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第二章 青春謳歌編
77話 会議終わりにまさかの事態
しおりを挟む魔獣騒ぎについて、私の知っていることを改めて話した。魔獣がエルフとしゃべったこと以外。
その結果、魔獣を凍らせた私スゲーって話になった。
どうにも、私が氷系統の魔術を使ったのがみんなに刺さったようだ。
精霊にはそれぞれ火、水、風、土と属性があるけど、それぞれの組み合わせによって、また違った属性の魔術を使うことができる。
火の精霊は、火の魔術。水の精霊は、水の魔術。
今回は、火と水を組み合わせて氷としたわけだ。
とはいえ、単に二種類の精霊と契約すれば魔術を組み合わせられる、わけではない。魔術を組み合わせるには、精霊同士も仲が良くなくてはいけない。
今回なら、火が強すぎたら水は蒸発し、水が強すぎたら火は消える。
精霊同士も仲良くなってこそ、真に複合魔術を作り出すことができるのだ。
「魔獣を倒したエランさん、しかも二種類の精霊と契約しているなんて……
これは、今のところ「ドラゴ」クラスが一歩リードかな?」
と言うのは、王子様。
クラスごとに、魔力量がほぼ均等になるように、それぞれ生徒が振り分けられた。
この代表者による定例会議は、互いにクラスの力を高め合う情報交換会でもある。
だから、現在、凄まじい力を持っている私が! いることで、「ドラゴ」クラスが他のクラスよりも一歩リード、と表現したわけだ。
とはいえ、ここで素直にうなずくのも、嫌味ったらしい……
ここは謙遜しておこう。
「いやぁ、私がすごいだけで、クラス全体はまだまだですよぉ」
「あはは、なんかエランくんの性格だんだんわかってきた」
「ん?」
とりあえず、魔獣騒ぎの話の続き……に移ろうにも。結局、魔獣がどうやっていきなり現れたのかも、魔獣の目的も、なにもわからずじまい。
なので、話はこれ以上膨らませられそうにない。
私はあとは一応、ダルマ男との決闘のことは話した。
授業の一環として、魔力の使い方を学ぶために……てな形で。
他のクラスは、これといって目立った報告はなかった。
ヨルも、同じクラスのメンバーが魔獣に襲われたって形では報告はあったけど、まあ私の話と被るし、短く済ませた。
蓋を開けてみれば、あんまりめぼしい話はなかったな……
いや、まだ入学して数日だし、これが普通なのか。むしろ決闘に魔獣遭遇に、私のクラスがなんかありすぎたのか?
というか私が。
さっきも、ヨルから「入学早々エランはすっかりトラブルメーカーだなー」って言われたし。
ヨルの言うことだし無視してたけど、ナタリアちゃんも王子様もなにも言わなかったってことは、みんなそう思ってるの!?
「じゃあ、今日はこれまでってことで。
いいですか、先生」
「あぁ。初めてにしては、悪くなかったぞ。
ま、ざっとこんな流れだ。クラスであった出来事、学園での騒ぎ、それらの情報交換。
あとはまあ……個人的に気になったことでも……」
「じゃあ、はい先生」
「ん、どうしたフィールド。気になることか」
「最近、視線を感じて」
「本当に個人的なものだな!? 知らん!」
流されてしまった。先生雑じゃない?
ちなみにさりげにヨルに視線を送ってみたが、無反応。やっぱりあいつじゃないのか?
話も一段落して、解散の流れに。
どうなることかと思ったけど、悪くはなかったかな。
場を仕切っていた王子様が先生に確認を取り、定例会議も終了……
と思われたところで、王子様が「あ」と声を漏らす。
「そうだ、大事なことを忘れてた。
エランさん」
「はぇ?」
その視線は、私に向けられる。
お、なんだ? 大事なことって?
王子様は、にこっと、見る者すべての心を鷲掴みにするような、爽やかーな笑顔で……
「来週、ウチのクラスと試合をしてほしい」
……と言った。
「し」
「あ」
「い」
それは、聞き違い………ではないんだろう。
ナタリアちゃんもヨルも、驚いた顔をしている。
そして、先生も。
「えっと……
試合? 私のクラスと?」
「そう。ウチと、キミたちとで」
さも当然というように、王子様はうなずいている。
クラス同士の、試合……それは、私とダルマ男とでやった決闘、とはまた違うんだろう。
正直、面白そうではある。
けど……
「なんで、私たちと?」
疑問はある。入学して、まだ数日……クラス間の交流どころか、王子様と会ったのだって私は初めてだ。
どんな人かは、ノマちゃんからよくよく聞かされてるけど。
それとも……交流がないからこそ、だろうか。
「単純な話、興味があるんだよ、キミに」
「……私?」
「そう。入学時点で【成績上位者】、それに入学早々の数々のトラブルの中心にいる。
興味を向けるなって方が無理でしょう。キミが所属しているクラスにもね」
そんなもんなのかな?
でも、だったらわざわざクラス対抗の試合じゃなくても……
「個人的には決闘をしたい気持ちもあるけど、立場的にそうもいかなくてね。
クラスの力を見てみたいってのは、本当だし」
残念そうに、決闘はできないと言う王子様。
立場的……なるほど、王子様だからか。
いくら学園では一生徒で、そう振る舞っていても……やっぱり、立場を完全に消し去ることはできない。
貴族どころか、国を背負って立つかもしれない王子様なら、一存でおいそれと決闘はできないのか。
うん、私もだいぶ、王族ってやつに詳しくなってきたぞ!
「先生、構いませんよね」
「え、あ、あぁ……
この学園は、生徒の自主性を重んじる。よほどの理由がなければ、止める理由はないが……お前のクラスの生徒は、知ってるのか?」
「もちろん。許可はとってますよ」
あぁ、どんどん話が進んでいく。
王子様め、すでにクラスメイトから許可をとってるって……最初から、試合を申し込むつもりだったな?
先生はどうやら、止めるつもりもないようだし。
てことは、ここはクラス代表の私が、しっかりと答えなきゃだよね!
単体の決闘ではなく、クラスメイト全員での試合……楽しそう。
でも、そんな軽い気持ちで決めちゃだめ。クラスのみんなのことも考えて、慎重に答えないと!
「それで、エランさん、返答は?」
「クラス同士の試合……
その申し込み、受けるか受けないか……その答えは……!」
――――――
翌日、教室。
「というわけで、「デーモ」クラスと試合をすることになりました。
以上、エラン・フィールドでした」
「「「なんでだよ!」」」
うん、まあこうなるよね。
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