上 下
265 / 781
第四章 魔動乱編

260話 生徒会副顧問

しおりを挟む


 先生が結婚している問題に少しばかりの衝撃を受けていた私。先生には少しばかり失礼な話だろうけど。
 まあ、見た分には美人だもんな。男勝りな性格も、一つの個性だし。好きな人は好きそう。

「どうしたフィールド、私をじっと見て」

「あ、いや別に」

 つい先生のことをガン見してしまっていた。いけないいけない。
 先生が結婚していることもそうだけど、元は平民だってこともちょっと驚きだな。なんていうか、気品に溢れているから。

 元は平民でも、魔導学園で教師の立場にいる……本当に実力主義なんだろうなぁこの学園は。

「だからまあ、昔接点があった縁で、こいつを推薦したんだよ。といっても、いきなり教師にはなれないから、教育実習って形になってな」

「ホントホント、ヒルヤセンセには感謝感謝だよ」

「だからセンセやめろ。その言い方バカにしてるだろ」

 先生が、ウーラスト先生を教師に推薦した……のか。
 そのときのことは見てないからわからないけど、きっとすんなりとはいかなかったんだろう。だって、言い方はよくないけど、エルフだから。

 でも、今はちゃんと、受け入れられている。それに……
 先生とウーラスト先生、人間とエルフ……二人が仲良くしているのを見ると、なんか、いいなって思う。

 師匠を除けば、私はエルフを見たのはウーラスト先生が初めてだ。他はダークエルフばかりだったし、この国にはそもそもエルフがいない。
 だから……みんなから敬遠されているエルフと、人間が仲良くしているのは、なんか……いい!

「エルフは、まあいろいろ言われているが……少なくとも、私はウーラストという個人を知っている。こいつの知識や技術は、お前たちのためになると思った。
 それに、お前たちにも実際にエルフに触れてもらえば、いろいろな見方も変わると思ってな」

 先生は、エルフに関して悪い印象を抱いていない。ううん、ウーラスト先生という個人を知っているから、エルフは世間で言われるほど悪い人ばかりじゃないというのを知っている。
 それを、みんなにも知ってほしい。それが先生の願いか。

 口は悪いときもあるけど、やっぱりいい人だ。
 その後、言霊とまではいかなくても、より魔力を身近に感じるための授業を、ウーラスト先生から受けた。はじめはふざけた喋り方だと思っていたけど、慣れてみるとそうでもない。

「言霊は、魔術に近い。自分の魔力じゃなく、大気の魔力を感じて、言葉に魔力を乗せるんだ。まずは、あらゆるところに流れている魔力を感じることから始めてみて。
 魔術を使える子は、触りはもう捉えてる。そうでない子も、きっかけを作れるように頑張ろう」

 魔力はあらゆるところに流れている。大気中にある魔力は、室外だろうと室内だろうと、空気のように当たり前にそこにある。
 それを感じることが、まずは一歩目だという。

 私はもう魔術を使えるから、魔力の流れを掴むコツはわかっている。けれど、言葉に魔力を乗せるってのが……どうにもなぁ。わからん。

「ま、今日明日できるもんでもない。気長にやっていこう。それが授業なんだから」

 先生の話だと、ウーラスト先生は今日は一日このクラスにいるけど、明日からは他のクラス、学年にも行くらしい。
 エルフの教員というのは貴重だもんな。生徒の力を伸ばす学園な以上、誰にも公平に学べる機会がないとね。

 こうして、エルフ新教師着任という、激動の一日が終わっていく……

「やぁやぁ、さっきぶり」

「……なんでいるんですか」

 放課後、私は生徒会室にいた。学園が再開したばかりで、いろいろと話すことやることがあるのだという。
 クレアちゃんたちとのお茶会、ダルマスとの訓練、やりたいことはあったけど、最優先はこっちだから仕方ない。

 で、生徒会室の扉を開けると……すでに教室の中に、生徒会会長であるゴルさんを始め、タメリア先輩、メメメリ先輩、リリアーナ先輩、そしてシルフィ先輩と、いつのメンバーがいるんだけど……
 その中に、なぜかウーラスト先生がいた。

「来たかエラン」

「えぇっとぉ……これはいったい? なんでウーラスト先生が?」

「どもども、今日からこの生徒会の副顧問になったウーラストでぇす」

「……」

 なぜか、ウーラスト先生がいた。
 見間違いではないな、うん。

「生徒会には今まで副顧問がいなかったからな。それを、ウーラスト先生が引き受けてくれたわけだ」

「え、まるで生徒会に顧問はいたみたいな言い方ですね」

「……めったに顔を出さないが、いる」

 ここに来てまたも衝撃の事実。生徒会に顧問の先生がいたのだという事実。
 考えてみれば、そりゃそうなんだけど……私、会ったことないよ。

 ゴルさん曰く、めったに顔を出さない先生らしい。魔導学園では生徒の自主性を重んじるから、問題ないってことなのかな。
 いやでも、それはそれでどうなのよ。私生徒会の一員よ?

 で、この度新しく着任したウーラスト先生が、生徒会の副顧問を受け入れた、と。なんか教育実習生ってそこまでやるもんなのかとは思うけど、別にいっか。

「いやぁ、エルフの教師なんて新鮮だなぁ。なんか楽しくなりそう」

 と、タメリア先輩はこの中で一番ウキウキしている。エルフに対して、思うところはないってことか。
 メメメリ先輩も受け入れているようだし、リリアーナ先輩もゴルさんが受け入れているなら文句はなさそう。

 問題は……

「……」

 いつも無表情で、なに考えているのかよくわからないシルフィ先輩が、なに考えているのか、だな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...