史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

127話 いざダンジョン探索

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「わ……これが、ダンジョン」

 入り口で、ダンジョンの説明を受けて、いざ私は洞窟の中へと足を踏み入れた。
 外見だけだと、特に広そうには感じなかった。だけど、中に足を踏み入れた瞬間……目の前には、まったく別の景色が広がっていた。

 洞窟の中、という意味では、予想通りの景色ではある。でも、予想していた広さより断然広い。
 入り口は、なぜか黒いモヤのようなものがかかっていた。でも、ちゃんと通れたんだよなぁ。
 だから、入り口から差し込む光はない。なのに、ダンジョン内が明るい気がする……ううん、明るい。

「エランちゃんは見ての通りだが、ルリーちゃんとそっちの嬢ちゃん……キリアちゃん、だったか。
 二人は、ダンジョンに入った経験は?」

「わ、私はないです」

「私も」

 ダンジョンに関する知識は、私よりも持っているルリーちゃんにとキリアちゃん。でも、ダンジョンに入るって意味では、スタート地点は同じだ。
 思わず冒険したくなってしまうけど、抑えろ私。

 今回の目的は、魔石採集。もっと言えば、魔石採集をするガルデさんたちの仕事ぶりを見ておく。

「基本的に、ダンジョンじゃ単独行動は厳禁だ。なにが起こるかわからないからな」

「念のため、ペアを決めておこう。ひとかたまりになって行動はするが、万一もある」

「手慣れた冒険者でも、最低二人一組で行動するのが、常識みたいなもんだな」

 私にはダンジョンのルールとかはわからないし、ここは経験者のガルデさんたちに任せよう。
 とりあえず、私たちは三人、ガルデさんたちも三人なので、組分けるにはきりのいい人数だ。

 結果として、私とガルデさん、ルリーちゃんとケルさん、キリアちゃんとヒーダさんの組分けになった。
 みんなで行動はするが、とりあえずこの二人一組は必ず隣り合って行動すること。

「さて。エランちゃんたちは、魔石を採集した経験は?」

「ふっふっふ」

 ガルデさんの質問に、私は意味深に笑ってみる。
 そんな私を、ガルデさんはちょっと引き気味に見ているような気がした。

「ガルデさん、そんな顔をしてられるのも今のうちだよ」

「というと?」

「なにを隠そう、ここにいるキリアちゃんは、魔石採集の名人なのです!」

 バーンッ、と私はキリアちゃんを指差し、彼女の凄さを伝える。だけど、そんなこといきなり言われても、混乱するだろう。
 なので私は、以前授業で魔石採集したことを話した。そのときキリアちゃんも一緒で、彼女の特殊な能力で魔石を楽々手に入れられたのだと。

 あのとき、あの場にいたのは私とダルマス、それに筋肉男だ。だから他クラスのルリーちゃんどころか、同じクラスでもキリアちゃんの能力を知っている子はいないんじゃないだろうか。
 まあ、筋肉男は魔石採集に参加しなかったし、話を聞いていたのかも怪しいけど。

「へぇ……そりゃ、今回の依頼にピッタリじゃないか」

 私の説明を聞き終えたガルデさんたちが、感心したようにうなずいている。
 当のキリアちゃんは、照れた様子だ。

 なんとなく、誇らしかった。

「そう、キリアちゃんはすごいんだよ!」

「むー」

「……どしたの、ルリーちゃん」

 えっへん、と胸を張っていると、視線を感じた。その先には、かわいらしくほっぺたを膨らませたルリーちゃんの姿。まるで風船みたいだ。
 でも、そんな面白いことをして、どうしたのだろうか?

「私だって、"魔眼"を使えば……」

 私にしか聞こえない声量で、ルリーちゃんはつぶやく。
 "魔眼"は、魔力の流れを見ることのできる、エルフの目だ。キリアちゃんが魔力の流れを感じ取り魔石を探すことができるなら、なるほど魔力の流れを見て魔石を探すことも、できるだろう。

 ……ただし。

「ほ、ほどほどにね……」

 ルリーちゃんは、自分がエルフだということを隠している。大っぴらに、目を使って探すわけにもいかない。
 まあ、フードで顔を隠しているし、なにより目で探すんだ。端から見たらその人が"魔眼"を持っているなんて、気づかないだろう。

 だからといって、油断は禁物だ。なので、変に対抗してボロを出さないように、注意しておく。

「じゃ、早速始めよう」

「はーい」

 そんなこんなで、魔石採集開始だ。
 ダンジョン内は、洞窟なので当然ながら石造り。突然出現するのがダンジョンって話だから、ここに人工的な手は加わってないんだろう。

 これまでも、洞窟には入ったことはある。でも、それらとは似て非なるものだ。

「ところで、ダンジョン内は外の光が差し込まないけど、なんで明るいの?」

「いい質問だエランちゃん。この光は、簡単に言っちまえば魔石によるものだ」

「魔石」

 そう、とガルデさんはうなずく。
 魔石には、いろんな種類のものがある。魔力を溜め込む、という意味ではどれも同じだけど、火を出したり、明かりを灯したり。

「じゃあ……」

「これだけでも、付近に魔石が眠っていることは間違いない。
 俺たちは魔導には疎いが、魔石ってのは大気中の魔力を吸収するんだろ? ダンジョン内には外よりも魔力が満ちてるし、その影響で半永久的に機能してるのさ」

 なるほど、明るいってことは、その種類の魔石が近くにあるってことだ。それも、見渡す限り明るいってことは……そこかしこに。
 それに、ダンジョン内には外よりも大量の魔力があるという。魔石が吸収するのは大気中の魔力だけではないけど、まあそこはわざわざ訂正する問題でもない。

 ……言われてみれば、魔力の密度が、外よりも濃い気がする。

「なら、魔石取り放題ってこと!?」

「いんや、そうもいかねぇ。単純な話、あんまり魔石を取るとダンジョン内を灯す明かりがなくなる。魔石は時間が経てばどうやってか新しく作られるらしいが……
 それに、他の冒険者のことも考えないとな」

「あぁ、独り占めってのはよくねぇ」

「魔石採集には、量なり数なり、採集する最高ラインってのがある。
 その最高ラインを大幅に超えないようにするのが、まあ冒険者稼業を長く続けるコツかな」

 冒険者三人がそれぞれ、冒険者のイロハを教えてくれる。私が冒険者に将来なるかはともかくとして、こういうのは大事だ。
 そっか、同じパーティーじゃなくても同じ冒険者。冒険者は冒険者同士助け合おうってことか。

 そんな中で、明かりを灯している魔石は見ただけでわかるけど、他のものはそうはいかない……と、私があちこち魔石を探している間に……

「あ、こっちにも魔石ありましたよ!」

「……キリアちゃん、頼もしいねぇ」

「でしょー?」

 次々魔石を見つけていくキリアちゃん。
 そんな彼女を見ながら、なんとも言えない複雑そうな表情を浮かべるガルデさんに、私は得意げに笑うのだった。
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