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第一章 魔導学園入学編
37話 希望?絶望?組分け発表!
しおりを挟むドキドキの組分け。
その結果が、目の前に広がっている。
クラスの名前は、それぞれ
「ドラゴ」クラス
「デーモ」クラス
「ラルフ」クラス
「オウガ」クラス
となっている。
意味はよくわからないけど。
この中で、私はどの組で、みんなもどこに配置されているのか。
これも、それぞれの名前は順に書かれているようだ。
なので、エから始まる箇所を探せばいい。
さてさて、どこかなー。
「あ、あった」
「え、もう見つけましたの?」
貼り出されている名前……クラスを、とりあえず左から読んでいった。
その結果、すぐに私の名前を見つけることができた。
見始めて、最初のクラスに名前があった。
「んでも、なんか私の名前、他の人より太くない?」
「本当ですね」
よく見ると、私の名前と他の人の名前とでは、先の太さに差がある。
これ、なにかのミスかな。それとも……
「あ、ありましたわ!」
「私もです!」
「ボクも。
……残念、エラン・フィールドくんとは別々か」
それぞれ、自分の名前を見つけたらしい。
喜んだり、残念そうにしたり。
その中で、やはり気になるのは……名前の、太さだ。
私と、ナタリア・カルメンタールちゃんは別々のクラスで、同じく他の人より線が太い。
もしかして【成績上位者】だからだろうか。
……となると、あいつも……
「探したくないけど、仕方ない」
あいつの名前を探すなんて嫌だけど、自分と同じクラスかどうか深刻な問題なんだ。
とりあえず、どのクラスにいるのか確認しないと。
しばらく、名前を探し……
私と同じクラスにないことだけは、確認した。
「っし」
「突然ガッツポーズをしてどうしましたの?」
よしよし、あいつとは離れられた。
もし同じクラスだったら、ちょくちょく絡んでこられただろうからな。
と、そのタイミングで、生徒たちがざわつく。
みんなが見ている先には……
「理事長?」
理事長が、こっちに向かって歩いてきていた。
その後ろに、見たことのない老人が歩いている。
やがて、組分けの板の隣に立つように、並んで、正面を向いた。
不思議と、緊張感が走る。
あのおじいちゃんも、威圧感がすごい。
「おはよう、諸君。
キミたちはすでに、己がどのクラスに配置されたのか、確認したと思う。
組分けには各々の魔力量を参考にした。それぞれ、四つのクラスが均等な魔力量になるように、だ」
朝なのに、よく通るその声は、理事長の隣に立つおじいちゃんのもの。
その言葉の内容は、組分けがどのようにされたのか、私たちに教えるものだった。
魔力量を、均等に分けた……今、確かにそう言った。
ということは、だ。魔力の大きい者が、少ない者が、それぞれ固まらないようになっている……そういうことだろう。
つまり……魔力量を計る魔導具を壊した私とヨル、あの水晶のキャパを超えるほどの魔力を持っているこの二人は、確実に別の組にわけられたってことじゃないか!
「っし!」
「エランさん、どうしたんです?」
ヨルと離れた組に配置された……これがわかっただけでも、かなり心が楽になる。
ただ、私ほど魔力が高い人が同じ組にいないっていうのは、残念でもあるけど。
私含め、ざわつく周囲の生徒を、「静かに」の一言で理事長は制した。
「組分けについては、今説明した通りだ。
もちろん、微々たる差はやはり出てくる……すべてのクラスが等しく平等に、魔力が分かれてはいない。
しかし、学園という立場である以上、派手な偏りは避けた。厳選した結果だと思ってもらいたい」
「あなたがたは、共に入学した仲間であると共に、競い合うライバルでもあります。
スタート地点はほぼ同じ……しかし、ここからクラスごとに実力をつけていくかは、皆さん次第です。
個人の力はもちろん、クラスとしての力を上げていくことも、皆さんの成長に必要な工程となるでしょう」
おじいちゃんが、そして理事長が言う。
均等な四クラス……ここからが、スタート地点なのだと。
競い合い、実力を上げていく……今の時点で差はなくても、気づけば他のクラスに出し抜かれているかもしれない。
それに、自分だけよくても、ダメってことだ。
クラス……つまり、複数人で実力をつけていく。お互いに教え合っていくことも、成長の一つ。
師匠が言っていた。
真の魔導士とは、魔力が強いだけの者ではなく、魔導を教えるのがうまい人だ、と。
生徒同士で、教え合い時に競い合え……ということか。
「また、大きく評価されたクラスにはなにかしら褒美が与えられることもある。
励むように」
「褒美……」
なんだろう……
おいしいお肉とか、もらえるのかな。
「組分けの発表に際し、疑問に思った方もいるでしょう。
名前が、他よりも太字で書かれている者が居ることに」
あ、それは確かに気になっていた。
「クラスには各一人、【代表者】を決めてもらいます。まあ、決めるとはいえ、こちらであらかじめ、魔力の一番高い者を選出しています。
その者が、そのクラスの【代表者】。
それが、太字で書かれている者です」
気になっていた、太字で書かれた名前……
私や、ナタリア・カルメンタールちゃんが太字で書かれている。
「だい……」
「ひょうしゃ?」
「魔力が一番多い……
なるほど、お二人なら当然ですわね」
「うん……」
ただ、魔力が一番大きいから【代表者】……それはわかる。
問題は、その【代表者】がなにをするのかだ。
……なぜだろう、嫌な予感がする。
「各クラスの【代表者】には、最低でも週に一度定例会議を開き集まってもらい、自分のクラスで起こった出来事、摸擬戦の申し込み、クラス行事の出し合い……
そういった、クラス間での報告等を行ってもらいます」
「……なん……だと……!?」
【代表者】が集まり、定例会議を開く……だって……?
ざわざわと、胸の奥でなにかがざわめいている。
各クラスの【代表者】が集まる……つまり、必ず顔をあわせなければいけないということ。
そして【代表者】とは、各クラスので魔力が一番大きい者がなる。
すでに、私とナタリア・カルメンタールちゃんは確認している。
残り、二人……
その中に、私と同じく水晶を破壊した"あいつ"がいないはずもなく……
「あ……」
ふと、視線を向けた先に……見つけてしまった。
私とも、ナタリア・カルメンタールちゃんとも違う組に……あいつの……ヨルの、名前を。
その名前は、太字で書かれていた。
「そんな……!」
「エランさん!?」
「膝から崩れ落ちましたわ!」
せ、せっかく、あいつと組が分かれて、顔をあわせずに済んだと、思ったのに……
しかも、週に一度は、必ず顔を合わせる、だって……?
別の組になれて嬉しかっただけに、この事実は……つらい! これなら、最初から同じ組だと伝えられた方が、まだダメージが少ない……!
人間って、最初から落とされるより、一度舞い上がった喜びから落とされた方が、ダメージが大きいんだなぁ……
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