史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

438話 歩いて行こう

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 ついに、人の住む大陸にたどり着いた。
 本当ならこのまま、ベルザ王国まで飛んでいってしまいたい。でも、それは難しい。

 クロガネが飛んでいたら、地上から見た人たちを驚かせてしまう。そうすると、最悪攻撃されるなんてことも。
 人に見えないほど上空を飛ぶにしても、酸素の問題とかあるし。

「だいぶ無理させちゃったしね」

 魔大陸を出てからずっと、クロガネに乗せて飛んでもらっている。
 クロガネの体力も魔力も規格外とはいえ、さすがに夜通しの飛行はきついだろう。

 その意味も込めて、クロガネには一旦休んでもらう。

「ありがとね、クロガネ」

『うむ。またなにかあれば、呼ぶといい』

 地上に着地して、私はクロガネを魔法陣の中に戻した。
 これで、ひとまずクロガネは休憩タイム、と。魔法陣の中だと、契約したモンスターは外にいるよりも回復のスピードが、早いらしい。

 今までは私たちが休憩タイムだったんだから、今度は私たちが頑張らないとね。
 さて、人の住む大陸とはいえ、ここは大陸の端。荒野が広がっている。

 私とルリーちゃんとラッへと……リーメイは、果たして歩けるんだろうか。

「ねえ、リーメイは……」

「わァー! ここが人間の国かァー!」

 振り向くと、リーメイは下半身……魚の尾ひれの部分を使って、器用に立っていた。
 瞳を輝かせて、あちこちを見回す。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、移動していた。

 ……歩くってより、跳ねて移動している。

「まだ国じゃないけどね。リーメイ、勝手にどっか行っちゃだめだよ。ラッへもね」

「あーイ!」

「あーい!」

 うん、いい返事。なんだか、子供が二人増えたみたいだ。
 ……元のラッへを知っていると、微笑ましいどころか少し痛々しくすらあるけど。

 こんな広くなにもないところで、早々はぐれないだろうけど、勝手に動き回らないよう注意しないと。
 それから……

「こいつらは、私が引っ張っていくから」

「……」

 私は手に持っていた、魔法のムチを引っ張る。
 ムチの先には、エレガたちの姿。まずエレガを後ろ手に拘束し、そこからまたムチを伸ばし、ジェラを拘束。

 同じように、レジーとビジーも同様に、縛っている。
 さすがに足を縛ったままだと動けないので、足だけは解放してある。口は拘束したままだ。

 魔法で浮かせて移動すればいいだろうって? 目的地までまだまだ先なのに、四人も魔法で浮かせてたら魔力が持たないよ。

「……なんだか、囚人を連行しているみたいですね」

「そう? でも、間違ってはないでしょ」

 私がムチを引っ張れば、ムチの先に繋がれたエレガがバランスを崩す。エレガがバランスを崩せば、エレガに繋がれたジェラも。
 ジェラがバランスを崩せばレジー、レジーが崩せばビジーと、このムチ一つで四人を拘束している。

 なんてお得なんでしょう。
 ただ、四人の反抗的な目が気になる。なにか言いたいのか、口をもごもごしている。

 ふふ。外してやらないぞ。

「じゃ、行こっか」

「でも、どの方角がベルザ王国か、わかるんですか?」

「……」

 うーん、どの方角が、か……
 とりあえず見渡す限りの荒野。人の住む大陸っていっても、端っこだから周囲には誰もいそうにない。

 なら、人に聞くって手も使えないか……

「まあ、とりあえず歩いてみようよ」

「だ、大丈夫でしょうか」

「まあなんとかな……ん?」

 魔大陸とは違うんだ、歩けば人に会えるはず。そしたら、聞いてみればいい。
 そう思っていた私に、精霊さんが語りかけてきた。

 それは、他の人にはきっと、聞こえないもの。
 精霊さんの言葉に耳を傾けて、私は一方向を見た?
 
 まあ、精霊さんの言葉っていうのは私たちが話すようなものとは、違った次元にあるものだけど。

「あっち」

「え?」

「あっちの方角だって、精霊さんが教えてくれた」

 指さした方角……その方に進めと、精霊さんは教えてくれた。
 私が困った時に、精霊さんは力を貸してくれることがある。魔大陸では、精霊さんの苦手な環境だったから、力を発揮することはできなかったけど。

 こうして精霊さんが教えてくれたことに、間違いはない。昔から、そうだった。
 だから私は、その方角へと迷うことなく、足を進めた。

「わー、もしかしてエランって、精霊とお話できるノ!?」

 今のやり取りを見て、精霊さんとの対話を感じ取ったリーメイが、目を輝かせながら聞いてくる。
 私はちょっと鼻が高くなり、ちょっと自慢するように胸を張る。

「まあねっ。精霊さんと私は、友達だから!」

「へェー。精霊とは、契約するのも難しいし、契約できたとしてもその関係を深めるのは、よっぽど難しいって聞くのニ。すごいんだねエランっテ」

「えっへへへへ」

 おだてられて、私の気分は良くなる。
 これまで、精霊さんと契約しているのをすごいと言われたことはあるけど、仲良くしているのがすごいと言われたのは、初めてだ。

 なんだか、嬉しいかも。

「リーメイは、精霊さんとは?」

「ンー。リーは、魔法は得意なんだけど、魔術は使えなイ。精霊と契約、できてないから」

 リーメイは、その場で手のひらに水を生み出して見せる。魔法だ。
 でも、使えるのは魔法だけ。精霊さんと契約できていないので、魔法は使えないのだと、リーメイはしょんぼりしていた。
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