史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
上 下
293 / 852
第四章 魔動乱編

288話 いずれその時が来るとしても

しおりを挟む


 パーリャ・テリオット……魔導学園で起こった"魔死事件"の被害者、レオ・ブライデント先輩の恋人だった人。
 どうやらノマちゃんと同じクラスであるその子は、ノマちゃんに対して複雑な感情を抱いているらしい。

 恋人が、そして事件の被害者が残らず亡くなっている事件で、ノマちゃんだけが生き残った。そのことに対して、思うところがあるのだろう。正直、気持ちは分からないでもない。
 ただ、それはノマちゃんは悪くないことだし、妙な言いがかりをつけてくるようなら、私だって黙ってはいなかったけど。

「テリオットさん、ですか……話しかけても、かわされてしまうのですよね。無視されている、というわけではないのですが」

 そう、ノマちゃんから答えが返ってきた。学園に帰ってきてから、同室のノマちゃんに早速聞いてみたわけだ。
 その表情から、困ったなぁというものを感じるけど……それは、変なことをされて困っているじゃなく、話ができなくて、という意味に思えた。

 さっき、コーロランから話を聞いて、気になっていたことだ。

「ですが、どうしていきなりそんなことを?」

「えぇと……なにか、変なことされてないかなって。ほら、パーリャちゃんの彼氏さんって……」

「……ブライデント様、ですわね。とても、残念ですわ」

 私の言いたいことを、なんとなく察してくれたのか、ノマちゃんが目を伏せる。
 同じ被害に遭い、でも片方は死んで片方は生きている……それに、思うところはあるんだろう。

 ただ、彼氏さんの名前を出したノマちゃんの様子に、ちょっと違和感。

「もしかして……知り合い?」

 基本的に、ノマちゃんは同年代の相手のことはさん付けで呼ぶ。それか、学年が上の人は先輩と。
 だから、彼氏さんのこともさん付けで呼ぶのかと思ったけど……様付けなんて、王族相手くらいだろう。

 なのに、今ノマちゃんは様、と言った。

「実は、彼とは何度か、貴族のパーティーで話をしたことがありまして……」

「貴族のパーティー……」

 ……そういえば、ブライデントって名前にゴルさんたちが反応していたな。確か、有名な貴族だって。
 そして、ノマちゃんのエーテン家も結構偉い貴族らしい。

 その貴族のパーティーか……ふぅむ、ノマちゃんくらいの年なら、そういうのも普通なのかな。
 私も、一応フィールドって名乗らせてもらってるし、パーティーとかって出れるのかな。

「じゃあ、パーリャちゃんとも知り合いなの?」

「いえ、ブライデント様は彼女と、学園に入ってからお付き合いを始めたようで。パーティー等で見かけたことはありません。
 わたくしたちは、学園在籍中はパーティーには出席できませんので」

 なるほど……ただ、逆にパーリャちゃんはノマちゃんのことを事前に知っていた可能性もあるよね。
 知り合いのようで、知り合いではない関係。ちょっと複雑だ。

「……わざわざその話をしてきたということは、まさかテリオットさんになにかあったんですの?」

「あ、そうじゃなくて……」

 話の流れから、パーリャちゃんになにかあったと思われてしまった。まあパーリャちゃん関係のことでノマちゃんが変なことされてないか気になっていたけど。
 本題は、そこじゃあない。

 この先は……私も、覚悟を決めないといけない。ノマちゃんに伝える、残酷な言葉を。

「実は……今日、王城に呼び出された理由なんだけど……」

 そして私は、話す。今日呼び出されたその理由……"魔人"についての話を。
 ノマちゃんの体に、今起こっている……いや、この先起こるかもしれないことを。

 ノマちゃんの体内には、人と魔の血が流れている。そしてその血は、いずれノマちゃんの体を変えてしまう……かもしれない。
 白い魔獣。あれこそが、今ノマちゃんの身に起こっている現象と同じ目に遭った人が陥った、成れの果ての姿。ノマちゃんはまだ、白い魔獣を見たことはないっけか。

 私が話している間、ノマちゃんは黙って聞いてくれていた。そんなノマちゃんを直視できなかったのは、私の弱さだ。

「……そういうわけで、その……ノマ、ちゃんは……」

「そのうち、魔獣になってしまうかもしれない、ということですわね?」

 私の説明を、正しく理解してくれている。その頭の良さが、今はただつらい。
 果たしてノマちゃんは、なにを思っているのだろう。私がもし、いつか魔獣になってしまうかも……と言われたら。

 ……わかんないや。

「……そうですか」

「で、でも、それもマーチさんの推測だし……か、確定ってわけじゃ……!」

「あのマーチヌルサー・リベリアンが言うなら、それはもう確定情報と同じですわ」

 あらゆる開発研究の分野で有名だというマーチさん、彼女をノマちゃんは尊敬しているようだ。
 そんな彼女の見解ならば、それはもうほとんど正解なのだろうと。そう、わかっている。

 わかった上で、ノマちゃんは落ち着いている……ように見える。

「ノマちゃん、体に異変とかあったら、すぐに言ってね!」

「えぇ。でも、検査をして異常なしだったんだから、しばらくは大丈夫だと思いますわよ」

 それはノマちゃんが、私を気遣って言ってくれているのか、それとも本当に気にしていないのか……いや、気にしていないなんてことはないだろう。
 それでも、ノマちゃんがこんなに明るい顔をしているんだから……私が、暗い顔をしているわけにいかない!

 体に異変があったら、すぐに言ってほしい。でも、ノマちゃんは多分我慢しちゃうタイプだ。
 だから、私がしっかりと見ておく! 同じ部屋だからここでは私が、学園では同じクラスのコーロランや、ノマちゃんと仲の良い子に頼んでみよう!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

処理中です...