史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
上 下
35 / 831
第一章 魔導学園入学編

35話 食堂でのひととき

しおりを挟む


 私は同室のノマちゃんと一緒に、食堂へと訪れた。
 食堂では当然、部屋割りも学年も関係ない……
 見知った顔もいるし、そうでない顔もたくさんだ。

 クレアちゃんやルリーちゃんを探したかったけど、さすがに人が多かったので諦めた。
 朝とはいえ、食堂を利用する人数は多い。

 席に座り、朝ごはんを食べながら、私たちは周囲を見る。

「……なんだか、見られているような気がするんだけど」

「わたくしの美貌が、人の目線を惹き付けてしまうのですわ」

 食堂に入ってからというもの、なんだか視線を感じるのだ。
 敵意の感じるもの……もあるけど、害意は感じない。それにどっちかっていうと、観察に近いかも。

 私かノマちゃんを、観察している?
 なんのためにだろう。

「まあ……今のは一割冗談ですが」

「九割ホントなんだ?」

「注目の的になっているのはあなたですわ、フィールドさん」

 ビシッ、とノマちゃんは、箸で私を……指そうとしたけど、行儀が悪いと気づいてか箸を手元に置き、拳を私に突き出した。

 ……なんで拳?

「人を指差すのはよくないと思いまして」

 まるで私の心を読んだかのような発言だけど、別に拳で相手を指したからってお行儀はよくないと思う。
 まあ、そんなことはいいや。

「それで、なんで私?」

「それはそうですわ。
 入学試験で【成績上位者】に名を連ね、さらには魔力を測る魔導具を破壊……それは、この魔導学園でもかなり珍しいと思いますわ」

「……入学試験のことはともかく、魔導具のことまで知れ渡ってるの?
 組分けの行事だよ?」

「大きな行事ですもの。それにどんな話も、どこからどう漏れるかわかりませんもの」

 ……ノマちゃんの言うことが正しいのだとしたら。
 この、周囲から感じる視線は、私だけに向けられたもの。
 一緒にいるノマちゃんには、関係のないものだ。

 居心地の悪い視線のはずだ。
 だけど、そんなこと関係なしとばかりに、ノマちゃんは涼しい顔をしている。

「ノマちゃんも、私といたら視線にさらされることになるけど……いいの?」

「むしろ、それを利用してやりますわ。
 注目すべきはフィールドさんだけではなく、このノマ・エーテンここにあり。と、知らしめてやりますの」

 なんともなしに、ノマちゃんは言う。
 そこには、私への気遣いはなく……純粋に、私を利用してやる、くらいの心意気を感じられた。

 ……えへへ。

「な、なにを笑っていますの?」

「別にー?」

「変な人ですわ。
 ……まあ、フィールドさんはすでに他学年にも、周知されているということをお忘れなく」

 入学早々有名人、てわけか。
 理由さえわかってしまえば……うん、望むところだ。

 私は、この学園で魔導を極める。
 その過程で、注目を浴びるのは必然だろう。
 それが、少し早まっただけのこと。

「よぉし、やるぞ!」

「……いきなり大声を出さないでくださいまし。驚きますわ」

「あはは、ごめんごめん」

「まったく……
 ……フィールドさんといると退屈しませんわね。同じ組になれたら、もっと楽しいことが起こりそうですけど」

 その、ノマちゃんの言葉に私ははっとする。
 そうだ……今日は、まず組分けがある。

 昨日の、魔導具で生徒それぞれの魔力を測って。
 その結果をまとめて、教師たちが組分けをするのだという。

 ただ、その内容……魔力の量と組分けがどう関係するのかは、わからない。

「私も、ノマちゃんと一緒の組になりたいよ」

「ふふ、まあこればかりは運任せですわね。
 もしも、魔力量の順で組が決まるのなら、難しいかもしれません」

「! 魔力量の、順……?」

 ノマちゃんのその言葉は、思わずゾッとしてしまうものだった。
 魔力量の順……つまり、魔力の大きいものは大きい者で、固められてしまう可能性がある。

 そうした場合……魔導具の水晶を壊した私と、ヨルが、否が応でも一緒の組と言うことに……

「どうしましたのフィールドさん、顔色が優れませんわ」

「や、いやいや、ううん、なんでもないよ」

 考えすぎ……うん、考えすぎだよ私。
 今のだって、ノマちゃんの予想の一つでしかない。

 魔力の量と、それがどう組分けに反映されるのかは、まるでわからないのだから。

「あ、エランさん?」

「およ」

 嫌なことは考えまいと、なんとか忘れようと励んでいたところへ、私の名前を呼ぶ声。
 聞き慣れた声に、そちらを見ると……

「あ、ルリーちゃん!」

 そこには、お盆の上に朝食を乗せたルリーちゃんの姿。
 そして、その隣にもう一人……

「……ナタリア・カルメンタールちゃん」

「どもー」

 ルリーちゃんと同室である、ナタリア・カルメンタール。彼女が、にこやかに立っていた。
 陽気に手を振る姿は、なんとも気さくだ。

「お席、ご一緒しても?」

「構いませんわ」

 ルリーちゃんたちも加わり、食卓は賑やかになる。
 朝でも当然、人前であればルリーちゃんはフードを被っている。

 ……大丈夫、だっただろうか。
 ルリーちゃん、その正体がエルフだってことを、この人にバレていないだろうか。

 そんな心配をよそに、ルリーちゃんはナタリア・カルメンタールちゃんと仲良さげに話をしている。

「……ルリーちゃん、仲良くなったんだ」

「はい! ナタリアさん、とってもいい人で」

 もう、名前で呼んでいるのか……いや、別にいいんだけどさ。
 そりゃ、私が勝手に、心配していただけなんだけどさ。
 仲がいいなら、いいことなんだけどさ。

 ただ……仲が良くても、正体がバレたら態度が一変することもありうる。
 だから、あんまり気を許しすぎるのも、それはそれで問題で……

「やぁ、エラン・フィールドくん。一応はじめまして、かな」

 と、いろいろ考えていたところへ、話しかけてくるのは、今考えていたナタリア・カルメンタールちゃん本人。
 彼女は、私の隣に座った。

「そんなに警戒……いや、心配しなくても大丈夫だよ」

「心配、って……」

「……彼女がエルフであること、ボクはもう知ってる」

「!」

 彼女は、声を潜めて……私に、話しかけた。

「どうして……ルリーちゃんが自分から?
 いや、まさか……」

「実は、ボクには"魔眼"があってね。
 これのおかげで、彼女の正体も容易に、見破れたってわけさ」

 魔眼……聞いたことのない単語に、私は困惑する。
 ナタリア・カルメンタールちゃんは、自分の右目を指差す。
 そこには、きれいな……深い、海の底のような青い色があって……

 ……徐々に右目だけが、緑色に、変色していった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利
ファンタジー
「復讐を胸に、装甲と剣で戦い抜く」 「新兵器の実験台になってくれないかしら?」 同学年の魔女は平気な顔でそんなことを言う。 神聖ヴァルスレン帝国内では、魔術師が原因と思われる不審な事件が多発していた。 そんな中、セリオス大学に通う主人公アルベクの前に、自ら魔女を名乗る少女が現れる。彼女はアルベクに新兵器の実験台になってくれるよう頼みこんできて…… 新兵器の力により、特殊な鎧を纏った「鎧殻装兵」として、恐ろしい陰謀に立ち向かいつつ、自身の復讐の相手を探していくダークファンタジー

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

処理中です...