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第五章 魔導大会編
303話 Aブロック試合開始
しおりを挟む早速、Aブロックの試合が始まる。
会場内はあちこちにモニターが設置されていて、試合の様子は魔石を通して築一映し出されている。
でも私は、直接見たい。直接、試合の熱を感じたいんだ!
「うわぁ、すごい……」
「ですわねぇ」
私たちは、観戦席へ出る。周囲はどの席も見物人でいっぱいで、会場の熱気は予想以上だ。
これじゃあ座れそうにないや。仕方ない、立って見よう。
隣にはノマちゃん、並んで観戦することに。
コーロランも直接見るようで、身を乗り出さんほどだ。妹の戦いぶりが気になって仕方ないという感じかな。
一方、ゴルさんの姿はない。
「ゴルさんたちはいないんだねえ」
「兄上はBブロックだから、準備があるから」
ほほう、ゴルさんはB……つまり次のブロックなのか。
それに、モニターもあるから直接見る必要はないからこの場にいない人も、多いんだな。
それとも、私が初めてだから張り切っているだけで、案外出場者はモニターで観戦しつつ準備に時間を使っているのかもしれない。
「ちなみに、二人は何ブロックなの?」
「僕はC。早速キミと当たらなくてほっとしてるよ」
「わたくしはEブロックですわ。フィールドさん、決勝で会いましょうね!」
二人とも、私とは別のブロックか。うまく分かれたもんだ。
コーロランは、実際に試合をしたときに巨大なゴーレムを召喚していた。あれなら、並大抵の相手なら押し負けることもない。それに、乱戦でこそゴーレムは力を発揮する。
ノマちゃんは、自分の意思とは関係なしにだけど"魔人"となったことで、以前とは段違いの魔力を手に入れたみたいだし……
二人が勝ち残る可能性も、充分にある。
「そうだね」
だから私は、楽しみだと笑った。
学園でなら、訓練とかなんとかで手合わせすることはできるけど、こういった本格的な戦いはなかなかできない。
え、学園に入学した当初みたいに、相手に決闘なりなんなり仕掛ければいいって?
ちっちっち、私は大人になったからね。もう、そんなむやみやたらに勝負を仕掛けることはしないのだよ。
『さあ皆さん、お待たせしました! これより、魔導大会Aブロックの試合を開催いたします!』
「お」
そんなことを考えていると、ふと大きな声が聞こえた。会場中に届くような、大きな男の人の声。
それが誰か、考えるまでもない。会場に入ったときから聞こえていた、なんかいろいろ言っていた人だ。
そう、確か司会の……
『実に改めまして、実況はこの私、イーザミ・アルマンが務めさせていただきます!』
わー、と会場が湧く。
この人が相当人気なのか、それともいよいよ始まる試合に会場のボルテージが上がったのか……
なんとなく、後者な気がする。
考えてみれば当然なんだけど、こういう大会にも司会はいるんだね。
決闘や試合にもいるんだから、まあいるよね。
『今回も、実に多数の出場者が参加してくれました! その数実に五百十三名! Aブロックでは実に百名もの人数がぶつかることになります! 実にわくわくしますねえ!
それはそうとこの私、今年で四十を迎えます! そろそろ伴侶を見つけ、共に大会司会を盛り上げていきたいと実に考えて……』
「うるせーぞお前の身の上話はいらねえよ!」
「さっさと始めろ!」
……なんだろう、あの司会の人ちょっと面白いな。
他のみんなには不要みたいだけど。黙っちゃったよ。
……あれ、出場者って全部で五百十人じゃなかったっけ?
一人飛び入りで参加したのかな……もう受付時間は過ぎていたと思うけど。
まあいいか。
『いやあ、実に会場の熱も実にすばらしいことになっております!
皆さん待てないということで、では参加者の皆さんに出場してもらいましょう!』
その言葉と同時に、舞台には次々に参加者たちが入場してくる。
会場はドームのようになっている。もちろん天井はない。形だけってことだ。
で、その中央に舞台が設置されている。そこに、百人もの人が集まる。
男、女、人間、獣人、亜人……様々な人が、種族が、一同に介している。
『熱気昂る会場内! 舞台には参加者たちが続々入場!
平民、貴族、そして王族! 身分の差も関係なく、ただ己の力のみをぶつけ合う! んーっ、実に胸踊る!』
会場の、というか司会の人のテンションがすごい上がっている。気持ちはわかるけどさ。
司会の人は、観戦席とは別に専用の部屋みたいなものがあるみたいだ。そこに入って、マイクっぽいものを持っている。
さらに、その上には巨大なモニターがある。そこには参加者たちの姿が映し出されている。
『ではでは、観戦中の皆様も、参加者たちも、実に待ちきれないご様子! では参りましょう!
Aブロック、試合ぃー……開始!』
そしてついに、戦いの合図が叫ばれる。あまりに大きな声で言うもんだから、少し耳がキィンとしてしまった。
けれど、参加者たちはそれを気にした様子もない。構えたり、誰かに狙いを定めたり、早くも魔導を放つ準備を進めていたり……
いや、それらよりも早く、動いている人が一人……
「人造人形……!!!」
魔導の杖を振るい、本来ならば口にしなければならないはずの詠唱を破棄……無詠唱で魔術を発動する。
それができるのは、おそらくこの会場の中でも一人だけだろう。次々と、召喚されていくゴーレム。
あっという間に、十を超えるゴーレムが出現し、それらを召喚したコロニアちゃんが小さく笑う。
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