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第七章 大陸横断編
465話 嫌われている種族
しおりを挟む「ふはぁ、ごちそうさまでした」
とりあえずは食事を終え、私は手を合わせる。
テーブルの上に並べられていた皿は空になっていて、結構食べたなというのがわかる。
料理はおいしかったし、品数もたくさんあった。お腹は満腹だし、満足だよ。
「はぁあ、おいしかったぁ」
「お気に召してくれたのなら、なによりだ」
みんな、満足だと顔に書いてあるようだ。
そんなみんなの反応を見て、魔女さんもまたまんざらでもなさそうだ。
あれを魔女さんが作ったのかは、わからないけど……なんというか、師匠と同じ顔をしているから料理できそうなイメージがないんだよな。
「……なんだか、失礼なことを考えられている気がするが」
「えぇ? 気のせいですよぉ」
ぬぬ、鋭いな。
「え、えーと。魔女さんに聞きたいことが」
「……なんだ?」
「エレガたちは、どこにいるの?」
昨日、温泉から帰ってきてから見かけていないエレガたち。
私たちは料理中に眠ってしまい、魔女さんに部屋に運ばれたわけだけど……エレガたちは、果たしてどうしたんだろう。
別にあいつらのことを気に掛ける必要もないけど、聞きたいこともできたわけだし……
いや、できたというか、今までいっぱいいっぱいでそういうタイミングがなかった、と言うべきか。
だけどここなら、落ち着いて話をすることができると思う。
『そいつらは、ダークエルフに対する恐怖、畏れ……そういった感情を、刻み込まれているのさ』
『頭に、本能に、魂に……ダークエルフを恐れろと、嫌えと、憎めと……!
それが、今を生きる人間に刻み込まれた、性みたいなものだ!』
……あのときの言葉が、ずっと頭の中に残っている。
エレガは、ダークエルフについてのなにかを知っている。それはきっと、ダークエルフ自身も知らないようなこと。
ダークエルフへの、嫌悪感みたいなもの……それが、人間の奥底に刻まれていると。
それはいったい、どういう意味なんだろう。
「えれ……あぁ、あの人間たちか」
「うん」
「あいつらなら、とりあえず適当な部屋に放り込んでおいたが……なんなんだ、あれは」
「まあ、いろいろあって」
とにかく、エレガたちの居場所を教えてもらう。
教えてもらうと言っても、この家の構造はよくわからないので、魔女さんの案内を受けてだ。
ルリーちゃんは、連れて行かないほうがいいだろう。どんな言葉が飛び出すか、わからないし。
ラッヘとリーメイも、ここに残ってもらおう。
「大丈夫なんですか? エランさんだけで、あいつらに会ってくるなんて」
「だけじゃないよ、魔女さんもいるし。それに、覚えてるでしょ。あいつらには、『絶対服従』の魔法がかかってるから、私には逆らえないんだよ」
「なにそれ怖。
……パピリ、三人に村でも案内してやれ」
「わかった! 行こう!」
三人のことはパピリに任せ、私と魔女さんはエレガたちを放り込んだ部屋へと向かうことに。
また妙ないたずらをされないか心配したけど……
「そう睨むなよ。なにもしないさ」
その言葉通り、魔女さんはなにもすることなく、私は目的の部屋にたどり着いた。
部屋の扉に手をかけて、ゆっくりと開く。
部屋の中には、エレガたちがいた。手首と口を縛っていた、拘束が解かれた状態で。
「これは……」
「私が外しておいた。さすがにずっとあのままというのも、忍びないだろう」
なぜ拘束が解けているのか……その疑問に答えるように、魔女さんが口を開いた。
つまり、エレガたちの拘束は魔女さん自ら解いたってことだ。
こいつらには『絶対服従』の魔法をかけてあるから、拘束を解いても派手に動くことはないだろうけど……
それでも、万が一のことがある。なのに、なんで。
「そんな顔をするな。安心しろ、この家の中で妙なことなどできないさ」
「……」
自分がどんな顔をしていたのかわからないけど、とにかく……大丈夫ということだ。
四人を一つの部屋にまとめて、なにもないのだから……その言葉、信じていいんだろうか。
というか、その言い方だといざとなれば私たちも、魔女さんの思いのままにできる、ってことなのでは……
「なんだよ、そんな怖い顔して。そんなに俺たちに合いたかったのか?」
「……減らず口は相変わらずみたいだね」
エレガが、私を見てにやにやと笑っている。
嫌な笑顔だなぁ。殴りたくなる。
いやいや、落ち着け私。そのためにここに来たんじゃないだろう。
「お前たちに、聞きたいことがあってここに来たの」
「聞きたいことぉ?」
「ダークエルフが、この世界で人々に嫌われている、その理由。前に、気になることを言ってたよね。その言葉の意味を、知りたい」
「……」
正直、こんなやつらに頼りたくはないけど……こいつらが、いろんな情報を持っていることは確かだ。
デンチュウのことも、デンシャのことも。そして、ダークエルフのことも。
なんで、とかそういうのは、今はどうでもいい。今後のために、私は聞かなきゃならない。
「『絶対服従』で強制的に言わせてもいいけど……できれば、私はあんまり乱暴なことはしたくないんだよね」
「どの口が。よく言うぜ」
じっと……私と、エレガの視線が、ぶつかりあった。
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