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第七章 大陸横断編

453話 モンスターの暮らす村

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 デンシャに揺られてやって来た先にあったのは、モンスターだらけの村。
 しかもただのモンスターじゃあない。しゃべるモンスターだ。

 モンスターも魔物や魔獣すら、言葉を話すことはない。
 まあ魔獣の中でも"上位種"って呼ばれる奴は、意味のある言葉を話せはするみたいだけど。

 それでも、カタコトな感じで……こんなにも流暢にしゃべるものは、まずいない。
 それを思えば、世界は広いなぁ。

「あの、どこか休めるところとか……」

「わぁーい!」

 なぜか牧場の前に案内され、休憩できるところを聞こうとするが……
 うさぎは、牧場の中に飛び込んでいった。いろんなモンスターがいる中、うさぎはぴょんぴょんと跳ねて楽しそうだ。

 だけど、数秒と経たずに戻って来る。

「あのね! 僕パピリ! よろしくね!」

 なぜか、このタイミングで自己紹介が始まった。

「え、あ、うんよろしく。それで、どこか休めるとこ……」

「お姉ちゃんのお名前は!?」

「……エラン、だよ」

「エランちゃん!」

 なんだこの子!? 全然話をしてくれないよ! いやまあ、自己紹介は大事だけどさ!
 それからうさぎ……改めてパピリは、ルリーちゃんたちに自己紹介していった。

 その際、一人一人に「僕パピリ! よろしくね!」と言っていた。
 ……まあ、自己紹介は大事だもんね。

 そして、エレガたちにも。彼らが縛られていることについては、パピリはノータッチだった。

「こほん。じゃあ、改めて……ねえパピリ。この村で……」

「ナカヨシ村だよ!」

「……ナカヨシ村で、休憩できるところとか、ないかな」

「あるよ!」

 いちいち元気だなぁ……
 まあ、質問には答えてくれる素直な子だから、まだ愛嬌があるけど。

 それからパピリは「こっちだよ!」と言って、私たちを案内する。
 小さなうさぎの後ろをついていく私たちの姿は、なんとも奇妙なものだろう。

「本当に、モンスターばかり」

 周囲を見回すルリーちゃんが、驚いたように言う。
 ルリーちゃんの言うように、周囲はモンスターだらけ。そして、まるで人のように言葉を話し、会話に花を咲かせている。

 しかも、それはモンスター独自の言葉とかではなく、私たちにもわかる言葉だ。
 こうして見ていると、モンスターもなんだかかわいいな。

 それから、あまり広い村ではないからかすぐに目的地についた。パピリが足を止めたから、そこが目的地だとわかった。

「……ここ、どう見てもお店だよね」

 そこは、休憩できるところというより……お店のようだった。屋台と言ったほうが近いかもしれない。
 宿屋……ってのも、ちょっと違う気がする。

 本当に、ここで休憩できるのだろうか。
 それを確認するためパピリを見ると……振り向くパピリと、目があった。

 そして……

「ここのアイス! おいしいんだよ!」

 と、元気な声で言った。

「お、おう……
 えっと、ここって宿屋じゃ……」

「アイス! おいしいんだよ!」

「……」

 めちゃめちゃ勧めてくる、アイスを。
 確かに、甘いものは休憩にはちょうどいい、のか?

 それに、結構人……じゃなくてモンスターが並んでいるので、それなりに人気なんだろう。興味はある。
 ただ、問題が一つ。

「お金ないよな……」

 ベルザ王国から魔大陸まで転移させられてしまったので、手持ちのお金は本当に必要最小限でしかない。
 魔大陸ではお金使う機会はなかったし、気にしていなかったけど。

 そもそも、道中どこかの町や国に寄ったにしろ、お金がないとそこではなにもできないことに、もっと早くに気づくべきだったな。
 目先のアイスさえ、満足に買えないんだもんな。

 どうしたもんかな、と考えていると……

「大丈夫だよ! 旅の人からはお金取らないよ!」

 と、私の心配を吹き飛ばすようなことを言ってくれた。
 なんだその太っ腹なのは……いや、ありがたいけどね。

 お金がいらないのなら、せっかくだからいただこうかな。
 というわけで、私たちは列に並ぶ。流れはスムーズで、あっという間に私たちの番がやってきた。

 パピリ曰く、お金は要らないらしい。なので、遠慮なく頼むとしよう。
 ええと、白いバニラに茶色いチョコに桃色のいちご……なぜか、味と色が丁寧に表示してある。

 というか、言葉だけじゃなくて文字もわかるな。ほとんど、人間のものと一緒らしいな。

「ええと、これとこれと……」

 私は、みんなの意見を聞きながら味を選んでいく。
 アイスは、コーンの上にクリームが乗せられているタイプのようだ。見本がある。

 人数分の注文を、店員さん……二足歩行の猫が聞いて、そして言った。

「アイスが五つ……合計で、1000エホンだ」

「えっ……エホン? もしかしてお金?」

「当たり前だろ」

「……お金取るの?」

「当たり前だろ」

 私は、無言でパピリに振り返る。
 パピリはなぜか大口を開け、衝撃を受けたといった表情を浮かべていた。

「お金取るの!?」

「なんでてめえが驚いたんだよ」

 ついに、エレガからのツッコミが入った。

「ごめんね! お金いるみたい!」

「そう、なんだ……」

「アイス食べられない!」

「そうだね……」

 ごめんと言いつつ、反省しているのかしていないのかよくわからない顔をしている。
 とにかく、お金がなければアイスは買えない。

 なぜかパピリが一番がっかりしていたけど、ラッヘがパピリの頭を撫でていた。

「なんにゃ、お前さんら旅人さんかにゃあ」

「あ、うん、そうだけど……」

 猫の店員さんが、話しかけてきた。

「どうやら、パピリのバカが迷惑かけたみたいだにゃ。仕方にゃあ、サービスしといてやる」

「えっ」

 そう言うと店員さんは、そそくさとアイス作りを始めた。
 これはあれか、迷惑料的なそういうやつか!?
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