史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

177話 お疲れモードのエランちゃん

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「うぅー……」

「エランちゃん……大丈夫?」

 教室にて、机に突っ伏している私を心配してくれる、優しい声。その正体は、クレアちゃんだ。
 あぁ、このぼーっとした頭にクレアちゃんの優しい声が染み渡るよ。

 心配いらない、と伝えるため、私は手を上げた。

「だーいじょうぶ、ちょーっと寝不足なだけだから」

「寝不足? なにかあったの?」

 お、すごい心配してくれるのは、ありがたいんだけど……さすがに言えないよなぁ。
 ルリ―ちゃんから聞いた過去話の続きっぽいものを夢で見て、それが気になって眠れなかった、なんて。ダークエルフに関することなんだもん。

 なので、適当に誤魔化すことにする。

「あー……ノマちゃんと、話し込んじゃって」

「もー、しっかり体調管理しないとダメじゃない」

 巻き込んでしまった、すまんノマちゃん!
 クレアちゃんは、実家の手伝いでよく人前に出ていたみたいだから、人の顔色をうかがうのが得意なんだろう。私が机に突っ伏しているのは、表情を見られないようにするという理由もある。
 表情から、悩み事を勘付かれてはたまらないもんな。

 その時、私の端末が震える。これは、メッセージだっけ……が来たってお知らせかな。
 私は、机に突っ伏した体勢のまま、端末を取り出してメッセージを確認する。

『昨日の稽古のせいか?』

 と、そこには短い文。差出人は、ダルマス……
 首を動かすと、こちらを見ているダルマスと目があった。すぐにそらされてしまったけど。

 ははぁ、私の体調が悪い理由が、自分が稽古に付き合わせてしまったからだと思っちゃってるんだな。
 かわいいとこあるじゃないか。

「『関係ない、ちょっと寝つきが悪かっただけ』……と」

「あ、エランちゃん誰かとメッセしてる。だれだれー?」

「誰でもないよー」

 私からもメッセージを返すと、ダルマスが反応したようだ。端末を見つめ、メッセージを確認しているようだ。
 なんか、こうして人目に隠れてメッセージのやり取りをしているの……ちょっとドキドキするかも。工作員みたい。

『なら……今日も稽古は頼めるか?』

『いいけど……いい加減稽古ってやめない? 最初はいい気分だったけど、なんか気恥ずかしくなってきた。稽古って、まるで私が先生みたい。私、先生って柄でもないし』

『いい気分だったのか……俺は、そのつもりだったんだが。そう言うなら、じゃあ、鍛錬とかか?』

『そうそう』

 そんなやり取りを、何回か繰り返す。そうしているうちに、先生が来て、ホームルームが始まって……いつも通りの日常が、始まる。
 授業風景も、授業を受けるみんなも、いつも通り……

「ンー……今日も、美しイ……」

 ……こいつも、いつも通り。
 入学からしばらく経つと、クラスメイトの人間性もだいたいわかってくるものだ。この筋肉男は、初日から印象的だったけど。

 私にとって今のところ、授業内容は師匠に習ったのと似たようなものだ。
 なので、真面目に聞く必要もない……けど、何事も反復作業は必要だ。こうして授業を受けることで、自分の中で見直しができる。

 ……はぁ、なにか起こってほしい、わけじゃないけど……平和だなぁ。
 "魔死事件"はあれ以来起こっていないし、冒険者についてってダンジョン探索、ってのもない。
 そういえば、あのダンジョンは謎が多かったけど、なにかわかったのだろうか。ま、わかっても私は冒険者じゃないし、わざわざなにがあったって連絡は来ないだろうけどさ。

 何事も、平和が一番……だよな。これまでのことを思えば。
 少なくとも、ルリーちゃんの話を聞いた後じゃ、こういう退屈こそ貴重なんだって、わかる。

「おーいフィールド、聞いてるか?」

「聞いてますよー」

 こうして、平和に授業を受けて……もう少ししたらある魔導大会に向けて練習して。お友達とおしゃべりしたり、買い物をしたり。こういう日常を、私は望んでいた。
 師匠のところにいるときから……魔導学園の存在を知ってから、憧れていた。

 ……師匠、今どこでなにを、してるんだろうなぁ。

「では今回は、使い魔の存在について説明する」

「!」

 っ、と……今、気になる単語が出てきたぞ。
 使い魔、って言ったな。私が魔導学園に憧れていた理由の一つが、これだ。


『いつか、その時が来たら学ぶことになるよ』


 師匠も、使い魔を使役していた。それを見て、私も使い魔召喚をしてみたい、とお願いしたのだが、師匠からは教えてもらえなかった。
 その言葉は、師匠からではなくこの魔導学園で学べという意味だったのだと、ゴルさんとの決闘の最中に気づいた。

 その、使い魔召喚! それについての、説明!
 私の意識は、すっかりとそちらに向いていた。

「使い魔というのは、モンスターを召喚し使役したもののことを言う。諸君らにもわかりやすく言うと……
 ……フィールドとベルザ兄の決闘を思い出せ」

 使い魔の説明をする中で、先生の視線が私に向く。いや、先生だけじゃない。クラスのみんなの視線が、一斉に私を見た。
 な、なんだよぅ……

 まあ、理由はわかっている。
 ベルザ……弟ではなく、兄の方。このベルザ王国第一王子のゴルさんと、私は決闘した。
 その最中、ゴルさんは使い魔を召喚したのだ。

「ベルザ兄が召喚したのが、使い魔だ。使い魔召喚は、自分と親和性の近いモンスターが召喚され、契約を行うことで両者の関係が確立される。
 召喚者の実力によって召喚されるモンスターも変わるが……まあ、ベルザ兄のサラマンドラのような使い魔は、期待しないことだ」

 アレは特別だ……と、先生は苦笑い。その様子を見るに、先生たちの中でもサラマンドラほどの使い魔を使役している人はいないのかもしれない。
 ゴルさんは、下級魔導士相当って評判だもんなぁ。だからこそのサラマンドラ召喚か、サラマンドラが召喚されたからこその評価か。

 ま、どっちでもいいか。強い人であることに変わりはないんだし。

「召喚者の技量といった実力、内に秘めたポテンシャル、それに性格も反映されると言われている」

「性格が反映、ですか?」

「一生を過ごすことになるんだ、性格の不一致なんてことになったら目も当てられないだろう」

 なるほどね……性格も、使い魔召喚に反映されると。
 派手な性格の人には派手な使い魔が、おとなしい性格の人にはおとなしい使い魔が……ってことかな。
 ゴルさんは……どうなんだろうあれ。

 性格かぁ……まあ、私みたいなおしとやかな女の子には、そりゃあ華麗な使い魔が召喚されるんでしょうよ!

「先生! 使い魔召喚はいつですか!」

「まだ先だ」

 はいっ、と手を上げ質問したが、ばっさりと返された。てっきり、今日明日にはやるんだと思っていただけに、残念だ。
 今日は……というか、これからしばらくは使い魔についての説明も、授業で行っていくらしい。

 うぅ……早く召喚したいよぅ!
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