255 / 847
第四章 魔動乱編
250話 生徒vs教員の決闘勃発!?
しおりを挟む「……へぇ、勝負」
私の言葉に、エルフの男は動揺するでもなく、うっすらと笑っていた。まるで、この展開を予想していたかのように。
それは、どっちでもいい。この学園では、勝負……決闘を挑む方法がある。私は実際に、その方法でゴルさんに決闘を挑んだわけだし。
抜いた杖を、決闘を挑む相手に向けて……杖の切っ先を、三回光らせる。それだけだ。
まずは、一回。続いて……
「そこまでだ、フィールド」
だけど、そこにさっきよりも大きな先生の声が、響いた。
はっとした私は、意識を先生に向ける。
「な、なんですか」
「お前……まさかこいつに、決闘を挑むつもりか?」
「そうですが」
私のやろうとしたことを察した先生は、私が決闘申請を行うより前に止めた。
その上で、頭をかき、はぁとため息を漏らした。
「それはやめておけ」
「なんでですか。決闘は、自由にできるんですよね」
私は杖はエルフの男に向けたまま、先生に問う。
決闘は、生徒同士では自由に行える。負けた時のリスクが高いから、あまり行われないらしいけど……それが、ルールだ。
だったら、私が誰に挑んでも、問題ないはず。
「それはそうだが……それはあくまでも、生徒間における決闘の話だ。
生徒と教員の決闘は禁止されている。知らないのか?」
「……そうなの?」
生徒同士の決闘は問題ない。でも、生徒と教師の決闘は、禁止されている。初耳だ。
確認のために、みんなに聞いてみると……みんな、首だけ縦に動かしている。体は拘束されていても首は動かせるのか、それとも拘束の力が緩んだのか。
生徒と教師の決闘は禁止……これは、周知の事実って、ことか……
ていうか……
「ぷっ、くふふ……人のことをチャラいとか品位とか言っておいて、誰もが知ってるようなことも知らない無知とは……くふふ」
「……っ」
こ、こいつが、教師だっていうのか……!? 今私を笑っている、この男が!?
そりゃ、転校生というには年食ってると思ったけど……だからって!
「こ、こんなのが、教師だっていうの!?」
「おいおいおいおい、人を指してこんなのはないだろう。
品性を疑うぜ、妹弟子」
「うっさい! 誰が妹だ!」
くっそー、バカにして! エルフってこんなのばっかなの!?
師匠はちょっと抜けてるとこがあって、かわいいものだって思ってたけど……この人は、ただただ意地悪だ!
禁止とか知るか! 絶対にぶっ飛ばしてやる!
「教員……というのは、少し違うか。いわゆる、教育実習生ってやつだな」
「きょーいくじっしゅーせい?」
「教員になるために受ける実習みたいなものだな。なので正確にはまだ教員ではない、が……
それでも、決闘というのはなぁ」
よくはわからないけど、私が生徒で、このエルフが教員に似たようなもので、決まりで決闘が出来ないと言うのなら……残念ながら、それに従うしかない。
でも、それじゃあ、この胸のむかむかが、なんかもう……あれなんだけど!
そんな私の気持ちを察してくれたのかは、わからないけど……
「だから、まあ……決闘でなく、練習試合、のような形であれば、こちらとしても止める理由はない」
「練習……試合」
「あぁ。まあ、言い方はいろいろあるが、生徒が教員に一対一の摸擬戦を挑むことは、まあ珍しくはない」
決闘ではなく、試合……か。
いや、なんでもいいよ! この男をぶっ飛ばせるのなら!
「ただ、あくまでも生徒の個性を伸ばす、あるいは苦手を克服するために直接仕合うというだけのものだ。決闘のように、本気の勝負というわけには……」
「じゃあ、その練習試合申し込むよ!」
「聞けよ!」
とりあえず、戦っちゃダメなわけではないのなら、やってやるさ!
師匠の弟子を名乗る不届き者、チャラついた態度、みんなへの強制的な魔法、それに……エルフ!
師匠以外のエルフと戦える機会なんて、滅多にない!
「……ま、オレオレは構わないけど? キミの噂は聞いてたから、興味はあったんだよねー」
「私の、噂。やだ、そんな私がいくら超絶美少女だからって、初対面で口説くっていうのはちょっと……」
「あっはは、聞いてた以上に面白くて頭のおかしい子だ。
いろいろ聞いてるよ、入学時にとんでもない魔力を測定したとか、魔獣を素手で殴り殺したとか、目があっただけで誰彼決闘を挑む狂犬だとか」
「ひどい噂!」
私の知らないうちに、私に対する噂がとんでもないことになっているらしい。これは近いうちに、なんとかしなければいけないだろう。
ただ、それは後回しだ。今は、このエルフとの勝負!
この人が、師匠の弟子かどうかはともかく……みんなを拘束している魔法、魔力、そのどれもかなりのものだ。
それに、エルフ族は魔力の扱いに長けた種族だ。且つ大人……その知識や経験は、いっぱい持っているはず。
「……二人がそれでいいなら、止める理由はない。
というかウーラスト、そろそろ生徒の拘束を解け」
「はいはい、というかヒルヤセンセならオレオレの魔法も解除できたでしょ」
「悪意があれば、すぐにでもしていたさ」
ピリピリとしていた魔力の気配が、消える。直後、あちこちから声が聞こえた。
体と声の自由が効くようになり、みんなほっとした表情を浮かべている。
ただ、それを見て……
「はいはーいはいはーい、またうるさくしたら、また黙らせちゃうよ?」
パンパンッと手を叩くエルフの男の言葉で、みんな一斉に静まり返ったけど。
こいつ、みんなの心にトラウマみたいなもの植え付けやがったな……
「先生!」
「……はぁ、わかってるよ。まったく、学園再開早々、なんでこんなことに……」
頭を抱える先生には悪いと思ってるけど、私は早く、あのエルフの男と勝負がしたい!
11
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる