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第五章 魔導大会編
301話 わくわくすっぞ
しおりを挟む魔導大会。毎年開催されるこの大会は、基本的なルールは同じだ。
まず、出場者が集まったところで、それらをAからDブロックへと分ける。仮に二百人出場するなら、四つのブロックに分けるので一つのブロックでは五十人が戦うことになる。ほとんど均等に分けるため、大会開催数時間前まで出場者を募集していても問題はない。
ただ、出場者の数によってはブロックの数が増える場合、減る場合もある。
その中で、総当たりに戦う。で、最後に立っていた一人が勝ち進む。
そうして、各ブロックから勝ち残った者同士が、決勝として戦う。
なるほど、これならば国内外からどれだけ人が集まっても、あまり関係はない。
わりと考えられてるなぁ。それに、総当たりで戦うってのも面白そうだ。
「くぅう、私わくわくしてきたぞ!」
「してきたぞー!」
私とノマちゃん、それにフィルちゃんは部屋を出る。
私たちは、学園でまとめてエントリーしている。なので、会場には出場メンバーで集まって行こうという話になった。
フィルちゃんとは、出場選手が集まる場所に行く前に、クレアちゃんたちと合流して預けておかないとな。
一応、事前に話をしておいたからおとなしく言うことは聞いてくれるだろう。
合流した私たち出場選手は、魔導大会会場へと向かうことになる。
「ん、来たか」
「おはようございまーす、皆さん」
「おはようございますわ」
「ますわ!」
まず、合流地点にはすでに何人かの生徒が集まっていた。ゴルさんを筆頭に、見知った顔もちらほら。
まだ全員集まってはいないけど、一年生はとりあえず全員集まっているな。
一年生で出場するのは、私、ノマちゃん、ナタリアちゃん、ダルマス、コーロラン、コロニアちゃん……あと、ヨルだ。始めに参加募集してから、増えることはなかった。
「やあエラン! 今日はいい大会日和じゃないか!」
「……」
「あははは! ヨル、ママにむしされてる!」
馴れ馴れしく話しかけてくるヨルに無言で返すと、それを見てキャッキャとフィルちゃんが笑う。
結構辛辣だな、この子。まあ私が言えたものでもないけど。
私が自分で広めたわけじゃないけど、フィルちゃんのことは結構学園中に広まっているみたいだ。
なんでも、噂の狂犬新入生が子連れで授業に参加している……と、そんな話が流れている。
狂犬なんて失礼しちゃうよね。
「こほん。一年生は、結局七人ですのね」
「七人もいるなんて、今年は豊作だなぁ。期待してるよ一年生」
タメリア先輩は楽しそうだなぁ。ゴルさんたちが言うには、魔導大会に出場したことのある一年生は、これまでにいないという。
だけど、今年はそれが一気に七人だ。すごいよね。
二年生、三年生の数は、一年生より多いみたいだ。
「学園の生徒だけでもこれだけいるなら……」
「大会に出場する人数は、かなりのものじゃろうな。名のある魔導士、冒険者、さらには一般の者もエントリー可能。
国の外からも、人は集まる。大規模なものになることは間違いない」
メメメリ先輩の言うように、学園だけでこの人数ならば、いろんな所からの出場者はもっと多いはずだ。
それが、各ブロックごとに総当たり……わくわくと、少し緊張してきたよ。
その後、出場する生徒は全員集合したので、会場まで移動を開始する。
数えてみたけど、一年生は七人……二年生はレニアさんやシルフィ先輩含めて十一人、三年生はゴルさん、タメリア先輩、メメメリ先輩、リリアーナ先輩含めて二十八人。
計四十六人か……軽い遠足みたいだ。
何度も確認するけど、これに先生たちを含めて……他にも参加者がいっぱいいるなら、すごい人数になりそうだ。
「あ、エランちゃーん!」
「ん、クレアちゃんたちだ」
会場付近につくと、そこでクレアちゃんたちと合流。後ろにはルリーちゃんとサリアちゃんもいる。
周辺には、たくさんの人がいる。このほとんどが、大会の参加者だったり観戦者だったりするんだろう。
というか、参加者の数も相当だけど、観戦者もそれ以上だ。中の会場の様子は、映像録画用の魔石で外にもモニターされるみたいなので、ここにいる全員が会場に入るわけじゃないだろうけど。
それでも、かなりの人数がいる。
「うわぁ、強そうな人もいるなぁ。いろんなとこから魔力をびしびしと感じるよ」
「エランくんの魔力が一番飛びぬけているとは思うけどね」
そう笑うナタリアちゃんだけど、魔導学園では私と同じ【成績上位者】なわけだし、ナタリアちゃんだってこの中じゃ魔力は多い方だと思う。
あとは……ヨルも。
「おぉお、魔法撃ち合う大会! これぞファンタジーものの醍醐味って感じだ!」
……ヨルは向こうで、なんか変なテンションになって叫んでいるし。
あーやだやだ。知り合いだと思われたくないわね。
私だってわくわくはしているけど、ちゃんと自制しているのだ。
「では、参加者はあちらの入り口からだ。行くぞ」
「あ、うん。
じゃあクレアちゃん、ルリーちゃん。フィルちゃんをお願いね」
「はいはーい」
「お、お任せください!」
軽い様子で受け入れるクレアちゃんと、気合の入ったルリーちゃん。
クレアちゃんは軽すぎる気もするけど、ルリーちゃんはもう少し気を抜いたらいいのにな。
さて、フィルちゃんを預け、私たちは大会へ、だ。
「じゃあフィルちゃん、みんなの言うことよく聞いて、いい子にしてるんだよ」
「うん! ママもがんばってね!」
「……あんまり外でママママ言わないでほしいかなぁ」
ほら、近くにいた人がこっち見てるよ。違うよ、私ママ違うんだよ。
ともかく、フィルちゃんはおとなしく待ってくれている。なので安心して、クレアちゃんたちに預けておける。
これで心置きなく……大会に、望めるってもんだね!
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