史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

174話 いざ稽古の日々へ!

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 さて、ダルマスが参加するつもりだという魔導大会。
 これは、年に一度開かれる、国をあげての大会だ。国外からも人が訪れるので、まさに国の一大イベント、といった感じだ。
 と、ナタリアちゃんが言っていた。

 話を聞いた当初は、私も出場する気満々だった。最近のゴタゴタで、ちょーっとだけ忘れちゃってたけど。
 魔導大会という名前だけど、なにも魔導士じゃないと出場できない、というわけではないらしい。前回の大会では、魔導具のみで勝ち上がった人もいるとか。

 そんな魔導大会だけど、ナタリアちゃんが言うには最近物騒な事件が続いているから、大会の開催自体が確実とは言えない、とのことだったけど。
 あれ以来、"魔死事件"は起こっていない。この分なら、大丈夫だろう。

「私としては、嬉しいんだけどね」

 師匠を超える魔導士を目指している私にとっては、いろんな強い人たちと戦える機会があるのは、どんとこいってやつだ。
 大会に出場する制限とかはないので、学生でも出場することは出来る。

 ただ、いろんな人が出場するだけあって、気後れしてしまう人は多いようだ。

「おい、なにをぶつぶつ言っているんだ」

「いんや、気にしないで」

 ふと声をかけられて、我に返る。私を呼び戻したのは、ダルマスだ。
 今は、放課後。そしてここは、数ある訓練場のうちの一つ。さすが魔導学園だけあって、魔導を鍛えるための施設はたくさんある。

 ただし、今使っているこの場所は許可制のもの。そのため、ここには私とダルマスの二人だけでしかいない。

「でも、稽古って言うならこんな狭いとこじゃなくて、広いとこ使えばいいのに」

「……それだと、みんなにバレてしまうだろう」

 ということらしい。
 ちなみに、最初は『私に』稽古つけられることがみんなにバレると恥ずかしいから、という理由だと思っていたんだけど、どうやらダルマスは稽古自体を、あまり公にしたくないらしい。

 みんなに内緒で、強くなりたいってことかな。男の子だなぁ。

「それに……お前だって、困るだろう。
 その……男女で、二人きりで、などと」

「……なにが?」

「……いや、いい」

 よくわからないけど、まあ私としては場所にこだわるつもりはない。魔導の訓練に、場所の広さは関係ないのだから。
 もちろん、魔法でなく魔術を訓練したい、という理由なら、広い場所が必要になるけど。

 ダルマスは、まだ魔術は使えないようだ。
 まあ、魔導の筋はいいから、これからだとは思う。それに、魔導士は必ずしも魔術を扱えないといけないわけではない……
 その人の戦い方、さらに性格なんかも含めて、なにに向いていて向いていないかを判断する。

 ダルマスには、魔術を極めるよりも……

「キミは、魔導剣士ってやつなんだよね」

「まだこいつを使いこなせてはいないから、そう呼んでいいかはわからないけどな」

 私は、ダルマスの腰に刺さっている剣に視線を移した。そこには、私との決闘で使ったものと同じ剣があった。
 ダルマスは『魔導剣士』。簡単に言えば魔導を扱う剣士だが、それをこなすのは簡単なことじゃない。

 ダルマスの剣さばきは、見事なものだった。小さなころから、たくさん練習してきたんだろう。
 それに、私との決闘に負けてから、度々練習してる姿を見かけていた。敗北を機に、腐ることなくむしろ敗北を糧としてさらなる高みを目指している。

 向上心のある人物だとわかったから、私はダルマスの頼みを受け入れたんだ。

「ともかく、キミは魔導剣士としての腕を伸ばしていくべきだと思うよ。
 あの頃よりは、魔導も上達したみたいだけど……正直、まだまだだね」

「ぅ……言うじゃないか。いや、まあ俺から頼んだ立場だ、気になったことはどんどん言ってくれ」

 ふむ、素直だなぁ。初めて会った時のままなら、即座に噛みついてきただろう。
 私への敗北でなにか変わったのか、それとも私の意見を素直に取り入れてでも勝たなきゃいけないのか。

「ねえ、なんでそこまで、大会で成績を残すことにこだわるの? 優勝賞品狙い?」

 魔導大会には、優勝すれば記念になんか貰えるらしい。それは毎年変わっているので今年はなにかわからないけど、豪華であることに違いはないだろう。
 もしかしたら、お金かもしれない。私もお金、ほしい。

 まあ本来の目的は、強い人と戦うことだけど。他にも同じ目的の人もいるだろうけど。
 ダルマスは、そういう目的ではないだろうってのは、わかった。

「それは……」

「あ、話したくなければいいよ。私だって、無理やり聞き出すほど鬼畜じゃないからね」

「……すまんな、こっちの問題なのに」

 ここまで来て言いよどむってことは、やっぱり家の事情なんだろうな。
 ま、私だって人様の家の事情を聞きだそうだなんて思っちゃいないよ。めんどくさいし。

 私のやることは、大会までの間にダルマスを強くすること。

「さっ、そろそろ始めようか。
 言っとくけど、人に教えるのは初めてだから、あんまり期待しないでよね」

「お、俺が初めてか……わかった」

 人に教える、しかも相手は魔導剣士だ。
 魔導剣士って存在自体、師匠から聞いたことあるなって程度だった。初めて見たのが、ダルマスだ。

 そんな相手に、ちゃんと教えられるのか、不安はある。でも……
 私を、頼ってくれたんだもんね。

「まずは、魔力による全身強化を完璧にすること。
 二か所以上の強化ができるようになるだけで、だいぶ違うはずだよ」

「わ、わかった」

 私と決闘した時は、ダルマスは一部分の身体強化しかできなかった。脚を強化し速度を上げ、次に腕を強化して剣を振り回すパワーとスピードを上げる。同紙に、二か所以上の身体強化はできない。
 それも一つの手ではある。部分強化は、純粋に魔力の使用量を抑えられるから……

 でも、私はその穴を見切って勝利への踏み台にした。
 もしも、手足の魔力強化の速度を保ったまま攻められていたら、危なかったかもしれない。

 魔力強化は、基礎の基礎。ゆえにその先まで極めようとする人は少ない。
 ダルマスは、私に敗北してから……いや、あの決闘を見ていたクラスメイトも。魔力強化は大切だと感じ、それを伸ばそうとしている。

 実際に、その気になればダルマスの才能なら、極めるのにそう時間はかからないだろう。現に、決闘から今日までの間に、見違えるほどに魔力の使い方はうまくなっている。
 でも……

「魔力の全身強化をしながら、その剣を扱う。
 その二つを同時にやるのは、まだ難しいみたいだね」

「……あぁ、悔しいことにな」

 私は、剣を使ったことはない。でも、魔力を扱うのも、剣を扱うのも、どっちも集中力が必要になる。
 集中力を必要とするものが、一つではなく二つ。単純に、労力は倍だ。

 しかも、どちらも使いこなせるようになっても、どちらもを組み合わせて使いこなせるようにならないと意味がない。
 どっちとものいいところを活かす。だからこそ、魔導剣士と呼ばれるのだろうから。

 もちろん、全身強化と剣の組み合わせを完璧にする、だけで終わらせるつもりはない。
 そのためにも……わたしは、やるよ!

「さ、時間はあるようで短いよ! 気合い入れていくよ!」

「あぁ、頼む!」

 ダルマスとの稽古の日々が、幕を開ける。
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