史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

487話 あの日の騒ぎ

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「おじさん、私のこと覚えていてくれたんだ」

「そりゃあ、いろいろと印象が強い子だからね。忘れられないよ」

 私のことを覚えていなかったら、どうしようかとも思ったけど……その心配は、なかったようだ。

 ま、本人も言っていたけど私は珍しい黒髪だからなぁ。
 黒髪ってことで変態に絡まれたりすることが多いけど、こういうところでは利点だったりする。

「それじゃ、中に入るね。門開けて」

「あぁ。……いやいや待ちなさい待ちなさい」

 おじさんに笑いかけ、私は門を開いてもらうようにお願いする。
 だけど、それは止められてしまった。

「なんでさ。あ、通行証のこと? あー、今はちょっと持ってないんだけど……」

 初めてこの国に来たとき、通行証がないとかですぐには入れてもらえなかった。
 その後、発行してもらった通行証だけど……それは今、持っていない。

 だって、魔導大会中に魔大陸に飛ばされちゃったんだもん。大会中に通行証なんて持ってなかったし。

「私、魔導学園の生徒だって知ってるよね?」

 でも、通行証ってのはあくまでこの国に入るための許可証みたいなもので……この国の人間だってわかるものなら、通行証はいらないはずだ。
 おじさんとは、学園で会っている。私が魔導学園の生徒だって知っているはずだ。

 なのに、通してくれないって言うのか!

「横暴だよ!」

「待った待った、一人で話をややこしくしないの。
 キミが学園の生徒だってことはわかってる。本来なら顔パスできるくらいだ。ま、どんな相手でも形式上通行証は見せてもらうけどね」

 なんと! 国の人間だとわかっていれば、実質通行証もいらないっていうのか!

「だったら……」

「それよりも、聞かなければいけないことがあるからだ」

 おじさんは、じっと私を見る。
 その視線に、少し居心地が悪くなり、目をそらしてしまう。

「通行証があるなしに関わらず、国を訪れた人物……それに、国を出た人物は、一人一人チェックすることになっている。
 だがキミは、この数日国から出た記録はない」

「……」

「いや、それどころか初めてこの国に来て以来、一度も国の外に出ていないね」

「そ、そんな細かいとこまでぇ?」

「言っておくが、キミは結構有名だからね。門を通れば誰かの記憶には残ってるし、名前だってわかる。でも、それがない。
 いったい、いつ国の外に出たんだ?」

 いつ国の外に出たのか、か……まあ、門番さんとしては、そこんとこ気になるよね。
 学園じゃ、私やルリーちゃんがどこかに転移させられたってわかってるだろうけど。その話が、どこまで伝わっているのかはわからない。

 うーん……ま、ここでごまかしても意味ないので、本当のことを話そう。
 信じてもらえるかはともかくとして。

「実は、魔導大会があった日に……」

「魔導大会……そういえば、その日は会場に突然魔物が現れた、と騒ぎになったな。俺は、会場には行っていないんだが……
 なにか、大きな騒ぎがあったという話は聞いている」

「……大きな騒ぎ?」

「あぁ。詳しいことは、上層部のほうで調べているらしい。俺たちに情報が落ちてくるのは、いつになることか」

 あのときの出来事は、誰でもわかっているわけではないようだ。
 そりゃそうだよな……当事者の私だって、魔大陸に飛ばされた後にエレガたちと会って、ようやく詳細がわかったんだから。

 あの場じゃそりゃ、わかんないよなぁ。襲ってきた側も逃げちゃったし、当事者の私たちは飛ばされて。
 ……あの場にいた一番状況がわかりそうなのはクレアちゃんだけど、彼女には話を聞ける状況ではないだろうし、

「その騒ぎのことで、さ。私、巻き込まれちゃったんだよ」

「巻き込まれ? キミも、魔導大会に出ていたのかい?」

「うん、そうだよ」

「そうなのか! いやぁ実は娘もその大会に出るって話でなぁ。けど、その日に限って外せない仕事が入っちゃって……」

 この人、結構お話するよね……まあ、いいんだけど。
 私に意識を向けてくれれば、それだけルリーちゃんたちが侵入しやすくなるというもの。

「その大会の決勝で、乱入者が現れてね。会場はパニック、私は魔大陸まで飛ばされちゃったってわけ」

「大会に乱入者? 大会は強力な結界で守られてるって話だが、そんなところに乱入者なんて……
 ……今、なんて言った?」

「? 会場がパニックになって……」

「そこじゃない!
 ……ま、魔大陸?」

「うん」

 確認するように、おじさんが私に聞いてくる。
 私はうなずく。嘘ではないのだから。

 するとおじさんは、表情を固くしていた。どうしちゃったんだ?

「ま、魔大陸に……飛ばされた?
 またまたぁ、冗談激しいんだから」

「冗談じゃないよ」

 どうやら、私の説明が冗談だと思われたらしい。
 というか、魔大陸って場所のことは知ってるんだね。

「いや、そんなバカな……! 魔大陸ってのは、魔物や魔獣がうようよいる大陸だって聞くぞ。
 そんなところに飛ばされて、無事でいられるはずが……」

 あぁ、なるほど。魔大陸がどういう場所か知っているからこその、驚きか。
 危険な場所に行ってきて、それで無事なはずがなと。

「だいたい、飛ばされたってどうやって……」

「転移の魔石だよ」

「……そんな貴重なものが? それもそんな長距離を転移できるなんて聞いたことがない。
 本当だとしても、魔大陸からここまでどれだけの距離があるのか。大会の日に本当に飛ばされたのだとして、戻ってくるのがあまりに早すぎる」

 ふむふむ……魔大陸から戻ってくるまでの時間が早すぎる、か。
 確かに、クロガネがいなかったら今もまだ魔大陸すら抜けられてないだろうからなぁ。

 魔大陸からの移動時間、転移魔石の存在、そもそも魔大陸に飛ばされたこと。
 信じてないって顔だ……まあ信じられないよなぁ。

 うーん、魔大陸に行ってきましたって証拠が出せればいいんだけどなぁ。
 もういっそ、クロガネを召喚しちゃおうかなぁ。
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