場所を嘘つくよ」

 魔大陸に飛ばされたことが嘘だと言うのなら、そもそも魔大陸に飛ばされたって嘘をつく理由がない。
 もっと、現実的な距離に飛ばされたって言ったほうが納得してもらえる。

「そうしないってことが、これが本当だって証明にならない?」

「うーん……いや、そうだな。キミはこんな嘘をつくとも思えないし……
 ただ、完全に信用できるかというと……」

 門番やってるだけあって、頭固いなぁ。もっと柔軟に考えようぜ。

「まあ、私の話はいいんだよ。
 魔導大会での騒ぎ……上でいろいろ調べてるって言ってたけど、何人かその場から消えたって話なら聞いたんじゃない?」

 私の話が嘘か本当か、信じてもらうかどうかはまあどうでもいい。
 要は、納得してもらうことだ。

「そういえば……
 その日、同僚が魔導大会の警備に当たっていたらしいんだが。決勝戦に何者かが乱入してきて、パニックになって……さっきも言ったが、会場には結界が張ってあるから乱入者なんてなにかの間違いかと思ったんだが。
 それと、落ち着いたあと確認したら、何人か消えてたって言ってたな」

「そそ。んで、その消えたのが、私私。
 ていうか、なにが起きたかわりと知ってるんじゃん」

「正式に情報が下りてきてないのは本当だし、同僚から聞いたってだけの話だけどね」

 ふぅむ、正式にこうこうこうで、と説明を受けたわけではないようだ。
 でも、あんな規模の大会であんな騒ぎだ。目撃者は多い。

 人から人へ、話は伝わって……多分、国中ほとんどの人が、詳細は知らないまでもなにがあったかは知っているんだろうな。

「じゃあ、なんだ。キミは魔導大会に出場して、決勝まで残り、そこに現れた乱入者に転移の魔法石を使われて、魔大陸まで飛ばされた……
 で、たった今帰ってきたと?」

「そういうこと!」

「……」

 なんでか、おじさんは頭を抱えていた。
 これまでの話を統合した結果、まさにおじさんが言った通りの流れだ。なにも間違いはない。

「……嘘、ってわけじゃ、ないんだよな」

「言ってるでしょ。嘘をつく理由がないって」

「んん。……まあ、魔大陸でどうやって生き延びたのかとか、魔大陸からどうやってこんなにも早く戻ってきたのかとか、聞きたいことはたくさんあるけど。
 それは置いておこう。門番の仕事じゃないし」

 おじさんは、どこか諦めた雰囲気を漂わせていた。
 これ以上の情報は、自分の手には負えないって思ってしまったみたいだ。

 私としても、おじさんと話が盛り上がるのは嫌ではないけどここめずっと足止めを食らっているわけにもいかない。

「それで、私はここを通っていいかな」

「あぁ……そうだね、いいよ」

 若干思考を放棄している気もするけど、なんとか国の中に入る許可は出た。
 おじさんは門を開いていく。大きな門は人の力では開きそうにないけど、扉を開くために操作するところがあるんだろう。

 まあ、一般の人が通る場合は、その横にある小さな門を開けるみたいだけど。
 あの大門は、偉い人が通るときとかだ。

 さて、門が開いたので……あとはルリーちゃんたちが通るのを待つだけだな。

「いやぁ、長い旅だったよホント。長かったぁ」

「ん? あぁ」

 ルリーちゃんたちが門を通るまでの時間稼ぎ。
 おじさんの意識をこっちに向けるために、私はとりあえず話題を膨らませる。

「ずっと、気になってたんだよ。ベルザ王国大丈夫かなーって。
 でも、見た感じ問題はなさそうだね」

「あぁ。現れた魔物、魔獣も、その場にいた人たちで殲滅したらしい。
 いずれも、大会に参加するような猛者だ。いくら魔獣相手でも、倒せない相手じゃない」

 私たちが飛ばされたあと、現れた魔物たち相手にどうなったか心配していたけど……
 やっぱり、無事だったみたいだ。

 一時は、パニックになっただろう。
 でもあの場には、ゴルさんをはじめとしたたくさんの大会参加者がいた。殲滅は容易だろう。

 心配事があるとすれば、観客が巻き込まれないようにすることだ。でも、おじさんの話を聞くにそれも問題なさそうだ。

「!」

 ふと、門の向こうで木の枝がガサガサと揺れているのが見えた。
 風が吹いていないのに、不自然な揺れ……ルリーちゃんたちからの合図だ。

 無事に、門をくぐることができたみたいだ。

「じゃあ、私もそろそろ行くよ」

「そうか。なんにせよ、無事で良かったよ。学園では大騒ぎになっているみたいだから、早く顔を見せて安心させてあげるといい」

「うん、そうする」

 おじさんとの話を終えて、私は門をくぐる。
 この門から、ベルザ王国に入るのは二度目になる……ついに、帰ってきたんだ。
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