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第七章 大陸横断編
485話 次なる目的地へ
しおりを挟む「それじゃあ、またね!」
「うん、またね」
出発の直前に、パピリたちとお別れの挨拶を済ませる。
案外あっさりしたものだけど、湿っぽくなるよりはいいかな。
それに、また会いに来ることも出来る。位置さえわかれば、クロガネに乗ってひとっ飛びだろう。
ただ、それまでには私も透明化の魔法をよく覚えておかないと。クロガネであちこち飛び回るわけにもいかないし。
私たちは、それぞれクロガネに乗る。
「では、達者でな。いずれまた、来るといい」
「うん。またね」
「ばいばーい!」
パピリたちは手を振ってくれ、ラッヘやリーメイもまた大きく手を振り返す。
少し名残惜しくもあるけど、魔女さんの言うようにまたいずれ、ここに来よう。
今度来る時は、ラッヘも記憶が戻っていたら……師匠と同じ顔の魔女さんを見て、どんな反応をするだろう。
「……透明化」
魔女さんがクロガネの体に手を当てると、手のひらが淡く輝き出す。
その光が一瞬強くきらめき、私たちの視界を覆ったかと思えば……視界が晴れた先には、別段と変わった様子はなかった。
だけど……
「あれ!? おっきなドラゴン消えちゃった! エランちゃんたちも!」
じっとクロガネの姿を見上げていたパピリが、驚いたように大きな声を出す。キョロキョロと首を動かしていた。
その様子を見るに、私たちを含めたクロガネの姿が見えなくなっているのは、間違いない。
パピリは嘘をつける性格じゃないし、他の村人も同じように驚いている。
私たちからじゃわからないけど、外から見たらちゃんと姿は見えなくなっているのだ。
「へぇ、すごい」
自分じゃ、自分が透明になったのかはわからない。
それに、隣のルリーちゃんたちも私には見える。どうやら、一緒に透明になっている人同士は相手のことが見えるみたいだ。
すっごい魔法だ。改めて、これをやる魔女さんのすごさがわかるよ。
「あ……」
「……」
外から、私たちの姿は見えていない。それはパピリたちの反応を見ていれば、わかる。
そのはずなのに……魔女さんは、じっとこちらを見ていた。
魔法をかけた本人だからか、それともただの勘かはわからないけど……それでも、私とバッチリ、目があっていた。
『では、行くぞ』
クロガネが言い、直後翼をはためかせて飛び上がる。
大きな翼だ。バサバサと動かしただけで、周囲には突風が吹き荒れる。
姿が消えていても、クロガネが動くことで起こる風までは消えはしない。
パピリたちは風を受けて「わーっ!」と、慌ただしく騒いでいた。
飛ばされないように気をつけてもらいたい。
「みんな、またね」
誰にも聞こえないだろうけど、私は小さくつぶやいて……上昇するクロガネに掴まり、だんだんと小さくなっていく魔女さんたちを見ていた。
空へと上がっていくことで、地上にいる魔女さんたちはあっという間に小さくなり……
クロガネが移動を開始すると、魔女さんたちの姿は次第に見えなくなっていった。
「また、会いに来ましょう」
「うん」
魔女さんたちと別れを告げ、私たちは進む。
やっぱりクロガネに乗って移動するのは、徒歩で移動するのとは比べるまでもなく断然速い。
これは楽ちんだ。クロガネにはやっぱり、負担をかけてしまうことになるけど。
『気にするな。この数日、ワレは存分に休ませてもらった。体力なら問題はない』
と、私の心を読み取ったクロガネが答えてくれる。
うぅん、なんと頼もしい言葉だ。なら、遠慮なく任せちゃおっかな。
こうして飛んでいると、吹き抜ける風が気持ちいい。うっかり、飛ばされちゃわないように気をつけないとだけど。
「魔女さんは、こっちの方向だって言ってたけど……」
出発の前、魔女さんにはベルザ王国の方角を占ってもらった。
今飛んでいっている方角へ、まっすぐ。クロガネのスピードなら、そう時間がかからないうちにたどり着けるようだ。
しっかし、こうして飛んでいると大陸って広いよなぁ……
みるみる、国や村が見えては消え見えては消えていく。こんなにたくさん、人が住んでいるところがあるんだ。
その間も、飛んでいるクロガネが見つかることはなかった。
クロガネほどの強大な魔力なら、たとえ姿が消えていても察知する人はいるかもしれない。けれど、魔力を察知した頃にはもうその場から飛び去っている。
「……なんか、今思ったんだけどさ」
「なんですか?」
「これだけ速いスピードで飛んでいけるんだから、クロガネの姿が視認されて敵だと判断されても、攻撃される前にその場から逃げることできたと思うんだよ」
「…………深く考えてはためです」
思ってしまったことに、ルリーちゃんは首を振る。しかも、私たちに気を遣って飛んでいるから本気のスピードはもっと速いんだよね。
これはまあ、深く考えたらだめなやつだもんね。
その後、ルリーちゃんやラッヘ、リーメイとお話をしたり……クロガネの背中で酔ったエレガたちが、上空から垂れ流してしまったり。
いろいろなことがあったけど、空が薄暗くなってきた頃……
「あ……」
なんでかわからないけど、わかった。
私の知っているなにかが、近づいてきているということを。いや、なにかに近づいているんだ。
そして、そのなにかは……
視界の先に、一つの国が映った。上空から見たことなどない……けど、わかる。
あれは……ベルザ王国だ!
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