71 / 741
第二章 青春謳歌編
70話 エルフとダークエルフ
しおりを挟む「カーマンくん」
「おっと、そろそろ行かないと。
わからないことがあったら、カウンターに居るから遠慮なく聞いて。
あ、でも図書室では、お静かにね」
ふと、女の子に呼ばれたレニア先輩は、私に注意事項とばかりに、口元に指を立てた。静かにってことか。
それから、呼ばれた先、受付カウンターへと向かっていく。
カウンターには、レニア先輩ともう一人。
レニア先輩を呼んだ女の子だ。仲良さげに話している。
レニア先輩は委員、とか言ってたから、あの人もそうなんだろう。
「っと、いけないいけない」
私には、やるべきことがある。
教えてもらった、エルフに関する書物がある場所。早速、そこに向かう。
図書室では静かに、と言ってるだけあって、なんとも静かな空間だ。
それほど生徒が多いわけではないけれど、靴音さえ響いてしまうくらいに静かな空間だ。
気をつけないと。
「……ここ、かな」
確か、レニア先輩が指したのはこの辺だ。
教室の隅に位置する、一角。そこに並ぶ本に、私は注目する。
うーん、エルフ、エルフ……
……あった! これかな。
エルフ族と名のつく本を、私は片っ端から手に取っていく。
全部読めるかはともかくとして、ひとまず手元に置いておいて、気になったものから読んでいこう。
とりあえず五冊を手に取り、胸に抱える。
えっとー、読める場所読める場所……
「ここにしよ」
どこか、空いている席はないかと視線を巡らせる。
ここで読書している生徒はあまり多くないので、空いている席はたくさんだ。
その中で、今本を取った場所と一番近い席を選び、座る。
さあて、読むぞ。
「えっと……エルフという種族について、か」
一冊を手に取り、本を開く。
ページを捲ると目次があり、次のページには今言った、エルフという種族についてが書かれている。
エルフ自体は、師匠と接していたのでよぉく知っているけど。
改めて、エルフという種族について知るのも、悪くない。
「……」
エルフ……別名森の妖精。それは、自然や精霊に愛され、自然の中に暮らすとされる種族。自然の中に生きるがゆえに魔力は純粋かつ膨大で、精霊に愛されるがゆえに魔術を得意とする。
金色の輝く髪、翠玉に輝く宝石のような瞳、透き通るような白い肌は、確かに妖精を思わせる美しさだという。
うんうん、師匠もかなりの男前だったもんな。
ていうか、言われなきゃ美人の女の人でも通るんじゃないかな。
また、エルフには魔力を感じ取りやすい特殊体質がある。
肌で感じることができたり、魔力の流れをその目で見ることができる。魔力の流れを見ることが可能な、エルフのその瞳を、総じて"魔眼"と呼ぶ。
「……まがん……?」
なんだろう、まがん……どっかで聞いたな……
どこだっけ。エルフ関連だから、師匠か?
……いや、違うな。
えっとぉ……確かぁ……
「ナタリアちゃんだ!」
はっと思い出し、思わず私は大声を上げて、立ち上がっていた。
そうだそうだよ、思い出し……た……
「……」
「ご、ごめんなさーい……」
ここは図書室で、先ほど静かにするようにと注意されていた。
にも関わらず、大声を上げて立ち上がってしまったわけだ。
反省。
……ともかく、まがん……魔眼という単語で、思い出したのはナタリアちゃんのことだ。
彼女の目が、確か魔眼だったはず。
『この"魔眼"ってのは、いろんなものを見ることができるんだよ。例えば、その人に流れる魔力の気配とか』
ナタリアちゃんのきれいな青色の瞳は、そのときだけ緑色に変色していた。言われてみれば、エルフと同じ色の瞳だ。
そして、魔眼について、説明してくれた。
人やエルフなど、種族によって流れる魔力は違う。
だから、エルフにはエルフにしか流れていない魔力があり、ルリーちゃんの正体がエルフ族だとわかったのだと。
「ってことは、ナタリアちゃん、エルフと関係があったのかなぁ」
エルフの瞳、魔眼。それが、どうしてナタリアちゃんの目にあるのか。ナタリアちゃんは人間なのに。
昔にエルフと会って、なにかしらあったのだろうか。
考えてみれば、どうして"エルフの魔力"がわかったのだろう。
それは、ルリーちゃんと会う前にも、エルフと会ったことがあるから。少し考えればわかることなのに。
ううむ、エルフに知り合いがいるのかなぁ、ナタリアちゃん。
「ま、それは後々本人に聞くとして」
エルフの瞳が魔眼と呼ばれているのは初耳だけど、私が知りたいのはそこじゃない。まあ、改めてエルフについて知ろうとしたのは私なんだけどさ。
他にも、エルフの特徴は書いてあったが、私が知っているものがほとんどだ。
えっと、他には……
エルフ族と言われる彼らの中には、ダークエルフという種族が存在する。
「ダークエルフ……!」
その単語に、私の目は止まる。
ルリーちゃんの、種族だ。大きな枠組みではエルフだけど、普通のエルフとは対極的に違うようだ。
なになに……
精霊に好かれるエルフとは対象に、ダークエルフは精霊に嫌われ、邪精霊に好かれる。
そのため、精霊の加護を受けられず一般的な魔術は使えない。が、邪精霊の加護を受けている彼らはただ一つ、ある魔術を使うことができる。
その魔術こそ……
「闇の、魔術……」
火でも、水でも、風でも土でもない……闇の、魔術。
その存在を、私はルリーちゃんの魔術を見るまで、知らなかった。
精霊には好かれないから普通の魔術は使えない。
邪精霊に好かれるから闇の魔術は使える……か。
そもそも邪精霊とは。
闇や暗がりを好み、精霊とは相反する存在。精霊が好む場所を嫌い、精霊が嫌う場所を好む。
精霊とは天敵のようなものなので、精霊の加護を受けている者は邪精霊の加護を、邪精霊の加護を受けている者は精霊の加護を、それぞれ受けられない。
また、邪精霊は災いを呼ぶ精として……
「忌み嫌われている、か」
ダークエルフの体質は、精霊に嫌われ邪精霊に好かれるというもの。
もしかして、ダークエルフが嫌われてるのって、邪精霊に好かれているから……?
……いや、それだとエルフまで嫌われているのが説明つかないか。
「えっと、ダークエルフはエルフ以上にひっそりと暮らしていた。
しかし、ある事件を堺に存在が明るみになって……」
……世界中から、嫌われることとなる。
「これだ」
私が、知りたかったこと。これだ。
この先のページに、知りたかったことが書いてある。
ダークエルフが、エルフが、みんなから嫌われている、その理由が……!
20
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる