史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第七章 大陸横断編

476話 人の心とかないんか?

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 魔物から元に戻ったモンスター。彼らを集めて、このナカヨシ村を作り上げた魔女さん。
 魔物をモンスターに戻した後、こうして村に招いてお世話しているのは、それだけ魔女さんが面倒見がいいってことだろう。

 ……お世話しているのか?

「魔物の魔力を吸い取って力を付けたせいか、ある一部の場所ではなんでもできるが、それ以外の場所ではただの非力でか弱い魔導士だ」

「か弱い……」

「なにか?」

 か弱いって言うには、さっき大きな魔物をボコボコにしていたよね……
 あれ魔力を感じなかったから、身体強化もなにもしていないよね。素の力だよね。

 まあそこを突っ込むと、なんか怖いので黙っていよう。

「ううん、なんにもないよ。
 それより、魔物の魔力を吸い取るなんて、思いつきもしなかったことだよ」

「……ごまかされた気もするが、まあいい」

 それから魔女さんは、うんと腕を伸ばして伸びをする。
 こうして魔女さんの横顔を見ると、やっぱり師匠なんだよなぁ。同じ顔の経緯は思い出したくないけど。

「魔導は、イメージの力だ。"魔物の魔力を吸い取る"というイメージを持てば、なにもできない話ではない。
 それに思い至らないのは、仕方ない話言えるだろう」

 魔導はイメージの力、か。確かにその通りだよなぁ。
 魔法だって、イメージを具現化して、攻撃や防御に変換する。氷の槍とか、雷の剣とか。

 言ってしまえば、魔導はイメージの力だ。魔導を扱う才能には、イメージの力も大きく関係するって師匠も言ってたっけな。

「まあ私の場合、きっかけは無我夢中……つまり、生き残るための最善策を本能で導き出したということだ。
 あまり頭でごちゃごちゃ考えても、イメージの力は広がらない」

「本能で……」

 そういえば、私も経験があるな。最近だとやっぱり、ゴルさんとの決闘だろうか。
 ゴルさんのたくさんのゴーレムに対抗するために、私もたくさんの分身を生み出したり……

 なにより、分身ありきでの魔術の二重詠唱なんて、その場で一か八かで思いついたものだ。

「まだまだ、魔導については分からないことが多いってことか」

「あぁ。魔導は奥が深い……だからこそ、面白い。
 モンスターが魔石を取り込み、魔石内の魔力によってその体は魔物へと変貌する。ならば体内の魔力をなくせばモンスターに戻る……考えてみれば、当然でもある。
 だが、元に戻ったモンスターが喋っている理由は? モンスターは魔石を好むが、元に戻ったモンスターもそうなのか? 元に戻ったモンスターが再び魔石を取り込めば再び魔物になるのか? ……興味は尽きない」

「あのぉ……もしかして、この村で人体実験的なことは、していないですよね」

「失礼な。命に関わるであろうことはしていないさ」

「ものすごい心配になる発言!」

 なんか、ちょっと怖いけど……さすがに、非人道的なことはしていないと思いたい。
 多分……いや、パピリに対する対応を見ていると、雑な対応だけど大切には思っているはずだよ。

「ははは、なにも心配することはない。人体実験? バカバカしい……相手はモンスターだぞ、人じゃない」

「人の心とかないんか?」

「あっはははは!」

 ここに来て魔女さん大笑い……魔女さんのツボがわからん。
 まあ、この分じゃ解剖とか危険なことはしてなさそうだ。この人からは、そんな危険なにおいはしない。

 世の中には、自分の欲を満たすために容赦なく非人道的なことをする人がいるって聞いたことがあるけど……
 この人は、そんなんじゃない。

「あー、いや、人と話をするのは久しぶりでね。思わず、舞い上がってしまった」

「まあ、人が来るような位置じゃないもんね」

 魔大陸から帰ってきて、それから歩いて……デンシャに乗って。
 その先にあったのが、この場所だ。大陸の端に近いもんな。

 あまり人が来るような場所では……

「そういえば、あのデンシャってなんなんですか? あれに乗ったら、この村の近くについて」

 ここに来た経緯を思い出していると、ルリーちゃんが身を乗り出して魔女さんに聞いた。
 それは、今の今まですっかり忘れていたデンシャの存在。

 あれ、かなり異質で気になっていたのに、しゃべるモンスターが生活している村の出現で記憶の隅に行っちゃってたよ。

「デンシャ……? ……もしかして、あの乗り物のことか?
 さあな、私も知らん。ただ、魔力で動いているわけでもなさそうで、あんなものをどうやって作ったのか。気にはなっていた」

 どうやら、魔女さんも知らないみたいだ。
 それも、デンシャの名前さえも初めて聞いたようだ。

 ってことは、あのデンシャがあった場所の近くにこの村を作った……ってことかな。

「なぜお前たちは、アレの名前を言っている? それとも、呼称か?」

「ええと……」

 デンシャの名前は、私たちが知っていたんじゃなく……エレガが言っていたものだ。
 なので、それをそのまま伝える。彼が、あの乗り物を見てデンシャだと言っていたのだ、と。そして、あいつがいろいろ言っていた聞きなじみのない言葉も。

 それを聞いて、魔女さんはあいつや私と同じ黒い瞳を閉じる。うーんと、考えているようだ。

「ふむ、イセカイ、メガミ、デンシャにデンチュウ……面白いな。
 面白いついでに、こんな話を聞いたことはあるか? この世界とは、異なる世界が存在する、という話を」
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