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第四章 魔動乱編
220話 あいつらの仲間
しおりを挟むダークエルフじゃない……目の前の人物は、確かにそう言った。
褐色の肌、銀色の髪、尖った耳……それら、特徴的な外見をしながら、自分はダークエルフじゃないと、言ったのだ。
あなたは、ダークエルフじゃない……そう言ったのは私なんだけど、実際に認められると、ちょっと変な気持ちだ。
「なにが、目的?」
「おいおい、警戒するなよ。アタシの目的は、アンタだ。そのために、こーんなクソみたいな種族の格好までしたんだ」
「……私?」
ダークエルフを騙る何者かに、私の警戒心は上がる。それを察して、その人物は両手を上げ、抵抗の意思はないことを示してきた。
その体勢のまま、言う……目的は、私だと。
どういうことだろう。なんで、ダークエルフだと偽っている人が、その理由が私にあると言うのか。
しかも……偽っていおいて、ダークエルフのことを、悪く言うなんて。
「そう。さっきも言ったように、ダークエルフなんかと仲良くしてるもの好きがいるって聞いてな……興味が湧いた。
だから、この格好をして町中を歩いてりゃ、会えるかと思ってたんだがな」
「はぁ……」
私に会いたいから、ダークエルフの格好をした……つまりはこういうことか。いや、なんか考えが飛躍しすぎてない?
それに、私とランノーンが会ったのは、ダークエルフ関係なしに偶然だし……
というか、当たり前のように話しているけど……
「それ、魔法で姿を変えてるってことだよね」
「あぁ、まあ正確にはちょっと違う。自分でも思ったはずだ、私に対する周囲の反応の差を」
「!」
そう、おかしいと思った。周囲の人は、ランノーンをダークエルフだと認識した。でも、今はそうではない。普通の人間みたいに、こっちを見向きもしない。
けど、私はずっとダークエルフに見えている。少なくとも外見は。
これって、私と周囲の人たちの間に、認識の差があるってことだよね。
「まあ、そういう魔導具がある……って言やぁ、どうやってなんて疑問は解消されるだろう?」
「……そうだね」
ランノーン似対して、私と周囲の人たちとの間で認識の差がある……でもそれは、深く考える必要のないことだ。
魔導具というものには、認識をずらすフードとか、魔力を吸い取る剣とか、いろんなものがある。
人によって認識を変える、といった魔導具だって、あるのだろう。それを使えば、今みたいな状況ができあがると。
「それで、私に会いたいって……私、そんな有名人?」
この人がダークエルフのふりをしている理由は、私に会いたかったからだという。ならば、私に会いたいその理由は、なんだ?
私は、少し冗談交じりに、聞いてみた。
「まあ、そうだな……さっき言ったように、アンタはダークエルフと仲良くしている人間だ。
つまり、アンタを追えば、そのダークエルフを殺せる……ってことだろ」
「……は?」
でも返ってきたのは、予想もしていなかった言葉だった。
私が目的じゃなく……私の近くにいる、ダークエルフが目的……
つまり、こいつの狙いは……ルリーちゃん!?
「……おっと、すんげー鬼気。ダークエルフを殺せるって話しただけでそれとか……そのダークエルフ、よっぽど大事らしいな。
確かルリー、だったな」
「お前……ルリーちゃんになにするつもりだ!」
しまった……この人に、ルリーちゃんの名前を教えてしまった!
いや、どっちみち私にダークエルフの友達がいるって情報は掴んでいたみたいだから、バレるのも時間の問題だったか……
この人、ルリーちゃんを……ダークエルフを、探している。わざわざこんな人の多いところで、あんなたくさんの人の前でダークエルフに化けて、足まで怪我をして。
そうまでして、どうしてダークエルフを……なんの、目的で?
「だって、許せねぇじゃん……あんときの、生き残りがいたとかさ」
「……は?」
「けどさ、嬉しくもあるんだ。生き残った奴がいたってことは、またダークエルフをヤれる楽しさを味わえるってことだろ?
そんなの……たまんないじゃん」
彼女が、ダークエルフを狙う理由……それを聞いて、私は意味がわからなくなった。
生き残り……生き残りって、なんだよ。生き残りって、あれだよね……生き残った人って意味、だよね。
ダークエルフの、生き残り……それを聞いて私は、一つ思い出したことがある。ルリーちゃんの過去……ダークエルフの森を燃やし、ダークエルフたちを殺していった人間。
あの事件の、生き残りがルリーちゃんだ。ルランや、リーサもいるけど。
その件だとしたら、この人が生き残りを探している……って、ことは……
「あなた、もしかしてエレガやジェラって人間の仲間!?」
ダークエルフを、殺し……ルリーちゃんから仲間と故郷を奪った人間。二人組の男女で、エレガとジェラと呼ばれていた。
この人も、あの件に関わっているのなら、あの二人の仲間である可能性が高い。
そう、聞いた瞬間……ランノーンは、大きく口を開いた。
「えぇ? 何でアイツらのこと知ってんの? マジウケるんだけど。
……それとも、アンタ実はお仲間とか? 同族のにおいがしたし。その髪の色に瞳の色……」
「ふざけないで!」
確定だ。ランノーンは、エレガとジェラの仲間。ルリーちゃんの話や、私の夢には出てこなかったけど、あのときあの場にいた可能性が高い。
こいつも、ルリーちゃんたちの敵の一人……!
それと、とても心外なことを言われた。私が、ルリーちゃんの故郷を滅ぼすような奴らの仲間だって? 冗談も休み休み言ってほしい。
確かに、私とあいつらには似た特徴がある。この世界では珍しいとされる、黒髪黒目。
けど、それだけの理由で、お仲間だなんてごめんだ。
「……あんたも、もしかして……」
「ふふ、そうさ……」
笑うランノーンの、きれいな、銀色の髪……それは、色が変化していく。
銀色から、黒色へと……
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ーーーーー
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