史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

231話 思いつかなかった発想

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「髪と……目の色……?」

 レジーの言葉、その内容を私は、あまり理解できない。意味がわからないから。
 『その髪と目の色』とレジーは言った。それは、レジーと同じ、この黒髪黒目のことだ。この世界では珍しいとされる色をした、髪と目だ。

 私自身、あんまり気にしたことはない。ただ、師匠すらも見たことがないという特徴だから、私って珍しいんだな、と思うことならあった。
 でも、それくらいだ。その後、私以外に黒髪黒目の人物と会うことがあったし、実際はそんなに珍しくもないんじゃ、と思ったりもした。

 でも、今のレジーの言葉は……

「まるで……黒髪黒目の人間は、すごい量の魔力を持ってる、みたいな言い方だね」

「……」

 先ほどの言葉を思い返せば、要はこういうことだろう。
 私は言うまでもないし、ヨルも私と同じく魔導具を壊すほどの魔力量を持っている。あの変態と共通点があるのは嫌だけど、黒髪黒目であるというのは共通している。

 それって……とってもすごい魔力を持っている人が、この髪と目の色になるってこと? それとも……

「なにを、ごちゃごちゃと!」

「おぉっと」

 だけど、そんなおしゃべりの間いつまでもじっとしているはずもなく。ルランは、レジーへと殴りかかる。
 レジーはそれを、やはり華麗にかわす。

「ちょっとちょっとー、今大事な話をしてたじゃん。エランちゃんがさぁ」

「知ったことか。俺には関係ない。それとも、お前と同じ特徴のあいつも仲間だから、一緒に捕まえてくれと言ってるのか」

「んなこと言ってないよー。
 てか、武器もなくしてまだやるんだ」

「しれたこと!」

 ルランは接近戦に持ち込み、拳や蹴りを繰り出していく。素早い動きは、全身への魔力強化によるものだ。
 そして……それを避けるレジーも、身体強化をしている。凄まじい魔力は、彼女の動きを数段、引き上げているようだ。

 自身への身体強化は、自分の持つ魔力量によって強度などが大幅に変化する。魔力量が多ければ、それだけ身体強化に魔力を当てられる。
 ダークエルフであるルランは、見た感じ魔力量は多い。普通に考えれば、身体強化したルランから逃げられる人間はいない。

 ……普通に考えれば、ね。

「っ、当たらん……!」

「もしかしてそれが全力? いやぁ拳が止まって見えるんですけど?」

 繰り出されるラッシュを、レジーは余裕の表情で避けていく。本当に、ルランの拳が止まっているんじゃというくらいに、正確に避けていく。
 ただ、ルランだってやられっぱなしではない。

「おっ?」

 その動きが、どんどんと、さらに速くなっていくのだ。目で追うのも、やっとなくらいに。
 これにはさすがのレジーも、眉を寄せる。

 ルランの、身に纏う魔力量が上がっている……んだけど。それは、ルラン自身の魔力じゃないように思える。
 さっき感じた……ルランが、魔術を使ったときに感じた、膨大な魔力と同じ気配。

「もしかして……魔術……?」

 そこで、思い当たるのが自分以外の魔力……つまり魔術によるものだ。魔法ではなく魔術で、身体強化をしている。
 いや、魔法と魔術を重ね合わせて、身体強化をしている、というべきか。

 その証拠に、ルランの動きは際限なく上がっていき、次第にレジーの動きを捉え始める。
 当然だ。いくらすごい魔力を持っているとはいえ、一個人が持っている魔力には限界がある。それに、自分の魔力すべてを身体強化に注ぎ込むわけにもいかない。

 対して魔術……大気中の魔力を利用するのであれば、それこそ際限はない。いくらでも、身体強化に魔力を使うことができる。
 ……とはいえ。

「魔術で身体強化するなんて、私でも思いついたことないや」

 自分の魔力で身体強化することはあるし、それを極めるために訓練してきた。でも、大気中の魔力で身体強化しようなんて発想は、私にはなかった。
 やるなら、なんかどでかい攻撃を放ってやれ、程度にしか思ってなかった。

 その効果はてきめんだ。押されていくレジーの頬に、ついにルランの拳が突き刺さった。

「ぐっ……!」

「刺してもすぐ回復するなら、それを上回る速度で……!」

 顔に、腹に、ルランの拳のラッシュがぶつけられる。ダメージを蓄積しているレジーは、抵抗することすらできない。
 とどめだというように、いっそうに魔力の載った拳が、顔面に叩きつけられた。

「っ……!」

 倒れ……はしないものの、よろけるレジーは、目の前にいるルランを睨みつけ……
 その直後、私を見た。

「……っ?」

 なんだろう、この言いようのない、違和感のようなものは。なんか、ちょっと鳥肌が立ったような……
 いやいや、気のせいだ、気のせい。

 今は、そんなことよりも……

「えいっ」

 隙だらけのレジー。彼女を捕らえるべく、私は魔力の縄をイメージし、創造する。手にしたそれを、狙いを定めて縄を放る。
 私がぶん投げただけじゃあまり遠くへは飛ばないけど、魔力でイメージをつけることで動きを操作することができる。

 縄の先は、レジーの手首へと絡み……そのまま、両手首を縛り付けるようにして、絡まっていく。これで、もう抵抗はできないはず。
 ルランが気をそらしてくれたおかげで、うまい具合に捕まえることができた!

「よし!」

 なんか私、ほとんどなにもしてないけど、レジーを捕まえることに成功! うん、これでよし!
 あっけないかもしれないけど、これでよし!

 あとは、こいつからいろいろ聞き出さないと……って……

「ちょっ、ルラン! そいつもう動けないから……!」

「ふん!」

 手首を縛られ動けないレジーに、ルランのもう一発が入った。
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