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第四章 魔動乱編
247話 学園再開!
しおりを挟むその日のうちに、学園から連絡があった。それは要点を纏めると、事件の犯人は捕まったので明日から学園を再開する、というものだった。
学園へ戻った先生が、理事長とかに話を通したのだろう。"魔死事件"の犯人が捕まったと連絡がいったのは、ついさっきだろうに、ずいぶんと早いな。
休校の間も、学園が再開したときのことを考えていろいろ準備していたんだろうな。なんにしても、みんなと会えるのは楽しみだ。
休校中は学食もしまってたし、購買でタイミングよく会うなんてできなかったからなー。
「ワクワクして眠れないかも!」
「子供じゃないんだから」
その夜ぐっすり眠った私は、翌朝ワクワク気分で起き上がった。こんなにもワクワクしているのは、学園に入学した日以来かもしれない。
登校してまずは、全生徒集まって校長先生の話があるみたいだ。
学園が再開することになった経緯とかだろう。考えてみれば、一般にはまだ事件の犯人が捕まったと知れてはいないのだから、なんで突然学園が再開したんだ、と思う子もいるだろう。
もしかしたら、学園が再開したことで犯人が捕まったんじゃないか、と考える子もいるかもしれないけど。
そんなこんなで、ルリーちゃんとナタリアちゃんと登校する。いつもは同室のノマちゃんと登校していたから、彼女以外の子と登校するのはとても新鮮だ。
「エランちゃーん!」
「クレアちゃーん!」
集合場所まで向かって歩いていると、学園内で見たことのある顔がちらほら。その中で、聞き慣れた声がした。
声の方向に首を向けると、その先にはこちらに手を振りながら走ってくる、クレアちゃんの姿。
たまらず私も駆け出して、どちらともなく抱き合った。
「なんだか久しぶりな気がする!」
思えば、クレアちゃんとはこの国に来てからの付き合いだ。この国に来て、紹介してもらった宿屋に行って……そこで、クレアちゃんと出会った。
以降、ひとつ屋根の下にいたり、一緒に魔導学園に入学したり、教室まで一緒だったり。毎日一緒だった。
ひとしきりクレアちゃんの体温を堪能した後、お互いに離れる。すると、私たちの姿を唖然とした様子で見ている女の子がいた。
クレアちゃんの後ろにいるので、私とは目が合う形になる。
「えっと、その子は?」
「あぁ。紹介するわね、私のルームメイトの……」
「……サリア・テンラン、です」
クレアちゃんが紹介してくれたのは、クレアちゃんのルームメイトだというサリアちゃん。
そういえば、クレアちゃんのルームメイトとは会う機会がなかったな。部屋分けのとき、名前とチラッと顔を見たくらいかも?
同じ組だったらもっと違ったんだろうけど、クレアちゃんがなにも言わないってことは別の組にいるんだろう。
その証拠に見覚えのない顔だしね。
私のことをじーっと見つめてくる……なんていうか、無表情なタイプの子だな。
「サリアちゃん。私は……」
「エラン・フィールドでしょ、知ってる。レアから話はいつも聞いてるから」
「ちょ、ちょっとサリア!」
私が自己紹介をするより前に、サリアちゃんは私の名前を言う。私ってもしかして有名人、かと思いきや、どうやらクレアちゃんが話していたようだ。
なんだか嬉しいなぁ……と思う一方で。ちょっと引っかかる言葉があった。
「……レア?」
「あ、えっと……この子、人の名前の頭文字を飛ばして読んで、それを愛称にしてるのよ」
「つまり、クレアだからレア……ってことか。
じゃあ私は、エランだから……」
「ラン、だね」
……なんというか、特徴的な愛称の付け方だな。まあ愛称なんて、それこそ人それぞれだから別にいいんだけど。
普通に名前呼んでくれたほうがややこしくなくていいんだけどな。
短めの灰色の髪……というか頭から、角が生えている。ちょうど頭のてっぺんに一本、赤い角がちょこんと生えている。
……なんだこれ。
「ええと……サリアちゃんは、獣人、なの?」
「多分」
「多分て……」
頭から角が生えているその特徴は、純粋な人間ではないだろう。かといって、亜人にしては角以外の見た目は人間だ。
なので、可能性としては獣人なんだろうけど……
多分と答えるサリアちゃんは、なにを考えているのか半目のまま私を見ていた。
「いやー、頭の角引っ込めれたら便利なんだけどさ。さすがにそううまくはいかなくて。
寝てる時とか、頭ぶつけたらそれに突き刺さっちゃって大変なんだよね」
「……こういう子なの」
うーん……マイペースな子、なのかな。クレアちゃんは呆れたように話しているし、これがいつもの光景なのだろう。
結局、サリアちゃんは自分のことさえもよくはわかっていないらしい。物心ついたときから角が生えていたが、周囲にはいろんな種族の人がいたし、まあいっか、と思っていたようだ。
私なら、頭の角は気になるけどなぁ。
「まー、私の話は置いといてさ。早いとこ集合場所に行こうよ」
「あ、うん、そうだね」
本当ならもう少し話したいところだけど、そういうわけにもいかない。周りの生徒もちゃんと集合場所の建物に向かっているし、私たちも行かないと。
歩きながら軽く雑談をしつつ、私たちは建物へと足を踏み入れていく。
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