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第三章 王族決闘編

99話 あんたがトラブルメーカー

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 ……ベルザ王国の第一王子、ゴルドーラ・ラニ・ベルザ。自分で言うのもなんだが、世間知らずの私……でも知っているほどに、有名な人物。
 なんせ、王子なのだ。普段は学園に通っていて、休日なんかは王族としての責務を果たしていたりとかなんとか。
 国民への顔見せもしていて、第二王子、第一王女ともに支持が高い。

 そんな彼と、この度決闘をすることになった私エラン・フィールド……

「まー、今回のお話はこれに限るというか、むしろこれ以外にないというか……」

 と、苦笑い気味に話すのは私の正面に座るナタリアちゃんだ。まあ、そうなるだろうなとは思っていたよ私も。
 現在、各クラスの代表者による、定例会議が行われている。それぞれのクラスの代表者が集まって、まあなんかいろいろ話をするのだ。

 メンバーは、私、ナタリアちゃん、王子様コーロラン。
 ……あとヨルだ。

「いやぁ、驚いたよ。
 そっちの第二王子さんとクラス対抗の試合をしたかと思ったら、今度は第一王子さんと決闘とか。
 うはっ、王族と決闘とかすげーファンタジーモノっぽい!」

 ヨルは、度々意味不明なことを言う。初対面で、私に迫ってきた変態だ。
 こんなのが代表者で、それ以上に私と同じ黒髪黒目だっていうんだから……泣きたくなるよ。

 まあ、ヨルの変態ぽさはともかくとして……

「ボクも驚いたよ。試合はもちろん見学していたけど……
 なにがどうして、彼の兄と決闘をすることに?」

「まあ、いろいろあったんだよー」

 私と、ゴルドーラ……それにコーロランの話を、おいそれと他の人に話すわけにもいかないだろう。
 なんせ、兄へのコンプレックス……その現場を見た私がかっとなってつい、なんてね。妹のコロニアちゃんにも、詳細は伏せているのに。

 コーロランも、その話はしたくなさそうだし。

「けど、大丈夫なのか? 相手は下級魔導士相当って話じゃないか」

「ふふん。ま、日々特訓してるからね」

 コロニアちゃんに、訓練を申し込まれてから……毎日、放課後には二人で訓練することが日課になった。クラスのみんなにお茶会に誘われることもあったけど、残念ながら今は訓練に集中だ。
 初日はコーロランも同席したけど、以降は姿を見せなかった。コロニアちゃんが言うには、顔を合わせづらい……のだそうだ。

 今日会った感じ、いつも通りに見えるけどなぁ。

「特訓かぁ。言ってくれれば、協力したのに」

「いいってー。王族との決闘なんてそれだけでも問題なのに、決闘相手わたしに協力したなんて知れたら迷惑かけることになるもんね」

「そこまでわかっててなぜ……」

「俺なら、いつでも付き合うぜ?」

「……」

「無視!?」

 ……まあ、魔力の高さで言えば、ここにいるメンバーは実に理想的とも言えるだろう。
 特に、ヨルは私と同じく、入学クラス分けの日に魔導具を壊したくらい……

 私がクラスメイト以外に協力を頼めなかったのは、今自分で言った通りだし……

「あれ……別に私がヨルに迷惑かける心配をする必要はないんだから、確かにヨルに訓練相手を頼むのはありだったのかも……」

「聞こえてますけど!」

 まあ、それも今更だ。コロニアちゃんのおかげで、だいぶイメージトレーニングもできたしね。
 もちろん、精霊さんとの対話も忘れていない。訓練では魔術を使うことはなかったけど、決闘ではそうもいかないだろう。

 準備は、万端……なんてものはないけど、可能な限り万端に近いものにしている。
 あとは、なにかもうひと押しあれば……

「あ、そういえばルリーくんが拗ねていたよ」

「ルリーちゃんが?」

 ふと、ナタリアちゃんからルリーちゃんの名前を出された。ナタリアちゃんとルリーちゃんはルームメイトなのだ。
 なので、ルリーちゃんがなにかを言っていたのだろうけど。

「拗ねていたって?」

「言ってくだされば、私だって訓練のお相手を務めたのに……
 ってさ」

 肩をすくめ、ルリーちゃんのものまねをするナタリアちゃん。
 ちょっと似てるなぁ。

 まさか、ルリーちゃんがそんなことを言ってくれていたなんて。

「でも、それなら言ってくれればよかったのに」

 ルリーちゃんとはクラスは別だ。だけど、休み時間にクラスに訪れる、ということはできるだろう。
 それに、食堂でも何度か会っているけど……なんにも、言われなかったけどなぁ。

「きっと、エランくんから誘ってほしかったんじゃない?」

 もしそうなら、ルリーちゃんめんどくさい彼女みたいだな……
 いやでも、ルリーちゃんならやりそうだなって気もする。

 だとしたら、ルリーちゃんには悪いことしちゃったなぁ。
 迷惑はかけたくないけど、そりゃ協力してくれるって言ってくれるなら私だってそれを無下にはしないし……あっちから言ってくれるなら私だってねぇ……

 あれ、なんか私もめんどくさいな。

「けど、身内の立場としてはどうなんだ? 同級生……試合までした仲の相手が、兄と決闘するって言うのは」

「それは……」

「はぁ、デリカシーのない。これだからヨルってやつは」

「せめて男子ってやつはにしてくれないかな!?」

 コーロランの複雑な心情を考えれば、私とゴルドーラが決闘することをどう考えているかなんて。本人に聞くべきじゃない。
 まあ、ヨルは……というか私以外はそれを知らないから、しょうがないと言えばしょうがないんだけど。

 あれ以来まともに顔を合わせるのが今日が初めてだから、今どう思ってるのかなんて私にもわかんないし。でも、それを無理に聞き出そうとは思わない。

「まあ、ともあれエランくんはなんというか……」

「とんでもないトラブルメーカーだな」

「あははは……」

「私そんなイメージ!?」

 今までの、ダルマスとの決闘や魔獣騒ぎ、試合とは違って、完全に私から踏み込みにいった事態ではあるけど……
 言うほどトラブルメーカーじゃないと思うよ!?

 結局その日は、私とゴルドーラの決闘に関する話ばかりだった。他に話題がなかった……わけじゃないと思うんだけど、これを超えるものはなかったらしい。
 この日は、定例会議だったので訓練はできなかったけど……なんか、少し心が軽くなった気がする。こうして軽く話せる空間、今までなかったからかもしれない。

 心身共にリラックスできたのかもな。この日はのんびりと、過ぎていく。
 そうして……ついに、決闘の日がやってくる。
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