史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第三章 王族決闘編

104話 一進一退の攻防

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「せぇええええ!」

「……」

 大声を上げて迫る私と、無言のままに淡々とそれを捌くゴルドーラ。周囲には、まるで金属がぶつかりあったような激しい音が響いている。
 けれど、衝突しているそれらは金属ではない……魔力だ。

 ゴルドーラの正面へと突っ込んだ私は、魔力強化した杖と『魔力剣マナブレード)』をそれぞれ片手ずつに、振るっていた。どちらも、剣のように鋭いが実態は魔力だ。
 両手に持ったそれはいわば二刀の剣。それを振るい、ゴルドーラへと迫るが……

 ゴルドーラは、同じく魔力強化した杖一本で、私の猛攻を全て捌き切っている。

「押し……切れない!」

「全身への魔力強化で全身の動きを大幅に強化。杖と魔導具で、俺に反撃の隙を与えまいというわけか……
 なかなかに手強いな」

「余裕ぶっちゃって!」

 私の攻撃を全て捌く反射神経、動体視力。焦り一つ見せないなんて……!
 しかも、相手は杖一本……つまり、片手のみしか使っていない。

 ということは、残された片手は今自由になっているわけで……

「っ……」

「どうした、気が散っているぞ」

「ちぃ」

 いやらしいのが、自由な片手は私を攻撃するわけでもなく……攻撃する"かもしれない"、と思わせる程度にしか動かしていないということ。
 これは、私の注意力を分散させるためのものだ。いっそのこと、片手でも攻撃なりしてくれたら、そっちを防御することに集中できるのに……

 中途半端に自由なだけで、いちいち気にしないといけない!

「……ほぉ」

 そんな中、なぜかゴルドーラが感心したように、言葉を漏らす。
 それに一瞬気を取られた。その隙を狙ってきたのか、今度こそ放たれた拳が、私の顔面を狙う。

 とっさに、『魔力剣』でガードする。刀身と拳とがぶつかり合い……衝撃までは殺せず、後ろにふっ飛ばされる。
 けれど、そのまま飛ばされるわけにもいかない。すぐさま一時的な浮遊魔法を使い、動きを止め、その場に着地。

 正面を見据えると、ゴルドーラは私を殴った方の手を、握ったり開いたりしている。

「いくら決闘で結界の中とはいえ、女の子の顔を躊躇なく狙う?」

「……なるほどな」

 私の言葉を無視し、ゴルドーラは感心したようにうなずく。

「その魔導具は、身体強化の魔力も吸収するわけか。
 道理で、違和感があったはずだ」

 納得がいった、とゴルドーラ。今の衝突で、確信したらしい。
 『魔力剣』は魔力強化の魔力も吸収する。それが魔法である以上可能だ。どうやら、さっき杖で打ち合っているときに、杖を強化した魔力が減っている違和感を感じていたらしい。

 そして、身体強化した拳で、『魔力剣』の刀身を殴った。その際、身体強化の魔力もわずかながら吸収されたわけだ。

「やはり面白い魔導具だ。これまで様々な魔導具を見てきたが、そんなものは初めてだ。
 今度、それを作った人物と話をしてみたいものだな」

「……きっと喜びますよ」

 第一王子にそこまで評価されるなんて、ピアさんも嬉しいだろう。本人が萎縮するかはわからないけど……ピアさんだし、第一王子相手でも堂々としてそうだ。
 考えてみれば、ピアさんは二年生。つまり、この学園に在籍してまだ一年だ。たった一年で、こんなすごい魔導具を作り出すなんて……すごい!

 ……それにしても、さっきから攻撃が全然当たらないなんて。

「まるで、魔導剣士みたい」

 まあ、私が戦ったことのある魔導剣士はダルマスだけだし、もっと強い人がどんな感じかはわからないけど。
 それでも、あれだけ攻撃したのに全て捌き切るなんて、並の芸当じゃない。

 私の言葉が聞こえたのだろう。ゴルドーラはピクリと肩を反応させて……

「魔導剣士……? いいや、まったく違う」

 と、言った。

「杖に魔力を込めれば、なるほどそれはあるいは剣のように映るかもしれない。だがな、これは剣ではない。一方で、魔導剣士は剣を得物とする者だ。
 それを剣のように使うことと、魔導剣士とでは意味合いがまったく違う。軽はずみな言動は慎むといい」

 さらに続けて、こんなことを言うのだ。
 た、ただ私は、ちょっと思ったことを言っただけなのに……なんでこんなこと、言われなきゃいけないの!?

 ムキッとした直後に、ゴルドーラの周囲には光の弾が浮かぶ。
 それは、さっきの光景と同じもの。

「無駄ですよ。いくら魔法を撃ってきても、この『魔力剣』で吸収すれば意味はありません」

「だろうな。
 ……それが、無限に魔力を吸収し続けられるのなら!」

 叫ぶと同時に、光の弾は放たれる。しかも、さっきより数が多い。
 あの、ゴルドーラの口振り……やっぱり、試してる! 魔力を吸収できる許容量があると、それを確かめようとしている!

 もしも、この剣はどんな魔法でもどれだけでも吸収できますよ……とアピールしたいなら、魔力を吸収させ続けるべきだ。
 けれど、それを続けたら許容量を超えてしまう!

「せい!」

 ここは……魔力吸収と、攻撃を防ぐのを、同時にやるしかない! まずは、魔力吸収。
 続けて、光の弾に向けて杖を向ける。さっきは、魔力壁を壊されてしまったから、防御でかわすのはなしだ。

 攻撃を、受け流して……

「ほぅ」

 風を操り、風の道を作ることで光の弾の軌道を変える。これで、攻撃が当たるのは防げる。
 だけど、やっぱり数が多い!

「どうした、やはり魔力吸収には限界があるか!?」

「っ」

 魔力を際限なく吸収できるなら、別に他の方法で攻撃を防ぐ必要はない……そうしない時点で、答えを言っているようなもの。
 少なくとも、ゴルドーラはそう感じたらしい。

「接近戦は不利のようだ、悪いがこのまま押し切らせてもらう」

「くっ!」

 接近戦になれば、ゴルドーラの体に触れた瞬間、『魔力剣』は魔力を吸収する。それをさせないために、離れて戦うことを選んだ。
 そのやり方は、多分正解だろう。現に、私が動きを制限されている。

 頭がキレる人だなぁ!

「それに……それは、魔力を吸収する、のだろう?
 ならば、物理攻撃には弱いだろう」

「!」

「不死たる身体を形成されし人造なる人形よ、我が下僕しもべとなりて眼前に姿を現せ!」

 私が光の弾を捌いている間に、ゴルドーラは杖を構えて……詠唱を、開始する。
 これは、魔術を使うための詠唱。

 この『魔力剣』は、大気中の魔力を使う魔術は吸収できないが、ゴルドーラはそれを知らない。なので、闇雲に魔術を撃つわけではないはずだ。
 それに、さっきゴルドーラは「物理攻撃に弱い」と言った。

 本来魔術には、物理的な要素は必要としない。だけど例外はある。
 そして、ゴルドーラは……あの兄妹の、兄だ。

人造人形ゴーレム!!!」

 詠唱が完了し、そして魔術が放たれる……瞬間、見ている景色に異変が起こる。
 固い地面の一部が……ゴルドーラの周辺が、まるで波のように揺れ……次々と、形成されていく。

 泥が、土が、石が……様々なものが、くっつき、それが人の形を成していく。それは、間違いなくゴーレム……コーロランのような巨大なものではなく、コロニアちゃんの人並みの大きさの複数ゴーレムに近い。
 ただし……その数は、十にも登る。単純に、コロニアちゃんの倍だ。

「さあ、行け!
 そして、見せてみろ。これをどう切り抜けるか」

 その合図と共に、ゴーレムは……一斉に、私に向かってくる。もちろん、光の弾は撃たれ続けるままで。
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