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第七章 大陸横断編

484話 この村のこと

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 私たちが出発するということで、お別れのパーティーを開いてくれたパピリたち。
 その、次の日。

「いやぁ、昨日は楽しかったぁ」

「そうですね」

 パーティーが終わったあとに寝たから、いつもより遅くなってしまったけど……起きる時間は、いつもより早いくらいだった。
 それでいて、朝はすっきりしている。

 今はみんなでテーブルを囲み、朝ご飯を食べている。

「いよいよ今日発つのか」

「うん。なんか、二日とちょっとしかいなかったのにずいぶんここにいた気がするよ」

 おいしいお野菜をもしゃもしゃ食べながら、この村に来たときのことを思い出す。
 数日といなかったのに、ずいぶん長い間ここにいた気がする。

 それだけこの村での出来事が濃かったってことかな。
 こりゃ、みんなにいい土産話ができ……

「そうだ。この村の存在って、内緒にしたほうがいい?」

「……と、いうと?」

 私は、魔女さんに聞く。

「いやほら。帰ったら、この旅のことをみんなに話そうと思うんだよ」

 というか、絶対聞かれるし。
 大会の途中転移させられて、どこに行ってどうやって帰ってきたのか。

 私が当事者じゃなかったら、絶対聞く。

「魔大陸に行って、クロガネに会って、魔族との戦争に巻き込まれて……この大陸に戻ってきて、この村に立ち寄ったってこと」

「改めて聞くとハードな旅だな。いや、クロガネがいなければそもそもまだ魔大陸から出られていないんじゃないか」

「それは間違いないよ」

 クロガネには感謝しかないよ、ホントに。
 今度おいしいお肉をご馳走してあげよう。契約したモンスターは、術者の魔力を糧にしているから食事はいらないって話だけど……

 おいしいものを食べて、それで嬉しくないはずがないもんね!

「それで、この村……喋るモンスターのことを、他の人に教えてもいいのかなって」

「あぁ。喋るモンスターなんて珍しいから、解剖して調べようなんて言う人が出てくるかもしれませんね」

 私の心配を、ルリーちゃんが口にする。
 まさにその通りなんだけど、なんか言い方が怖いよ!

「それで、この村に危害が及ぶかもしれない、と」

「うん。まあ、魔物からモンスターに戻す方法を教えれば、そのへんの魔物捕まえればいいだけだから、この村に危害は及ばないとは思うけど」

 もちろん、魔女さんがだめと言うならこの村のことは秘密にする。
 別に旅の話だって、全部正確に言わなきゃいけないわけじゃないんだし。

 モンスターを解剖して調べる、なんて話になったら、そっちのほうが嫌だ。

「判断は任せる」

 だけど、魔女さんはあっさり話した。

「任せるって……」

「どのみち、この村には私がいる。誰も手出しはできん。
 私の知らないモンスターがどこでどうなろうが、私の知ったことではないし……それが気になるのは、私よりもキミのほうだろう」

「うぐ」

「キミの友人に、そのようなことを考える者がいるとは思わん。だが、人の口に戸は立てられぬ……どこで誰が聞いているか、わからない。
 キミがモンスターの解剖に積極的でないなら、心の内に秘めておくことを勧める」

 師匠の顔でもっともらしいことを言われると、もっともらしく思ってしまうから不思議だ。
 確かに、これは私の気持ちの問題だもんな。喋るモンスターの秘密を暴くために、自分とは関わりのないモンスターが実験体になる。

 その可能性を考えると……嫌だなぁ。

「そうだね。みんなには、この村のことはうまい具合にごまかして話すよ」

「……そうか」

「そういうことで、ラッヘとリーメイはちゃんとこの村のこと秘密にしなよ!」

「はーい!」

「わかっター!」

 ルリーちゃんは言うまでもないけど、心配なのがこの二人だ。
 まあ、ちゃんと注意しておけば大丈夫だろう。

 そういうわけで、喋るモンスターのことはとりあえず心の中に置いておこう。

「ごちそうさま、おいしかったよ」

「あぁ。それはよかった」

 朝ご飯を食べ終え、少し話をしたあと……いよいよ、出発するために荷物をまとめる。
 まあ、ほとんどの荷物は収納魔法で空間の中に入れてるんだけどね。昨日整理もしたし、バッチリだよ。

 家を出て、広場へ移動する。ここなら、クロガネを召喚しても大丈夫だ。
 私たちの他にここにいるのは、魔女さんとパピリだけ……と思っていたのだけど。

「なんかめっちゃ集まってない?」

 そこには、たくさんの村人がいた。
 昨日のパーティーで見た人たちばかりだ。

 どうして……? 今日出発することはみんな知っているだろうけど、みんなに来てとか言ったわけではないのに。

「みんな、ちゃんとお別れしたいんだって!」

 私の疑問を感じ取ったのか、単に説明したかっただけか。
 パピリが、いつもの元気な声で言う。

 見送りに来てくれたってわけか……まったく。

「さて、いいぞ」

「わかった」

 私が村人たちに手を振っていると、魔女さんの準備が完了する。
 魔力を高めてもらっていたのだ。

 それを確認して、私はクロガネを召喚した。
 広場なので大きさ的には問題ないけど、村人を潰さないようにちょっと離れててもらおう。

「では、透明化の魔法をかけるぞ。
 言っておくが、見えなくなるのは視覚のみだ。気配などは消えないから、例えば本能のみで襲ってくる魔物なんかには攻撃される可能性もある。見えないからといって、気を抜かないように」

「うん、わかったよ」
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