史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
上 下
46 / 852
第一章 魔導学園入学編

46話 決闘の決着

しおりを挟む


 迫りくる炎の波……これはもう、斬撃というレベルじゃあないな。
 それに、これじゃあ弾くこともできない。

 身体強化で、全身を鎧で包んでいる以上、結界は関係なしにあれに呑み込まれても一定以上のダメージは受けないけど……
 炎のダメージは受けなくても、熱は防ぐことはできない。

 さっき火の斬撃を避けてて気づいたけど、どうやら熱さでのダメージは防げても、熱までは防げないらしい。
 結界内では、ある程度以上のダメージは無効化される……けど、疲労は別だ。
 疲労が溜まれば動けなくなり、動けなくなれば負け認定される。

 火の場合は、熱さイコールダメージ、熱イコール疲労、ということだ。
 ややこしいけど、まあ……
 要は、あれに呑み込まれたら熱でやられて、ダウンしちゃう可能性が高いってこと。

 外からの衝撃には強くても、熱とか例えば毒とか、空気感染的なものには弱いみたいだな、身体強化。

「だったら……」

 波を避けるのも、やはり難しい。
 ならば取る手は、一つだ。

 私は、魔導の杖を構える。
 向ける先は、もちろん炎の波。

 魔力を、杖の先端に集中。
 あの炎の波を、止めるために、イメージするのは……

「……凍れ」

 私の言葉を合図に、杖の先端が光り……
 そこから、炎の波へ向けて、淡い光が放たれる。
 その光が、炎の波に触れた瞬間……


 パキィイイイン……


 耳に届く、瞬間的に激しい音……そして、周囲に漂う冷気。
 それもそのはず。

 激しい熱気を発していた炎の波は、その全てが、見事に凍っていたのだから。

「……な……」

 それを見たダルマ男は、驚愕に声を漏らした。
 自分の攻撃が凍らされた、あの激しい炎が見事に凍った、それほどの魔力の差……様々な、感情が渦巻いていることだろう。

 氷に包まれた、炎だった波……
 それは、まるで芸術品のよう。

 だけど、それに見惚れている暇などあるはずもなく。

「隙あり、だよ!」

「ぁ……!」

 私は、足への強化魔力をして、波を越えてダルマ男の眼前へ接近する。
 確かに、あの炎を止められたことに驚いてるんだろうけど……戦いの最中、隙を見せちゃいけない。
 加えて、凍った波が壁になって、私の動きを隠してくれていた。

 けれど、それじゃあまだ決闘の決着はついていない。
 勝敗をつけるには、相手に敗けを認めさせるか、戦闘不能にするか。

 ダルマ男の性格なら、降参するのは期待できない。
 なら、ちょっと気絶でもしてもらおう。
 大丈夫、結界内なら、たいしたダメージにはならないし。

 私は、全身に回していた魔力を、右拳へと一点集中させる。
 さすがに防御体勢を取ろうとするダルマ男だが、気づいた時点で遅い。

「たぁあああ!」

「そこまで!」

 振りかぶった右拳が、ダルマ男への顔面へと繰り出される……その瞬間、場内に響き渡る声。
 決闘の勝敗結果となるもう一つ、それは先生が止めた場合だ。

 つまり、この時点で決着がついた……と判断されたってことだ。
 ちょっと不服だけど、仕方ない。
 あとは、攻撃の手を止めるだけ。

 先生の合図により、私の右拳はダルマ男の眼前で、ピタッと止まる……
 ……なんて、都合のいい止め方ができるはずもなく。

「ぁ」

「ぶふぉおおおおお!!」

 止めようとした。止めようと努力をした私の右拳は、しかし止まることなく、そのまま振り抜いてしまう。
 結果として、決闘の勝敗がついたにも関わらず、ダルマ男の顔をぶっ飛ばしてしまうことになった。

 まるでボロクズのように、ダルマ男は吹っ飛んでいく。
 ビターンバチーンドゴーン……床に壁に、衝突する。
 すんごい音したなぁ。

 うわ。痛そう。

「あー……ごめんね」

「な、なにしとるんじゃー!」

 さすがに悪いと思った私は、謝る。けど、多分届いてないだろう。
 その場に、先生の怒号が響いた。

 結局、決闘の勝敗は私にはなったけど、先生から注意を受けた。

「私の合図があったのに、なぜダルマスを殴った?」

「いやぁ、あんなぎりぎりで言われても、反応出来ないって言うか……」

「だとしても、あんな全力で殴ることはないだろう」

「ダルマス様ー!」

 完全に伸びているダルマ男は、取り巻きたちに介抱されている。
 すごいや、あんな殴ったのに、ほとんど顔の形は変形していない。

 もしも、結界の効果が反映されてなかったと思うと、ゾッとするけど。

「まったく……
 この後教室に戻るつもりだったが、とりあえず誰かダルマスを保健室に連れて行ってやれ」

「あ、それなら私が……」

 さすがに、私に責任がないとも言えないので、そっと手を上げる。

「任せられるか! どうせ見てないところでまたぶん殴るつもりだろ!」

「もうしないよ!」

「……ダメージこそ抑えられているが、結界内で気絶するまで持っていくとは。
 それも、強化していたとはいえ素手で」

 私だって、節度はわきまえている。
 ダルマ男は気に入らないやつだけど、さすがに気絶している相手を、どうこうしようとは思わない。
 原因は、まあ私にもあるわけだし。

「なら、フィールド、責任もって運んでやれ」

「でも先生、エランちゃんは女の子……」

「たった今、その女の子が同い年の男を気絶するまでぶっ飛ばしたんだ。
 運ぶくらいたいしたことじゃないだろう」

 ……なんだろう、クラスメイトだけじゃなく、先生からも怪力女扱いされている気がする。
 いや、仕方ない部分はあるんだけどさ。

 ま、喧嘩両成敗ってわけじゃないけど……気絶させちゃった責任は、取らないとな。

「よっと。
 じゃ、いってきまーす」

「……あぁ」

 私は、ダルマ男を持ち上げ、肩に担ぐ形で歩き出す。
 はぁ、ちょっとした決闘が、なんでこんなことに。

 なんだか背中に、みんなの視線を感じる。
 そりゃ、あんなぶっ飛ばしちゃったからなぁ。

「男の子一人、軽々持ち上げてる……」

「あれ、身体強化使ってるのか?」

「いや、多分素だ」

 クラスメートたちの声が聞こえなくなるくらいまで離れた所で……私は気づいた。
 保健室って、どこだろう。

 その後、目的の保健室に行こうと、あっちこっち行っている間に、ダルマ男は目を覚ました。

「! てめ、なにして……離せ!」

「あ、ちょ、そんな暴れたら……」

「いてぇ!」

 私の上で暴れるダルマ男は、案の定落ちて地面に激突した。頭から。
 痛そう。

 保健室に行こうと勧めるも、本人は断固拒否し、教室へと戻っていく。
 仕方ないので、私も戻ることにした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

処理中です...