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第一章 魔導学園入学編

39話 こんにちはクラスメイトたち!

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「ここかぁ」

「ここね」

 ルリーちゃんたちと別れた私とクレアちゃんは、一つの教室の前にいた。
 ここが「ドラゴ」クラス。私たちの通うことになる教室だ。

 この奥に、魔導を極めるために集まった人たちがいるのか。

「私、ワクワクしてきたよ!」

「あら、さっきまですごく落ち込んでたのに」

「そのことは一旦記憶から消しておきます」

 今後もあの男と会うことになったのは無念でならないが……
 今は、とにかく置いておこう。

 今重要なのは、この先に待っている人たちなのだから。

「でも、気をつけなきゃだめよ?」

「なにを?」

「同じクラスの人たちの中には、当然上級貴族の家柄の子もいるはずよ。
 私のような下級貴族はもちろん気を付けなきゃだけど、エランちゃんも変に目をつけられないようにしないと。
 まあ、エランちゃんに至っては無名の貴族が彼らを押しのけて【成績上位者】になったんだから、時すでに遅しだけど」

 むむぅ、貴族社会というのは厄介だなあ。
 とにかく目をつけられないように、か。

 ただ、クレアちゃんの言うように、私の場合もう遅い気がするけど……
 その点でいくと、家名すらない平民ヨルの扱いが想像するのは怖いところだけど……
 いやいや、あいつのことは別にいいよ。

「ご忠告ありがと。
 でもま、なんとかなるでしょ」

「あはは、言うと思った」

 どうしようもないことで悩んでいても、仕方ない。
 さっきまで【代表者】のことで悩んでいた私じゃ説得力ないけどね!

 できれば同じ組のみんなと仲良くしたいけど、ここでは仲間でライバル。
 無理にまで仲良くしようとは、思わない。

 軽く深呼吸をして……
 ドアに、手をかける。
 それをゆっくりと、横にスライドさせていき……

「おっはよー!」

「!?」

 開口一番、同じ組のみんなへと、挨拶をした。
 なぜか隣のクレアちゃんは、ぎょっと驚いているけど。

 同時に、教室内の視線が、一斉にこちらを向いて……

「あれが、例の……」

「【成績上位者】っていう……」

「なんかバカっぽい顔してるけど」

 なんか、いろいろ囁かれている。
 今誰か私のことバカにしてなかった?

 ざわざわと、周囲が言っている中……キョロキョロと辺りを見回していた私は、ある一人の男と目が合った。
 合ってしまった。

「あ」

「げ」

 お互いに、嫌そうだとわかる声……
 それが漏れ、眉間にしわが集まるのを感じる。

 私の視線の先に、いる男は……

「ダルマ男……」

「田舎者……」

 因縁……と言っていいのかわからないけど、とにかくなにかと縁のあるダルマ男だった。
 嫌な縁だなぁ。

 ルリーちゃんをいじめていたこの男とは、昨日も会ったばかりだ。
 せっかくわくわくに胸を弾ませていたのに、学園の敷地内に足を踏み入れた瞬間目に入ったのがこいつの顔で、がっかりしたのを覚えている。

 ダルマ男は、私を見て露骨に舌を打つ。

「お前と同じ組なんてな、くそ」

「それはこっちのセリフだよ、けっ」

「え、エランちゃんっ」

 私に悪態をつくこの男に負けず、私も不機嫌を露わにしていると、後ろからクレアちゃんが肩を叩く。
 どうしたんだろう、振り向いてみる。

「どうかした?」

「いや、どうかしたらって……
 その人、ダルマス家の人でしょ?」

「うん、ダルマ男だよ」

「わ、私は今、エランちゃんが怖い……」

 どうしたんだクレアちゃん、そんなに怯えた雰囲気を出して……
 ……あぁ、そういえば。
 以前ルリーちゃんが、言っていたな。


『ダルマス家というのは、貴族の中でも上級の貴族。
 あの人、イザリ・ダルマスは、その家の長男なんです』


 と。
 貴族の中でも、上の位……上級貴族なのだ。
 つまりは、他の貴族からも一目置かれる存在。

 だからか……私のことをボソボソ言っている人たちが、なにも話しかけてこないのは。
 ダルマ男と絡んでいる私に絡みに行って、目をつけられたくないのだろう。

「ふん。今のところはお前がこのクラスでトップらしいが……それも、今のうちだ。
 すぐに俺様が追い抜いてやる」

 覚悟しておけ、と、ダルマ男は私に指差す。
 なんという、堂々たる宣言だろう。

 正直、こういうタイプはまあ、嫌いではない。
 正面から、お前には負けないと宣言されるなんて、なんかライバルって感じがするじゃないか。

 まあ、事前にルリーちゃんをいじめていなければ、だったんだけどね。

「あんたには負けない」

「! 言ってくれるじゃねぇか……!」

「え、エランちゃんん……」

 クレアちゃんも含め、この場にいる人たちは、ダルマ男の家の名前に圧倒されているのだろう。
 だったら、それを気にしないようにさせれば、問題はない。

「大丈夫だってクレアちゃん、こいつが偉いんじゃなくて、こいつの両親が偉いんだから。
 こいつに、そんなにビビる必要はないって」

「っ、なんだとてめえ!」

 なぜだろう、クレアちゃんたちを落ち着かせるために言った言葉に、ダルマ男が激しく反応した。
 お前じゃないよ。

 というか、なんで周囲のみんなは、私を信じられないものを見るような目で見ているのだろう。

「や、な、なんで怒るのさ。事実でしょ?
 それとも、もしかしてこいつがなにか功績を立ててたから実際に偉かったとか?」

 いやまぁ、そうだとしても今更、ダルマ男にペコペコしたりはしないんだけどね。

「! 人が、気にしていることを……!」

「ん?」

 絞り出すような、その声は……ダルマ男の、本音が混じっているように思えた。
 いつ、爆発してもおかしくない一触即発な状態……

 だったのだが……

「おやおや、なんだいこの空気ハ?
 入学早々、騒々しいねェ」

 ガラガラと音を立て教室に入ってきた、野太い声がその場に響いた。
 そこにいたのは、紫色の髪をオールバックにした、なんか服越しでも筋肉の盛り上がった奇妙な男だった。

 ダルマ男に、筋肉男……なんだこのクラス。
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