史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第五章 魔導大会編

324話 再びのぶつかり合い

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「せいや!」

「ふん!」

 エランとイザリ、それぞれの得物がぶつかり合う。
 エランは魔力強化した杖を、イザリは魔力強化した剣を。ガギンッ、と激しい音が響いた。

 それだけで、周囲には軽い衝撃波が放たれる。二人を中心に、ぶわっと。
 さらに二人は、攻撃の手をやめない。一度相手を弾き飛ばすようにしてから、再び得物をぶつけ合う。

 分身体がすべて消えたことにより、エランの魔力は万全。しかしそれと打ち合うイザリもまた、エランと互角に打ち合う。
 それだけではない。

「はぁ!」

「うぉっ!」

 大振りからの一撃……かと思わせフェイントを仕掛けたイザリは、エランの背後へと回る。
 首元を狙い横薙ぎに振るわれた剣、しかしそれはエランには届かない。

 首の後ろに、魔力防壁を張っていたからだ。それにより剣の勢いは死に、逆に弾き飛ばされる。
 今度はエランが反転し、吹き飛ぶイザリを追いかける。助走をつけ飛び上がり、真上から魔力を纏わせた杖を突き刺す。

 それを目視した瞬間、イザリは無理やり体勢を動かす。地に足をつけ、蹴り、体を右側へと飛ばした。
 おでこ目掛けて突き落とされた杖は、その場からイザリから消えたため空振りに終わる。

 イザリはそのまま、二、三度地面を転がりつつも体勢を立て直した。

「うんうん、ちゃんと魔力強化、他の部分にも使えてるみたいだね」

 イザリに視線を移しつつ、エランはどこか嬉しそうに話す。
 先ほど、杖と剣の打ち合いの最中背後を取られた。あのとき、イザリは剣以外に、脚を魔力で強化し、背後へ回った。

 以前は、一箇所にしか魔力を纏えなかったのに。しっかりと魔力上達している。

「お前こそ、首の後ろにピンポイントに魔力防壁を張っているとはな」

「首の後ろは生物にとって一番の死角だからね。
 それに、相手の死角に入るのは戦いの上等手段だから」

 背後に回られたことに驚いても、それも込みでしっかり対策をしていたエラン。その入念さに、イザリは軽くため息を漏らす。
 確かに、一対一なら死角を魔力で守ることは上等手段だ。だが、これは乱戦。
 そんな状態で、いたずらに魔力を消費するやり方をするなんて……

 信じられないが、しかしそれがエランという女だ。

「しっかし、さっきよく避けたよね。イケた、と思ったんだけどな」

「目が、ここを狙ってると言ってたぞ」

 とんとん、とイザリは、自分の額を叩く。狙ってくる場所がわかれば、避けるのは難しくはない。
 もっとも、わかっていて避けられるほど簡単な体勢ではなかったが。

 それができるほど、イザリもまた成長しているということだ。

「目かぁ。あんまりそういうの表に出さないようにしてんだけど……逸ってたのかな」

「さあ、な!」

 瞬間、イザリが剣を横薙ぎに振るう。その場からでは、剣を振るおうが届くはずもない……本来ならば。
 しかし、剣から放たれるのは飛ぶ斬撃だ。火を纏い、火の斬撃が放たれた。

 剣に火を纏わせ、それを斬撃として飛ばす……それは、以前の決闘のときにも見せた技だ。
 もちろん、あのときとは魔力の質が違う。

「う、りゃ!」

 迫るそれから、エランは逃げる素振りも見せず……杖を振るい、火の斬撃を断ち切る。
 断ち切れ割れた斬撃が、周囲にいた選手を襲った。

「ちっ、やはり届かんか」

「けど、以前より魔力は上がってるよ」

「そりゃどう、も!」

 再びイザリは、剣を振るう。しかし次に放たれるのは、火を纏った斬撃ではない。
 火ではなく、炎と呼べる規模のもの。炎の波が、放たれた。

 これも、以前決闘で見せたものだ。あのときは、凍らせて対処し、その隙をついてイザリに一撃を叩き込んだ。
 しかし、今回同じことをしても、通用しないだろう。当然、エランの力はわかっている。

 ならば、この炎の波は、エランに対する攻撃というだけではなく……

「うぉああ、なんだぁ!?」

「あちぃ!」

 周囲にいた選手への、牽制。あるいは戦闘不能を狙っているのか。
 これはバトルロイヤルだ。エランの相手をするだけではなく、最終的には一人だけ勝ち残らなければならない。

 もちろん、イザリにとって一番戦いたい相手は、エランであるが。
 それにしても、ただの魔法でこの威力、範囲攻撃。やはりイザリには才能がある。

「なら、私も……」

 あのときは凍らせて対処した……しかし、今回はまた違ったことを思いつく。
 火には火で……そう、同じもので対抗するために、エランは頭の中でイメージを固める。

 イメージするにも、想像するものは目の前にあるのだ。そう難しくはない。

「とりゃあ!」

 エランも杖を振るい……その先から、炎の波を生み出す。いや、波と言うには規模が小さい。
 炎を細い渦状にして、力を集中して放つ。細いといっても、人一人は余裕で呑み込める大きさだ。

 炎の波の一点に、炎の渦をぶつける。熱と熱とがぶつかり合い、周囲は熱帯へと包まれる。
 力を一点に集中していたおかげか、エランの魔法がイザリの魔法を貫いた。

 だが……

「あれ、いない……」

 そのままイザリにも目掛けてぶつける勢いだったのだが、先ほどまで彼が立っていた場所に、イザリはいなかった。
 どこに行ったのだろうと、エランは視線を動かして……

「ぬぅう!?」

 真上から振り下ろされた、火を纏いし剣撃を、なんとか受け止めた。

「よく、気づいたな……!」

「あのときの意趣返しのつもり……!?」

 以前の決闘で、エランは炎の波を凍らせ、その上を飛び越えてイザリにとどめを刺しにいった……今回は、その逆だ。
 イザリは、予め自分の魔法が破られることを知っていたのか。それともそれは関係なしか。魔法を放ち、炎の波の上を飛び越えた。

 そして、上空からエランへと斬り掛かったのだ。

「っ、んぬりゃああ!」

 真上からの重みに潰されそうになるエランだが、足を踏みしめ、力の限り腕を振るう。
 イザリごと、斬撃を弾き返した。

「まだまだ!」

 弾き飛ばされながらも、イザリは足下へ魔力を集中。吹き飛んでいる状態から体を反転させ、足で空を蹴る。
 すると、まるでその場に足場が……見えない足場があるかのように、イザリの体が飛ぶ。

 そのまま、空中を蹴り、エランへと突撃して……

炎牙えんが!!!」

 炎を纏いし斬撃を、繰り出し……エランの体を、ぶった斬った。
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